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デッドストックが“再編集”で生まれ変わる 「LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI」開催! ディレクターの小沢さんに会ってみた

 丸の内LOVEWalker総編集長の玉置泰紀が、丸の内エリアのキーパーソンに丸の内という地への思い、今そこで実現しようとしていること、それらを通じて得た貴重なエピソードなどを聞いていく本連載。

 第8回は、スタイリストでセレクトショップ「EDISTORIAL STORE」(エディストリアルストア)のオーナーでもある小沢宏氏が登場。9月14日から18日まで丸の内エリアで開催される、ファッション系SDGsイベント「LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI」のディレクターとしての思いや、イベントの楽しみ方などについて語ってもらった。

今回の丸の内びと/スタイリストの小沢宏 

「LIVE STOCK」という考え方は 在庫処分の切ない体験から生まれた

 世界中でアパレル製品の過剰生産と、それに伴う在庫の大量廃棄や焼却などが社会問題となっている中、アパレルメーカーが抱える「DEAD STOCK(デッドストック/経年在庫)」に目を向け、スタイリストの視点で選別・再編集し、新たなストーリーを加えて生まれ変わらせた商品を「LIVE STOCK(ライブストック)」として販売する。小沢氏のそんな取り組みに多くの注目が集まっている。

 「LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI」は、彼をディレクターとして起用してファッションを軸に、これからの未来にとって不可欠な「サスティナビリティ」に触れることができるコンテンツを、丸の内エリアで展開するイベントだ。

――今回の「LIVE STOCK」という発想はどこから生まれた?

小沢「ひとつ、大きなきっかけがあったんです。僕はスタイリストやブランドのクリエイティブディレクターなど、いろんなことをしていますが、2003年から10数年間、自分で『Numero Uno(ヌメロウーノ)』というメンズブランドも展開していました。

 ファーストシーズンからUNITED ARROWS、BEAMS、SHIPSなどで取り扱ってもらって、すごくいい感じでしたけど、ファッション、特にブランドには“賞味期限”がある。そう感じて2017年にクローズしたんです。

 3人ぐらいでやっていた小さなブランドだったし、在庫やサンプル、B品(規格外品)を出さないようにサンプルセールを開催したり、なるべくコンパクトにしていたつもりが、閉店した時には、在庫の段ボールが山積みでした」

――売り切る努力を続けても在庫が残ってしまった…

小沢「雑誌やファッションをやっている人たちって、仕事に対する愛情の総量が他業種に比べて強くて、愛情と熱量がすごくあるじゃないですか。だから、雑誌が廃刊になる時はすごく悲しいと思うし、僕もブランドを休止した時に、どうしてこんなに在庫が出ちゃったのかな、と本当に悲しかった。

 捨てる、という選択だけは絶対にしたくなかったので、友達や通いの美容師さん、最終的には親戚のおばさんにまであげて。何とかひとつも捨てずに、誰かの手に渡すことができました。

 でも、それがものすごく切ない体験として、僕の心に残りました。僕らぐらいの小規模で事業を続けていても、こんなに在庫が出る。じゃあ何百億のビジネスをしている洋服屋さんなら、いったいどうなっているんだ? ということに、どこかモヤッとしながら仕事を続けていたんです」

丸の内二丁目ビル内に設置されているリサイクルポスト

――廃刊も在庫処分も切ない話

小沢「ところが、2020年の2月頃からコロナ禍になり、世の中の風向きが一気に変わっていきましたよね。今まで成功とか正解とされていたものが、ことごとく変わっていって。会社に行っちゃいけないとか、働きすぎちゃダメだとか、いろいろなルールがいきなり、捻じ曲がったじゃないですか。

 そんなある日、物撮り(商品撮影)していたら、カメラマンから『今日はどこの服ですか?』と聞かれたんです。『昨日、高円寺の古着屋で買った』と答えたら、『小沢さんが、高円寺で古着なんか!? ハイブランドばかり着ているのかと』なんて、メチャメチャ驚かれたんですよね。

 その瞬間、ブランドをクローズした時の切ない体験と、日頃感じていたファッションに対する疑問やモヤモヤが、ほんのコンマ何秒か、電気が通ったみたいにビビビビッ!と、つながりました。あれ? もしかしたら、このモヤッとした課題を解決できるビジネスチャンスがあるんじゃないか、と一瞬で閃いたんです。

 スタイリストの僕が着ていると、安いものが高く見える、古いものも新しく見えるんだとしたら、モノの価値とは、どこにあるんだろう。

 もしかしたら、古いものでも誰かが新しい価値を付与することで、そこにもう1回、輝きやエネルギーが宿るんじゃないか。スタイリストだったら古い新しい、高い安いといった既存の価値とは別の価値を付けられる、ということじゃないかと。それをきっかけに2年ほど準備して、長野の上田にオープンしたのが『EDISTORIAL STORE』なんです」

長野県上田市にある「EDISTORIAL STORE」

――朝鮮半島の庶民が使っていた茶器が日本に入り、千利休が見たことによって、大名たちが珍重するものになったような?

