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新井鷗子(横浜みなとみらいホール館長) 「横浜の街づくりを音楽で」

2023年05月31日 10時00分更新

 みなさん、はじめまして!

 横浜みなとみらいホール広報チームです。

 横浜みなとみらいホールは、1998年に開館したクラシック音楽専門のコンサートホールです。そう、2023年で開館25周年を迎えます!

 2020席の大ホール、440席の小ホールの他、眺望が綺麗なレセプションルームなどがあり、毎日のようにコンサートが開催されています。

©平舘平                 ©平舘平

 このコラムでは、横浜みなとみらいホールと繋がっている人のお話しを通して、ホールや横浜の魅力に迫っていきます。

 ホールの開館25周年にちなんで、全4回の連載期間中、合計25個のトピックを聞いていきますのでお楽しみに!

 第1回にお話を聞くのは、横浜みなとみらいホール館長の新井鷗子(あらい・おーこ)です。

 2020年春に館長に就任し、今年で早3年。

 館長の目に、ホールは、横浜は、どのように映っているのでしょうか?

【1】この3年間でご自身に変化はありましたか?

“街づくりのための音楽”へ

 以前から、横浜みなとみらいホールの公演には単発で企画・構成に携わっていたので「親和性があるな」とは感じていました。

 館長に就任して、「自分事」としてコンサートの企画・構成に携わるようになってから痛感したのは、横浜と東京都心部のお客様の違いです。

 都心だと、コンサートのコンテンツそのものがキラキラしていると、お客様が集まってきます。ですが、横浜みなとみらいホールで開催するものは、お客様との繋がりが重要です。

 アーティストと横浜の方、音楽と横浜の方が深く繋がっていないと、コンサートそのものの盛り上がりを生み出せないという事に気が付きました。

 横浜の方々は地元への愛が強いんです。

 例えば、平日昼間に開催するリーズナブルな価格帯のコンサートって人気ですよね。

 こういうものにも地元愛が表れてくると思うんですが、横浜のお客様はそういったコンサートにふらっと来る方が多いイメージです。

 ですから、本番までにアーティストと横浜との関わりを作ることや、横浜という場所とコンサートの内容がかけ離れないような商業施設との連携なども一緒に考えなければならない、と思うようになりました。

 一種“街づくりをやる為の音楽”という意識に変わりました。

横浜だからできるコンサートを

 そのような気付きを、これまで継続していたコンサートに反映してブラッシュアップしたものもあります。

 開館以来続いている『こどもの日コンサート』は、横浜の方々が「自分達が作っている!」というテイストをわかりやすく取り入れたくて、地元の中学生達がプロデューサーになって、企画制作から当日の運営までの仕事を全て担ってもらう仕組みを作りました。(通称:中学生プロデューサー)

©平舘平                 ©藤本史昭

 選曲一つにしても“横浜”にまつわるものを彼ら自らが選ぶんです。その点がすごく横浜の特殊性だと感じました。

 大変なプロジェクトですが、何年か経って彼らの中から一人でも横浜みなとみらいホールの職員やレセプショニスト(案内係)になる子が出てきたら、とてもすごい事だなと思います。

 実は、横浜に来るまで、横浜ってすごい都会だと思っていました。

 本当にオシャレなスポットがいっぱいで東京よりも先進的な感じで。だけど、実際に来てみたらとてもアットホームな感じでびっくりしました。

 だからこそ、この『中学生プロデューサー』のようなサイクルは横浜でしか作れないと思っています。私は東京出身ですが、東京は都市の規模が大きすぎてしまって、東京で「東京ならではの」と言うのはなかなか難しいんです。

ウェルビーイングを支える音楽を横浜から

 横浜みなとみらいホールは音楽ホールですので、音楽で人々の生活や人生を豊かにできるようなコンテンツでありたいと思っています。

 心や身体の健康や豊かさだけでなく、「生きがい」を持って生きていけるようなウェルビーイングを、横浜みなとみらいホールの音楽で支えたいです。

 それから、「横浜みなとみらいホールの音楽を聴くと健康になる」という科学的なデータを出したいんですよね。そういうデータが人間に及ぼす作用って大きくて、そのような情報を耳にすると「音楽を聴こう!」ってなるんです。笑

 秋からスタートするシニアのための「だれでもピアノ®」※1のレッスンカフェもその一環です。ここでは医学系大学と連携して、心身の状態をセンシングし、分析してもらう予定です。

 将来的には、「ホールに行ったら血圧が下がった」とか「骨折外来が減った」とか、そういう数値を出したいと考えています。

 その為には、音楽の提供の仕方を練りに練って考えなければなりません。

 「音楽にアクセスしやすくて、その音楽がどう社会に還元されるのか」という事を見越してコンサートを作らねばなりません。これはすごく手間のかかる作業ですが、これからも心掛けてやっていきたいです。

【2】ホール周辺でおすすめの場所はありますか?

