シンボルプロムナード公園でサーモン寿司を食べながら考えていた
意識高い、めんどくさい……。「サステナブルって、どういうことですか?」という問いを考える
2024年05月17日 12時00分更新
■「なんだかめんどくさそう」と思う人もいるはず
「サステナブルって、どういうことですか?」と聞かれて、すぐに答えられますか。
「sustainable、『持続可能な』……という形容詞でしょ」と返すかもしれません。間違いではない。名詞だと「sustainability」ですね。
それでは、どういうことをすればサステナブルなんでしょうか。どういうものがサステナブルなんでしょうか。
たとえば政府や企業などが「これはサステナブルなものですよ」と何かを勧めてきたとしても、「おいしくない」「使いにくい」などと思ったら、消費者はなかなか手に取らないでしょう。
SDGsだなんだと言われても、なんだかめんどくさそう……と思う人だっているはずです。自分も、ニュースを聞いたり、取材をしていたりするときに、(本音では)そう感じることがあるし。
「サステナブルって、どういうことですか?」。それを考えるきっかけになるかもしれないのが、東京都が現在開催中の「SusHi Tech Tokyo 2024」ショーケースプログラムです。
“持続可能な新しい価値”を生み出す「Sustainable High City Tech Tokyo = SusHi Tech Tokyo」を推進する取り組みの一環として開催されているもので、未来の都市モデルを発信する一般層向けのイベントが「ショーケースプログラム」と銘打たれています。
■公園をサステナブルなもので満たすという試み
ショーケースプログラムでは、臨海副都心エリア内の商業施設などを遊歩道でつないでいる公園、シンボルプロムナード公園も会場のひとつ。最新モビリティーやサステナブルなテクノロジーの紹介はもちろん、人気のキッチンカーが多数並ぶのも特長です。
廃材をアップデートしたアート作品の展示や、年令や性別などに関わらず誰もが楽しめるスポーツの体験も実施。その場に行って楽しむだけで、サステナブルな取り組みに触れられるとしています。
要するに、会期中はシンボルプロムナード公園をサステナブルなもので満たすということですね。サステナブルとは何かを考え、体験するにはもってこいの場所です。
■“陸で育った”サーモンの寿司を食べて考えた
「アスキーグルメ」などを担当する筆者としては、江戸から続く伝統の味やサステナブルな料理などを食べられる、キッチンカーやブースが軒を連ねる「Z品グルメガーデン」が気になっていました。
Z品グルメガーデンの中に、「陸上養殖サーモン握り寿司 特設ブース」があります。
屋内の水槽内で環境負荷を抑えて育てたアトランティックサーモンを、寿司にして提供。高い濾過能力により水の再利用率を高めたほか、排泄物や食べ残しによる環境負荷を最小限に抑えた養殖技術で育ったそうです。
筆者も食べましたが、味も食感も普通のサーモンと変わりません。ということは、食材として提供される魚がこのように“サステナブル”な環境で養殖されたものに変わっていけば、より良い社会が実現するかもしれませんね!