小沢「権威主義のようなこととはまったく別に、ファッションとは僕に言わせると、どこにも不正解がないんですよ。『何なにすべし』とか、『この冬はこれをゲットしろ』みたいなのは、正直どうでもよくて。

 雑誌的なアプローチとしては、そういうフレーズも必要ですけど、本当は何を着ていてもいい。ファッションには適正解というものはなく、ある角度から見るとすべてが正解。だから、これを珍重しなさいということではなく、もっとシンプルな感じなんです。

 例えば、アメリカ人観光客には、真冬にTシャツで、真夏でもダウンを着ている人がいますけど、それも不正解じゃない。それぐらいカジュアルな意味で、ファッションにはもっといろんな可能性があるんじゃないかなと」

雑誌の3D化をショップで実現

――DEAD STOCKをLIVE STOCKにする。今回の企画で見せ方のこだわりは? 手書きの下げ札もいいですね

小沢「実は、いくつかのキーワードがあるんですが、そのひとつは“雑誌の3D化”です。雑誌やウェブで商品を紹介する際に、キャプションを書くじゃないですか。商品の写真があって、商品名や値段、説明などの文字が羅列される。

 それが3D化されると洋服が掛かっていて、下げ札に文字が書かれているという、僕の中ではごく当たり前のことをやっているだけで」

――キャプションの活字が札という物理的なものになる

小沢「僕がスタイリストとして仕事をしていたモノ系の雑誌、例えば『Begin』に置き換えてみると、BEAMSやUNITED ARROWS、JOURNAL STANDARDのオリジナルアイテムが、1ページの中で混在するのは当たり前のことです。

 だけど、それが店舗になっているのは常識外だし、そもそも誰も考えなかった。リテールストアとセレクトショップのオリジナルが1本のラックに掛かっているなんて、商慣習として誰もやってきていなかったんですよ。それが僕のお店『EDISTORIAL STORE』だし、雑誌の3D化のひとつですね」

自分事として捉えることが大事!  “いい人”になっちゃダメ

――「LIVE STOCK」は、SDGsやサスティナビリティを意識している?

小沢「これだけは言っておきたいんですが、僕はそもそも『サスティナビリティ』ということから、なるべく離れていたいと思っています。先ほどお話ししたような自己課題を解決する、今まで雑誌でしてきたことを2D(平面)から3D(立体)にしただけで、基本はスタイリストのワークとしてやっているだけなんです。

 世の中の動きに乗っかっているわけでもなくて、自分事として捉えている。自分事で考えないとダメなんですよね。在庫の段ボールを残してしまったのが原体験で、『LIVE STOCK』もそこから始まっていますから。世の中の人が、それをある角度から見て『サスティナブル』だと言っても否定はしませんが、自分が旗を振っているとか、そういう意識は全然ないんですよ。

 僕は“世直し”とか“いい人”だと思われるのが一番ヤバいと考えていて。例えば学校の優等生が、たまたま事情があって遅刻しそうになり、赤信号で道路を渡るところを見られた。片や不良の子が、たまたま転びそうになったおばあさんの手を引いて助けてあげていた。この2つのケースなら、絶対に後者の方がいい人と思われるでしょ。

 アベレージとしては、もちろん優等生の方がいい人なのに、ちょっとしたきっかけで悪い人に思われちゃう。だから、いい人に思われないような立ち位置でいたい。今の世の中、たったひとつの失敗で、ボコボコにされて悪い人になっちゃうから」

「いい人に思われたくない」彼の手腕で、どんなショップが 展開されるのか楽しみだ

丸の内に似合わない? 小沢さんが ディレクターになった理由

――GWに渋谷で開催した「LIVE STOCK」を今度はここでやるわけですが、丸の内という街や舞台について、どんな印象がありますか?