 馬車道にある「イル・カーリチェ」というお店がオススメです。

  ワインやチーズなどの輸入系の食材を売っているお店で、なんだか見た事もない食材とかも売っています。

 市役所がまだ関内にあった頃にたまたま見つけたのですが、何年モノのバルサミコ酢とか、美味しいオリーブオイルとか、見た事がないものが沢山あって面白いんです。よく買い物しに行っていました。

 あとは、大さん橋にある「blue terminal」というカフェ。

 客船の行き来や人の流れを見ていると、一日いても飽きないですね。

 それから、ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテルにある「スターボ」というミュージックラウンジ。

 https://www.icyokohama-grand.com/facilities/ 

 ホールのコンサートとコラボをしたくて、この間、手始めに『横浜うたまつり』(2023年4月21日開催)という公演でコンサートをイメージしたカクテルを作っていただきました。

 「奏」というピンク色のリキュールを使っているので、「マゼンタ アンサンブル」と命名させていただきました。

 終演後、コンサートを聴いて興奮した余韻をこのラウンジで味わっていただく、という流れを作れたらいいなと思っています。

 また、コンサートの後にホテルに宿泊して横浜の夜を楽しんでいただける宿泊プランの連携なども考えています。

【3】いつも素敵なファッションの館長ですが、ポイントなどはありますか?

 ホールスタッフからそういった視線が来ているな、というのは感じていました。笑

 子どもの頃から青色が好きなんです。横浜と言えば青だし、ホールのイメージカラーも青。そういった繋がりがとても嬉しいです。

 洋服やアクセサリーを選ぶのも好きですね。

 裏方をやるときは汚れが目立たないように黒系の服を選びがちですが、お客様としてコンサートに行くときは雰囲気に合わせて考えたりすることもあります。

 洋服のサイズが小さいのでブランドが限られてしまうのですが、よく手にとるのはTheory。カジュアルなものからパチっと決まるものまであってお気に入りです。

【4】お休みの日はどのようにして過ごしていますか?

 私はずっとフリーランスで働いているので、基本お休みがないんです。

 仕事の予定がない日も連絡が来たら返しますし、逆にそれに慣れているので、オン・オフは自分でコントロールできます。

 去年、チェンバロをゲットしたので、それを弾くのにハマっています。

 ピアノは弾けるんですけど、たまたま去年チェンバロの製作家さんとご縁があって、作りかけの段階のものを仕上げる時に「欲しい」と言って作ってもらいました。

 チェンバロの音はピアノよりも感情に絡みつかないところがいいんです。

 音の強弱を調整できない楽器なので、ひたすら譜面に書いてあることを弾き続ける、ある種デジタル入力作業のような感じなので、それがストレス発散になります。

 あとは、とにかく散歩が好きです。

 時間や場所を決めてしまうとノルマっぽくなってしまうので、「天気がいいからあの駅まで歩こう!」と決めて行きます。散歩というよりウォーキングという感じでしょうか。

 実は、覚えものは歩きながらが一番良いみたいですね。

 私は挨拶をする機会が多いのですが、歩いているときにもぞもぞ喋りながら覚える事が多いです。笑

【5】25年後のみなとみらいエリアはどうなっていると思いますか?

 みなとみらい21地区が「Port(港、出入口)」となって横浜を音楽の街として発信する取り組み『Music Port YOKOHAMA』(https://musicport-yokohama.jp/)が掲げるように、その頃は世界一音楽施設が集積している地区になっていると思うのですが、それがどういう風に発展しているか見届けたいです。

 みなとみらい地区にある音楽施設って一つずつが遠くて、その会場にだけ行って完結してしまうんですよね。その間にある小さなライブハウスや飲食店が“線”の役割になって埋めていくような、そんな街になったらいいなと思っています。

 イメージとしてはヨーロッパの街です。大きな劇場の間に小さなギャラリーが沢山あって、そういった場所が街を支えているんです。逆にそういうところがないと、街が新陳代謝していかないと思います。

