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短命の“忘れられた写真家”安井仲治の斬新で心に残る200点以上の名作が東京ステーションギャラリーに展示

2024年02月28日 11時00分更新

 JR東京駅丸の内北口改札を出て目の前にある東京ステーションギャラリーにて「生誕120年 安井仲治 僕の大切な写真」展が開催されています。

 安井仲治(やすいなかじ/1903-1942)は、大正時代から昭和の太平洋戦争勃発に到る激動の時代に、写真のあらゆる技法を追求し、38年という短い生涯の中で、心に残る多くの写真を残した、日本写真史における金字塔的存在です。

 安井は、B25爆撃機により東京や名古屋、神戸など日本本土が初めて空襲に見舞われた1942年に38歳の若さで腎不全のために死去したため、戦中・戦後の混乱の中で「忘れられた写真家」となってしまいました。

安井仲治愛用のカメラ

 戦後40年以上が経過した、1987年に兵庫県立近代美術館他で「安井仲治展」が、また元号も平成となった2004年には渋谷区立松濤美術館他で「生誕百年 安井仲治―写真のすべて」が開催され、約20年という短い写歴の間に、驚くほど多彩な仕事をのこした安井仲治に再び光が当てられました。

 「生誕120年 安井仲治 僕の大切な写真」展は、土門拳や森山大道などに大きな影響を与えた安井の20年ぶりとなる大回顧展です。昨年から今年にかけ愛知県美術館、兵庫県立美術館で開催され、東京が最後の巡回地となります。

 今の時代のように、気軽に誰もがスマホで写真を撮れる平和で安穏とした時代とは似ても似つかぬ100年前の日本で、カメラをあらゆる被写体に向け、日本写真史に残る名作・名シリーズを残しました。プロのカメラマンは勿論、現代の若者が観ても「おっ!」と思わせる斬新で心に残る200点以上の写真が、東京ステーションギャラリーに展示されています。

安井の数々の作品が展示されています

 安井の代表作ごとに展示されており、その多彩なバリエーションとインサイトが光る写真に目が釘付けになります。例えば安井が「半静物」と称したシリーズは、撮影現場にあるものを自由に構成する手法で、見知った風景が、時に驚くような光景に変化する面白さや不思議さを表現しており、すぐにでも真似てみたくなる作品です。

 また、当時の社会状況を大胆なトリミングやコラージュを駆使して、大阪中之島のメーデーを撮った連作「メーデー」は、今では観光名所となっている大阪市中央公会堂(重要文化財)や大阪中之島美術館がある場所で興った、デモ隊と警官隊とが激しく衝突する現場の諸相を今に伝える躍動感あふれる作品です。

 多彩なシリーズの中でも今回最も注目したいのが、晩年に手掛けた「流氓ユダヤ」でしょう。

 第二次世界大戦中、ユダヤ人に対するナチス・ドイツの迫害が激しさを増す中、当時リトアニアの日本領事館領事代理であった杉原千畝(すぎはらちうね)が発行した「命のビザ」を携えて日本に逃れてきたポーランド系ユダヤ人たちを取材したシリーズが「流氓ユダヤ」です。

「流氓ユダヤ 窓」1941年、個人蔵(兵庫県立美術館寄託)

 今なお解決の糸口さえ見いだせないパレスチナ問題で右往左往する令和の世に、安井が残した、ナチスの迫害を逃れ、遠く離れた神戸に命からがらたどり着いたポーランド系ユダヤ人の写真と、果たしてどのように向かい合えるでしょうか。

シリーズ「流氓ユダヤ」の作品

 独自の被写体を見出す感性に長けた安井。混沌とした世界の一隅にカメラを向け、そこにある真実を浮き彫りとした安井の卓越したセンスは、写真家だけでなく、今の時代を生きる私たちに刺激と共に大きな問題を提示してくれます。

「生誕120年 安井仲治 僕の大切な写真」
会期:2024年2月23日(金・祝)〜2024年4月14日(日)
会場:東京ステーションギャラリー
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1(JR東京駅 丸の内北口 改札前)
時間:10:00~18:00(金曜日~20:00) *入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日(4/8は開館)
観覧料:一般1,300円、高校・大学生1,100円、中学生以下無料
東京ステーションギャラリー|公式サイト:
https://www.ejrcf.or.jp/gallery/
主催:東京ステーションギャラリー(公益財団法人東日本鉄道文化財団)、共同通信社
協力:銀遊堂、PGI、株式会社アフロ 協賛:T&D保険グループ
助成:公益財団法人ポーラ美術振興財団

近現代日本の中心・東京駅丸の内駅舎にある美術館の矜持 丸の内のアート人に聞く! ~東京ステーションギャラリー編~
https://lovewalker.jp/elem/000/004/161/4161885/

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