小沢「ハイブランドのストリート、と考えた時に丸の内は、銀座よりもバラエティ感があると思います。ブランドの散りばめ方ですね。丸の内って他のブランド通り、例えば表参道とか銀座とは気分が違いますよね。なにかテナントの配置とか、バランスに一日の長がある、というか。

 クラシックな洋服屋があるかと思えば、本格的なアウトドアショップがあったり、逆にデザイナーズブランドに刺激を受けたりして。歩き疲れたなぁって思うと、ちょうど良い場所にカフェがあったりと、実にリズム良くショップが配置されているなぁ、と感心します。

 あと、あれだけ広い道が、歩行者専用になっているのもスゴい。この前、ロンドンに旅行したんだけど、仲通りほど歩きやすくて美しい通りには出会えなかった。そういう意味では、世界に通用するショッピングストリートと言えるかもしれない。

 また、あまりマーケティングは意識しないけど、渋谷のお客さんと丸の内のお客さんは、明らかに違いますよね」

――渋谷は若者の街、丸の内はビジネス街というイメージがありますよね

小沢「そういう街のイメージに沿ったアプローチをするのだったら、僕じゃない人の方が適任です。だから、僕みたいな人間をアサインしてくれた三菱地所には、ものすごくリスペクトしかありません。

 スタイリストって、逆張りの仕事だと思っているんです。例えば、ゆるい服が流行っているなら、最初に『細い服がやっぱりカッコイイじゃん』と言う人。

 よく例え話でしますけど、400メートルトラックを“せーの”で走ると、ものすごく速い人は、どこかでほかの人を周回遅れにさせる。その時、トップなのにビリに見えるような瞬間があるじゃないですか。そのトップを走っているのがスタイリストだと思います。

 ビリに見えているうちは、言っていることがなかなか世の中に通じないけど、ビリなのか、1位なのか、みたいなその瞬間に閃くセンスやピックアップ力、発言力というのが、スタイリストの醍醐味なんですよね。カウンターというか、常にそういうことを考えていますから。

 

 だから三菱地所は、逆張り、カウンターなど、そういう僕のこだわりに何かを見出して、ディレクターに選んでいただいたのではないかと思っています」

――お堅い丸の内を変えてきたのは、実は既存の枠からはみ出したような人たちなんですよね。休日は閑散としていたけど、今では仲通りにアートがあり、テーブルや椅子でくつろげたり、昔のイメージとは変わりました

小沢「お声掛けいただいた時に思ったのは、仲通りのようなここまで長いストリートを、単独のデべロッパーが全部オーガナイズしているところは、ほかにないですよね。

 表参道や銀座は、場所によってデベロッパーがバラバラだから、なかなか横串を刺しての催し物をやりにくい。三菱地所は、たぶん日本の中で唯一、こんないい場所のストリートをオーガナイズできるから、今回のアプローチはすごくやりがいがあるし、興味深いなと」

形骸化しつつあるPOP UPも 雑誌の特集と考えたら自由に

――マルキューブに出す「EDISTORIAL STORE」の特設POP UPはどんなお店に?

  小沢「考え方の根本にあるのは、カウンターとかレベルという違和感です。ただ毛嫌いされちゃうところまで行っちゃうと、違和感を超えて嫌悪感になるので、違和感でとどめられるようなスタンスでオーガナイズすることを心掛けています。

 POP UP(ポップアップ)という言葉も、商習慣的に伝わりやすいから使っているけど、そもそもこの言葉自体がちょっと形骸化している、とずっと思っていました。

 でも雑誌の3D化として、POP UPを雑誌用語に置き換えると何かな?と考えて、思い付いたのが“特集”なんですよ。その時、俗に言う『ファッションのポップアップストア』という概念から解き放たれました。“特集”だったらもう何でもできる! じゃないですか」

「EDISTORIAL STORE」特設POP UP※写真はイメージ

――参加されるお店については、どんな思いが?

小沢「本当に限られた期間の中で参加を決めていただいたことには、感謝しかありません。靴や洋服ほか多様な業態、セレクトショップに単体のブランドなど、てんでバラバラなので、それぞれの出し物の特色が生かせる演出にしていくのが楽しいところでもあり、難しいところでもあります」

――ゲストディレクターの役割とは?

