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野毛散策がもっと楽しくなる!大衆芸能の専門館「横浜にぎわい座」とその周辺のおすすめスポットなどをご紹介

2025年05月09日 10時00分更新

 私たち、横浜市芸術文化振興財団は、美術、音楽、ダンス、古典芸能など、アートの力を活かして、横浜の魅力を高める活動をしています。

 この連載ではリレー形式で10回に渡り、新たなアートイベントの楽しみ方、文化施設周辺の街歩きなど、アートを切り口に街の魅力をお届けします。

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47年の歴史の中に新しい発見がいっぱい!たくさんの猫の写真と建物に癒される「大佛次郎記念館」

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 第4回は、野毛にある大衆芸能の専門館「横浜にぎわい座」の事業担当・遠山が、寄席の楽しみ方や周辺のおすすめスポットなどをご紹介します。

「横浜にぎわい座」ってどんなところ?

野毛の夜の様子

 みなとみらいや中華街から徒歩圏内に位置する、ちょっとディープな街「野毛」。

 飲み屋さんがひしめき合い、ノスタルジックな明かりが灯った夜の風景は、呑兵衛にはたまらない雰囲気。最近は若い人も増えています。

 そんな野毛エリアの一角にあるのが、大衆芸能の専門館「横浜にぎわい座」。

 龍角散のCMでおなじみの立川志の輔や、笑点メンバーの林家たい平・桂宮治・春風亭一之輔のほかベテランの落語家の独演会等から、気鋭の若手演者にフォーカスした企画まで、落語・講談・浪曲・漫才などのさまざまな公演を開催しています。

横浜にぎわい座の外観。大きなのぼりが目印です

初心者でも大丈夫!「寄席」の楽しみ方と裏側をちょっとだけご紹介

 「何から行ってよいかわからない」という方におすすめなのが、年間を通して毎月1日~7日に開催している「横浜にぎわい寄席」。落語を中心に、紙切り・曲芸・奇術などの「色物」も楽しめる“寄席形式”の公演です。

代表的な色物のひとつ「太神楽(だいかぐら)曲芸」の丸一小助・小時。「“ますます”繁盛しますように」と縁起をかついで「升(ます)」を傘の上で回す様子

 それではさっそく2階の受付でチケットを購入して、3階の芸能ホールへ。

 開場とともに鳴り響く太鼓の音… これが寄席の開場時の合図です。お客様がたくさん来るように「どんどん、どんと来い」と聞こえるリズムでたたくのが決まり。開演、終演などの合図もすべて太鼓です。

 そしてこの太鼓、実は生演奏。舞台袖で前座さん(修行中の芸人)がたたいています。出囃子(出演者の登場時の音楽)や、紙切りなどのBGMも生演奏で、「お囃子さん」と呼ばれる三味線奏者が実際に弾いています。

舞台袖の様子。写真奥に座っているのが「お囃子さん」。(写真左:笑福亭ちづ光 右手前:三遊亭東村山 奥:柳沢きょう)

 ちなみに、寄席では上演演目が事前に決まっていないのが通例。落語の冒頭で、「マクラ」と呼ばれる世間話や本題に関係する小噺などを話しますが、そこでお客さんの気持ちをほぐしながら反応を探り、客層に合った演目を選びます。その際、上演演目の重複を避ける配慮も必要なため、寄席の楽屋には「根多帳」が必ずあります。

寄席の楽屋に必ずある「根多帳」。出演者が、自分の出番前に上演された演目名を確認できるようになっています。これを書くのも前座さんの仕事です

 何が聴けるかは、当日の流れ次第。そんなライブ感も寄席の醍醐味。ぜひリラックスして、演者とお客さんの距離感が近い寄席ならではの雰囲気を味わってみてください。

代表的な色物のひとつ「紙切り」の林家楽一。お客さんから「お題」をつのり、下書きもないままハサミ1本で一筆書きのように「お題」の形を見事に切り出していきます

公演前後のおたのしみ/野毛は夜だけじゃない

 野毛山動物園伊勢山皇大神宮など、お酒を飲まない人も、お子さんも、いろんな人が楽しめるスポットがあるのも野毛の魅力。

 たとえば、甘いもの。昔ながらのシベリアが名物の大正時代創業の「コテイベーカリー」、手作りのやさしい味にファンが多い「手づくりのケーキ プチ」、大銅鑼焼(おおどらやき)が神奈川県銘菓に指定されている老舗和菓子店の「もみぢ菓子司舗」など、知る人ぞ知る名店を訪ねて歩くのもおすすめです。

「コテイベーカリー」の名物・シベリア。ナイツの師匠・内海桂子が横浜にぎわい座に出演時は必ずシベリアの話をしていたとか

横浜にぎわい座のすぐ近く、住宅街の中にある洋菓子店「手づくりのケーキ プチ」

大衆芸能から広がる横浜の風景/横浜が舞台となった作品も

 落語の古典作品には、横浜にかつてあった神奈川の宿場を舞台にした作品など、横浜にちなんだ作品が少なからずあります。今年度は、そうした作品を集めた公演「横浜愛 名作落語の夕べ」などを開催。

 “横浜”にぎわい座ならではの、大衆芸能を楽しみながら横浜の新たな魅力や風景に触れられる機会も、ぜひチェックしてみてください。

芸能ホールの緞帳には、黒船、蒸気機関車、大道芸、野毛の切り通しなど、横浜や野毛を象徴するモチーフが描かれています

▼スポット・イベント紹介

【公演ピックアップ】

●「横浜愛 名作落語の夕べ」シリーズ4公演~その2「神奈川宿の賑い」

開催日時:2025年7月5日(土)18:00開演(17:30開場)

https://nigiwaiza.yafjp.org/perform/archives/29583

<今後のシリーズ開催予定>

その3 横浜ゆかりの噺/2025年11月予定

その4 伊勢佐木町 夢の興行街/2026年2月予定

●三遊亭ときん、柳亭小燕枝の「ただの野球好き」~横浜愛満載~

開催日時:2025年8月31日(日)14:00開演(13:30開場)

https://nigiwaiza.yafjp.org/perform/archives/29586

*横浜にぎわい座ではその他にもさまざまな公演を開催しています。

詳細は横浜にぎわい座ウェブサイトで https://nigiwaiza.yafjp.org/

▼執筆者紹介

文:遠山香織

プロフィール:2016年に横浜市芸術文化振興財団に入職。横浜能楽堂で古典芸能の制作に携わったのち、2024年より横浜にぎわい座に勤務。目下、興味があるのは日本の芸能の昔・いま・未来。と、野毛の飲み屋開拓。横浜にぎわい座に着任してから、大衆芸能の現場で、その幅広さと奥深さに目からウロコの日々を送る。

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