第2回
「新宿の拠点再整備方針~新宿グランドターミナルの一体的な再編~」始動! vol.2
【連載/新宿再開発】 “現代の宿場町” 新宿を再構築! 新宿区と東京都が見据えるこのまちの未来
2021年11月26日 12時00分更新
新宿区が考える、新宿のこれからとは?
――今回の再編では、東西の「駅前広場」が大きな魅力となりそうですが、新宿区としてはどう捉えていますか?
吉住「駅前広場は、新宿の顔の一つになると思います。駅に向かって『あ、あそこが駅だ』と分かるようなシンボリックな空間があるというのは、重要な要素の一つ。世界最大の“宿場町”新宿というか、ターミナル駅としては、単なる商業ビルではなく、駅としての雰囲気が分かることが大事です。
『新宿グランドターミナル』の再編には、人が集いやすく、歩きやすく、『人に優しいまち』をつくろうというテーマがあります。まちの回遊性を高めつつ、駅の中だけで完結するのでなく、駅の周辺と連携して全体が賑やかになることが望ましいので、駅前広場を含めて、周辺のエリアとつながることができる駅にしていきたいです」
――線路上空に新設される「東西デッキ」はいかがですか?
吉住「今回の『新宿グランドターミナル』再編の目玉の一つです。祝祭的に使うイメージも持っていますし、いざというときに活用する計画も含まれています。地下にできた新宿駅東西自由通路、地上の通路、線路の上のこの東西デッキの3層構造で、多層に分かれて交流の場が生まれることが重要なポイントだと思っています」
――新宿の個性あふれる各エリアが、世界一のターミナル駅でつながっていきますね。
吉住「はい、相互に連携して、新宿駅周辺地域が全体として調和した、『賑わい都市・新宿の創造』を実現していきます。
新宿は、駅が大きいので巨大なまちというイメージがありますが、区の面積でいうと23区で13位。出生率も低いので、このまちに来てくださる、このまちを選んでくださる、楽しんでくださる皆さんがいないと成り立っていかないまちだと思っています。
そういう意味では、今回の『新宿グランドターミナル』再編の構想は、新宿駅の周辺全体を巻き込んでいく、駅から外に裾野が広がっていくというコンセプトを設けてつくられています。
また、多くの人が訪れる駅なので、何か大きな災害があれば、駅に滞留する人が出てきます。駅だけでは支えられないので、近隣施設と連携し、滞留する人を保護していく観点も持ちながらまちづくりをやっていかなければいけません。そのような安心感があると人が集まってくるんですよね」
――多くの外国人の方も生活しているまちです。
吉住「区の面積は大きくないですが、人口密度は上位に入ります。住民台帳に載っている区民は約34万2000人で、国籍は120ヵ国前後。昼間人口はその倍以上の約77万人になりますから、その人たち全てが快適に過ごせる空間を『新宿グランドターミナル』の再編ではつくっていかなくてはなりません。
区では、2020(令和2)年、『ユニバーサルデザインまちづくり条例』を制定し、建物のハード的な障壁を取り除くだけではなく、誰もが必要な情報を得ることができるように、ソフト面も含めてまちづくりを進めています。
現在、区からの情報提供の多言語化をしていますが、さらに世界へ発信するようなまちとなることが必要です。
さまざまなルーツを持つ人がここで生活を営んでいれば、当然、子どもも生まれます。国際結婚も多いので、そういった子どもは多国語によるコミュニケーションが自在です。地元で生まれたネイティブということになるので、彼ら彼女らがここで活躍できるようになれば、新宿は大変インターナショナルなまちになるとも考えています」
――新宿には「庶民的なまち」というイメージもあります。
吉住「まちも文化も庶民的だと思います。世界最高レベルの芸術の殿堂があるわけではないですが、その代わりに花園神社の境内で野外劇をやっていたり、飲食店にしても普段着で出かけられる店がたくさん集まっていたりするので、気軽に遊びに来ていただければありがたいな、と思っています。
新宿というまちは、人を含めて非常に柔軟性を持っていて、自分たちの知らないキャラクターを持った人が来ても、その人たちを排除したり、受け入れなかったりということは基本的にありません。
海外から来た人も、地方から上京した人も、とりあえずいったん慣れるまで新宿で羽を休めて、慣れたらまたどこかに向かっていく。ここを拠点として全国あちこちに広がっていくというように利用していただければ、新宿はまさに、“現代の宿場町”になると思っています」
※掲載用に撮影時のみマスクを外しています。
提供:東日本旅客鉄道株式会社、小田急電鉄株式会社、東京地下鉄株式会社、京王電鉄株式会社、西武鉄道株式会社
プロフィール
吉住健一(よしずみ・けんいち)
新宿区長。1972(昭和47)年、新宿区大久保生まれ。日本大学法学部法律学科卒業後、与謝野 馨氏秘書に。新宿区議会議員(2期)、東京都議会議員(2期)を務めた後、2014(平成26)年より現職。
安部文洋(あべ・ふみひろ)
東京都 都市整備局理事。1989(平成元)年、入都(都市計画局)。東京都都市整備局都市づくり政策部副参事、同オリンピック・パラリンピック準備局選手村担当部長などを経て、2020(令和2)年より現職。
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