小沢「GWに渋谷で『LIVE STOCK MARKET』を行なった時に、僕が考えた枠なんです。

 これも雑誌に置き換えると、コラムニストや特集のファッションエディターやスタイリスト。それをそのまま3D化したのが、ゲストディレクターです。

 渋谷は17日間の開催でしたが、6組の人たちに、3日ごとにお店の軒先を変えてもらって、全然違ったアプローチをしてもらいました。例えば、オリジナルのフラワーベースと多肉植物を販売したり、ハイグレードのセレクトショップのディレクターと、有名なファッション系YouTuberが私物を売ったり。

 それが僕の考えるコラムやエディトリアルの感じですけど、これを丸の内にスライドさせてスケールアップしていき、それぞれのところに適材適所のゲストディレクターが立つ。やっぱり、これも雑誌的な感覚ですね」

UNINTED ARROWSとBEAMSのコラボは“馬場VS猪木”のドリームマッチ

――日本を代表するセレクトショップ、UNITED ARROWSとBEAMSのコラボ「BE YOUR REAL」POP UPが面白そうですが、「ビー ユア リアル」の意味とは?

小沢「UNITED ARROWSとBEAMSとは色々と相談する中で、『EDISTORIAL STORE』の中に置いてくれませんか? と、ほぼ同時に言われたんですよね。

 

 両者とも付き合いがメチャメチャ古いし、じゃあ交ぜちゃおうか!という、かなり乱暴な企画を無理やりねじ込んで、こうなったんです」

――「BE YOUR REAL」の言葉の響きがカッコイイ

 小沢「もともとは『BEAMS meets UNITED ARROWS』のようなところから入ったんです。

 だけど、よくよく考えるとBEAMSとUNITED ARROWSが合体したんじゃなくて『EDISTORIAL STORE』のダイレクションの下、2つがミックスされたお店を作るので、そこがお客様に明確に伝わるような店舗名にしなきゃいけない。どんな名前がいいか、ものすごく考えましたね。

 僕はスタイリストですが『POPEYE』出身なので、取材して原稿を書いてレイアウトも切っていた。昔は、原稿用紙に書かされたじゃないですか。箱になるように、と何回も先輩に言われて。だから言葉に対しては、メチャメチャこだわりますね。

「BE YOUR REAL」POP UPのロゴ

 その時に数独とか、新聞ラテ欄の縦読みメッセージみたいな感じで、ビームス、ユナイテッドアローズ、エディトリアルストアと、英語やカタカナ、平仮名で何回も文字にしてみました。そのうちに、このロゴにある『ビー ユア リアル』という言葉が浮かびました。

 でも『BE YOUR REAL』の言葉自体に、あまり意味はないです。そもそも『DEAD STOCK』も本来は“死んだ家畜”という意味で、ファッションの経年在庫という使い方は和製英語。『LIVE STOCK』は(生きている)家畜の意味ですし」

――そうなんですか!?

小沢「UNITED ARROWSとBEAMSのコラボは、ある角度から見ると、ジャイアント馬場VSアントニオ猪木ですね。馬場と猪木は全日と新日で団体が違って、なかなか交わらなかったし、結局ドリームマッチも実現しなかったですけど」

――2大セレクトショップがひとつの店に入る、前代未聞のスーパーショップ誕生ですね

小沢「ここはジャケット、こっちはカジュアルパンツのラックというふうに組んでいった時に、ひとつのラックにBEAMSとUNITED ARROWSの洋服が混在している。例えば、BEAMSのTシャツを着てUNITED ARROWSのジャケットを羽織る、それが実際にひとつの店で展開される。

 それこそが『BE YOUR REAL』。つまり「あなたのリアルって何ですか?」 というところに着地していきます」

『エゴ』バッグにならない エコバッグを手に入れよう

――それでは「LIVE STOCK MARKET」の楽しみ方を教えて下さい

小沢「ステッカーラリーをぜひ! 『LIVE STOCK POP UP』に参加している12店のうち、どこでも3店舗を回り、ステッカーを3枚集めて僕の『EDISTORIAL STORE』特設POP UPに持ってきてくれれば、トートバッグをプレゼントするよ、という街歩きギフト企画ですね。

 僕は歩くのが好きだから、日比谷から二重橋、東京駅、大手町まで歩いたりするけど、普通はなかなか、そこまで回遊してもらえないから。これは三菱地所との話し合いの中で生まれたアイデアです」

ステッカーを3枚集めてもらえる「RECYCLE WEAR BAG」

――とっても素敵なバッグですが、柄は何種類ぐらいあるんですか?