……と言いたいのですが、そんな簡単な話でしょうか。
■最初の一歩がようやく出てきた、という段階なのかも
食べてみて、「ああ、サーモンですね」というだけだったら、従来のサーモン(変な表現ですが)でもいいわけです。
既存の方法で、大量に養殖したほうが安上がりということも考えられます。おいしさが段違い、価格が安いなど、食材として際立った特徴がなければ「積極的に使おう」とはならないかもしれない。
サステナブルな方法で養殖されたサーモンができました……というのは、本当に、「第一歩」なのだろうなと思いました。ここから何かがすべて変わるわけでも、一気に切り替わるわけでもない。こういう選択肢がようやく出てきた、というところなのでしょう。
AI、モビリティ、ロボット……。なにか新しいテクノロジーが出てくると、世間は「これがすべてを解決してくれる!」という勢いになりがちです。でも、一朝一夕で世界が変わるはずはない。サステナブルな技術も、いきなり、何かを劇的に変えてくれるとは考えづらい。
“陸上”で育ったサーモンも、最初の一歩がようやく出てきて、ここからどうするか……という段階なのでしょう。しかし、サーモン寿司を食べながら、ここまで何かを真剣に考えたのは初めてでした。
ちなみに、サーモン寿司セットはSusHi Tech Tokyo 2024のシンボルプロムナード公園特設ブースにて、2024年5月18日(土)、19日(日)、25日(土)、26日(日)に1000円で提供されます。
サステナブルなサーモン寿司セット
“陸で育った”サステナブルなアトランティックサーモンを寿司にして食べられる特設ブース。握り寿司3貫と巻物がセットになって1000円。よく食べているサーモンとどう違うのか……という観点で食べてもおもしろいかも。
■「サステナブル」は、あなたが判断していい
サステナブルな食材の一例として、いわゆる「代替肉」があります。ヴィーガンなどにとって新しい選択肢になるだけではなく、植物性の素材などを使用することで、生産の過程においてCO2排出量を削減できる面もあるでしょう。
しかし、代替肉という食材が世の中に普及したとしても、味の面やコストの面などを考慮すると、家畜の肉が市場からあっという間になくなるとは考えにくいものです。
似たような話で「環境にやさしい移動方法」でも、不便だったら、あるいは高額だったら、利用者はなかなか増えないかもしれない。
シンボルプロムナード公園には、関わった人たちが“サステナブルだと思うもの”が並んでいます。会場内の各所に廃材アートを展示することで公園内を回遊しながらサステナビリティを学べるようになっているとか、微生物の力で雨水や川の水を浄化できる装置が展示してあるとか……。
それらを見て、すべてを取り入れよう、称賛しようとする必要はありません。できそうなことは取り入れてみる。できなさそうなことは保留してみる。「これは違うんじゃないか」と思ったら、なぜそう感じたのか考えてみる。
本記事の冒頭の問いに戻ります。「サステナブルって、どういうことですか?」。これに対する答えは、自分自身、つまり「あなた」が判断していいのではないでしょうか。
「サステナブルな社会」が、将来にわたって現在の社会の機能を継続していけるシステムやプロセスのことだとしたら、消費者一人ひとりができないことをやり続けるのは無理筋です。
先述しましたが、上から押し付けられても、「意識高いなあ」「めんどくさいなあ」と感じてしまうかもしれない。「地球の環境にやさしい」「社会問題を解決する」などというマクロな話だけでなく、「今の自分の生活範囲内で取れる選択肢」というミクロな視点を持っていいはず。
テクノロジーを通じて自身の働きやすい環境を作ったり、「たまには環境にやさしいものを選んでみるか」という動機で何かを買ったりすることも、“自分たちの生活を持続していく”という意味ではサステナブルな行為ではないでしょうか。
それこそ、最初の一歩として、「こっちのサーモンのほうがサステナブルだと思う」というような選択肢を取るのもアリだと思うのです。
世界的な課題としての環境問題の解決だけではなく、自分(たち)の生活をこれからも持続していくための考えや行為も、サステナブル。そういうことなら、自分自身が選択し、判断していけるものなのではないか。
安易な答えを出さずに、問題を投げ出さずに、できる範囲で考え続けてみることが大切。シンボルプロムナード公園で、そんなことを考えていました。
「サステナブルって、どういうことですか?」と聞かれたら、あなたはなんと答えますか。
「SusHi Tech Tokyo 2024」ショーケースプログラム
シンボルプロムナード公園 会場概要
【開催日程】
5月12日(日)〜5月26日(日)
【開催会場】
東京都港区台場一・二丁目 / 東京都江東区青海一・二丁目 / 東京都江東区有明二・三丁目
【会場地図】
【URL】
https://www.sushitechtokyo2024-sc.metro.tokyo.lg.jp/module/booth/228109/157781/
「SusHi Tech Tokyo 2024」ショーケースプログラム概要
【開催期間】
2024年4月27日(土)〜5月26日(日)
【各会場開催日程】
・日本科学未来館 4月27日(土)〜5月26日(日)
※5月7日(火)、5月14日(火)は休催
・シンボルプロムナード公園 5月12日(日)〜5月26日(日)
・海の森エリア 5月12日(日)〜5月21日(火)
・有明アリーナ 5月17日(金)〜5月21日(火)
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