 それから教育施設も大切で、ホールと教育施設は繋がっているべきと考えています。

 人材育成をする場所があって、それを発表する場もある。ホールで学校の授業が行われていてもいいくらいです。

 アメリカなどは音楽の授業がなくなって、代わりに地域のフリーのミュージシャンとかが出張して行っているんですよ。

  教科書通りだとどうしてもカリキュラム的な感じになってしまいますが、こちらの方が豊かな音楽教育ができるのではないかと思います。

 みなとみらいも、ホールが色々な商業施設や教育機関などと繋がって、波形のように連携を拡げていきたいです。ホールの半径何mから、という感じで地道に広げていけたらいいな、と思っています。

 ホールは目的でなく、むしろついででもいいんです。

 ニューヨークのブロードウェイが「あそこに行けば色々なミュージカルが楽しめる」と認知されているように、「みなとみらいに行けば色々な音楽が楽しめる」と世界中から音楽ファンが集まるエリアになったらいいな、と思います。

※1 だれでもピアノ®:東京藝術大学COI拠点が2015年にヤマハ株式会社と共同開発した、自動伴奏追従機能のついたピアノ。一本指でメロディを弾くと、伴奏とペダルが自動で追従して、熟練したピアニストのように華麗な演奏ができる。

新井鷗子(あらい・おーこ)
NHK教育番組の構成で国際エミー賞入選。「題名のない音楽会」「読響プレミア」「東急ジルヴェスターコンサート」「エンター・ザ・ミュージック」等の番組やコンサートの構成を担当。東京藝大COI拠点にて障がい者を支援する芸術の研究に携わり、1本指で弾ける楽器「だれでもピアノ®」開発者リーダー。東京藝術大学客員教授、洗足学園音楽大学客員教授、東京大学「先端アートデザイン分野」アドバイザー、横浜音祭りディレクター。

【横浜みなとみらいホールからコンサートのお知らせ】

ストラディヴァリウス・サミット・コンサート2023
誕生から300年以上が経つ今もなお、人々を魅了し続ける最高峰の弦楽器“ストラディヴァリウス”。総額100億円とも言われるストラディヴァリウス11挺(ヴァイオリン7挺、ヴィオラ2挺、チェロ2挺)が集結する貴重な機会です。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の名手による特別なアンサンブルで極上の音色、至高の時間をご堪能ください。

日程:2023年6月1日(木) 19:00開演
会場:大ホール
料金:全席指定 S席:12,000円、A席:10,000円、B席:8,000円
詳細はこちら→ https://yokohama-minatomiraihall.jp/concert/archive/recommend/2023/06/2661.html

横浜みなとみらいホール開館25周年記念
 「Dive into the Future」

 第2代ホールオルガニスト近藤 岳プロデュース。J. S. バッハから現代、そしてクライマックスには出演者4名による即興演奏も!

日程:2023年6月9日(金) 19:00開演(休憩なし90分公演)
会場:大ホール
出演:近藤 岳(パイプオルガン)、スガダイロー(ピアノ)、有馬純寿(エレクトロニクス)、大石将紀(サクソフォン)
料金:全席指定 2,500円、学生・障がい者手帳等をお持ちの方:2,000円
詳細はこちら→ https://yokohama-minatomiraihall.jp/concert/archive/recommend/2023/06/2758.html

横浜みなとみらいホール プロデューサー 2021-2023 藤木大地プロデュース
みなとみらいアコースティックス 2023
日本から世界に羽ばたいた3人のアーティストが、最高の音響を誇る日本有数のコンサートホールで再会を果たす特別な一夜

日程:2023年7月31日(月) 19:00開演
会場:大ホール
出演:藤木大地(カウンターテナー)、反田恭平(ピアノ)、務川慧悟(ピアノ)
詳細はこちら→ https://yokohama-minatomiraihall.jp/concert/archive/recommend/2023/07/2881.html 【予定枚数終了】

 その他にも様々なコンサートを開催予定!
詳しくはホールのWEBサイトをご覧ください。
https://yokohama-minatomiraihall.jp/index.html 

 【執筆者プロフィール】

 横浜みなとみらいホール広報チーム
WEBサイトの管理や広報誌の編集からチラシの整理まで、なんでもこなす3名からなるチーム。地下にある事務所からホールに関する情報を発信しています。
(アイコンはホールのマスコットキャラクター・みなトラくん)

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