小沢「このエリアのSDGs団体『大丸有SDGs ACT5』を通じて、丸の内ワーカーから回収したアパレル製品の一部をアップサイクルして作ったので、すべて異なるんです。普通は古着屋さんなどに送られていってしまうところを、ここで循環していけないかなという取り組みですね」

小沢「このバッグ製作チームのセンスが、メチャメチャいいんですよ。レディースのブラウスとメンズのネルシャツを合わせるとか、カットしている部分や柄合わせも絶妙ですしね」

――個数も限定ですか?

小沢「何百個も作っていますし、これまでの経験上、会期の5日間で全部なくなることはたぶんないと思いますが、なくなるぐらい人が来てくれたらうれしいですね。

 さらに、このバッグのネームタグには『Loopach(ルーパック)』のICチップが入っています。要は SuicaやPASMOと同じような仕組みで、提携店の端末でタグのICチップをスキャンすれば、ポイントが貯まって自分の支援したい団体に寄付できるんです」

このタグにICチップが入っている

――エコで社会貢献もできるなんて素晴らしい

小沢「ファッションとテックを組み合わせた新しい試みです。僕の個人的な考えだけど、エコバッグは、結局エコじゃないところがありますよね。ひとつのバッグを長く使う方がエコなのに、発表会でもらったバッグがかわいいから使っちゃうみたいなね。

 だから、エコバッグ渋滞にならないようなエコシステムがあるといいな、と思っていたところに、同じような考えを持つファッション・テック企業と知り合ってスタートしたプロジェクトなんです。僕が上田の『EDISTORIAL STORE』で採用していることをきっかけに、三菱地所がこのシステムを取り入れてくれることになりました。

 今回の『LIVE STOCK MARKET』に参加されるテナントにも期間限定でスキャナーを置いてもらうなど、この運動が少しでも広がっていくような交渉を、三菱地所にも一生懸命していただいたところです。

 バッグ目当てに店回りしてもらっても構わないですし、サスティナビリティ云々とかじゃなくて、単純にモノのよさに刺激を受けて手に入れてくれてもいいし、動機は何でもいいんです。『LIVE STOCK MARKET』をきっかけに、丸の内の街歩きを楽しみながら『BE YOUR REAL』、あなたのリアルを自由に楽しんでほしいですね」
 

 スタイリストとして、数多の雑誌の編集にも携わってきた小沢さんの店造りは、“雑誌の3D化”がテーマ。サスティナビリティ&SDGsイベントのディレクターとして、その手腕を振るいながらも、サスティナビリティとは離れた存在だと言う。でも、それはサスティナビリティやSDGsを否定しているわけではない。もっと自由でいたいし、自己課題や世の中への疑問に立ち向かいながら、逆張り、カウンターを仕掛けていきたいだけ。生粋のスタイリストならではのこだわりが、丸の内でどう具現化されるのか。“あなたのリアル”を「LIVE STOCK MARKET」で体験してみてはいかがだろう。

小沢宏(おざわ・ひろし)●1964年生まれ、長野県出身。スタイリスト、セレクトショップ「EDISTORIAL STORE」オーナー。大学在学中に雑誌「POPEYE」のスタイリストアシスタントとしてキャリアをスタート。エディトリアルのスタイリストとしては「POPEYE」「BRUTUS」「Huge」ほかカルチャー色の強い雑誌から、「Men’s EX」、「Pen」など大人の男性に向けた雑誌まで幅広く活躍。1990年代にはインディペンデント系セレクトショップの先駆けとも言える「MADE IN WORLD」をプロデュース。2016 年にブランド「オザワヒロシ エディストリアル(OZAWAHIROSHI EDISTORIAL)」をスタート。「EDISTORIAL」とは「EDITORIAL(編集)」と「STORY(物語)」を組み合わせた独自の造語で、2022年5月に故郷の長野県上田市にオープンした「EDISTORIAL STORE」に継承される。

聞き手=玉置泰紀(たまき・やすのり)●1961年生まれ、大阪府出身。株式会社角川アスキー総合研究所・戦略推進室。エリアLOVEWalker総編集長。国際大学GLOCOM客員研究員。一般社団法人メタ観光推進機構理事。京都市埋蔵文化財研究所理事。大阪府日本万国博覧会記念公園運営審議会会長代行。産経新聞〜福武書店〜角川4誌編集長。

・関連サイト
LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI
開催期間/2023年9月14日~9月18日
開催会場/丸ビル1階マルキューブ、丸の内エリア内対象店舗

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