戦国LOVEWalkerでお城&メタ散歩を楽しもう③

大阪城天守閣は、100年前に開催された「大大阪記念博覧会」がきっかけで生まれた大阪全盛時代の象徴だった

 2025年12月22日刊行の「戦国LOVEWalker2026」の大きなテーマは2026年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」の主人公である豊臣秀長と豊臣秀吉の天下人兄弟だが、豊臣家の居城と言えば、言わずと知れた大坂城(当時は‟大坂”)。現在の大阪市にある大阪城の天守閣は、実は、豊臣時代・徳川時代に続く3代目となる。

 現在の大阪城の天守閣が出来たきっかけとなったのが「大大阪記念博覧会」。大正14年(1925)3月15日から4月30日まで、同年の大阪市の市域拡張と、大阪毎日新聞15,000号を記念して、大阪市で開催された博覧会である。市域拡張によって、大阪市の人口は139万人から203万人となり、東京市の199万人を抜き、日本一になった。

 世界的にもニューヨーク、ロンドン、パリ、ベルリン、シカゴに次ぐ第6位とされ、当時をさして、大大阪時代と呼ばれている。関東大震災は、大正12年(1923)9月1日に起きており、東京など関東地区が復興に努める中、大阪の存在感が増した時期でもあった。

 鉄筋コンクリートによる建造物は明治には採用され、大正にかけて徐々に増えてはいたが、関東大震災によって、そのすぐれた耐火性や耐震性によって広く採用されるようになっていった。大阪城の天守閣は、関西では、その早い時期の大規模な鉄骨鉄筋コンクリート造の「ビル」だった。

 さて、大大阪記念博覧会は、天王寺公園が第一会場で、大阪城が第二会場となった。一か月半の会期中にあわせて約190万人が訪れたが、うち第二会場の大阪城には、今の天守閣が建つ「天守台」に、「豊公館」と言うパビリオンが建ち、70万人が訪れた。

 この人気を見た後藤新平(第7代東京市長で各大臣を歴任。関東大震災時の第2次山本内閣では、内務大臣兼帝都復興院総裁として震災復興計画を立案した)が天守閣再建のアイデアを語ったといわれる。当時の大阪市長、關一(せきはじめ)が、天守閣再建を決断した。

 關市長は、昭和天皇の即位の大礼の記念事業として天守閣の再建を提案し、大阪市会の承認を得て、大阪城の紀州御殿に司令部を置く陸軍第4師団とも協議し、第4師団の新たな司令部庁舎を大阪城内に大阪市が建ててくれるならばと了承された。

 市民から寄付を募ったが、住友財閥の住友友成からの25万円など、7万8250余口150万円が集まった。そのうち47万円が建設費に充てられ、昭和6年(1931)11月に天守閣は竣工した。他には、今も残る第4師団司令部(MIRAIZA OSAKA-JO(ミライザ大阪城))の建築費に80万円以上が使われ、本丸・山里丸・二の丸の一部の大阪城公園化整備費にも使われたと言う。

 かくして、市民の寄付金により昭和6年(1931)11月、鉄骨鉄筋コンクリート造でエレベーターを備えた博物館として、3代目の大阪城天守閣が完成した。

ミライザ大阪城。旧第四師団司令部庁舎(もと大阪市立博物館)で、復興天守閣と同じ年に出来た建物。ショップや、レストランが入っており、屋上には、目の前に天守閣が迫るバーベキュー「BLUE BIRDS ROOF TOP TERRACE」が楽しい。地下1階には、2022年12月にオープンした「海洋堂フィギュアミュージアム ミライザ大阪城」が待っている

大坂城跡は、特別史跡に指定されており、重要文化財は、小天守台の金明水井戸屋形を含めて、全部で13棟ある

 大坂城跡は、国指定特別史跡に指定されており、大阪城天守閣は大阪市指定有形文化財。城内に残る国指定の重要文化財建造物は、小天守台の金明水井戸屋形を含め、全部で13棟ある。

大手門 - 寛永5年(1628)

塀 3棟(大手門南方、大手門北方、多聞櫓北方)

多聞櫓(渡櫓、続櫓) - 嘉永元年(1848)

千貫櫓 - 元和6年(1620)

乾櫓 - 元和6年(1620)

一番櫓 - 寛永5年(1628)

六番櫓 - 寛永5年(1628)

焔硝蔵 - 貞享2年(1685)

金蔵 - 宝暦元年(1751)

金明水井戸屋形 - 寛永3年(1626)

桜門 - 明治20年(1887)

 また、2015年からは、大阪府市が策定した「大阪都市魅力創造戦略」の中で、民間主体の事業者が公園全体を総合的かつ戦略的に一体管理するパークマネジメント事業(PMO事業)が導入され、大阪城パークマネジメント株式会社が大阪城天守閣と大阪城公園を管理している。ミライザ大阪城、ジョー・テラス・オオサカ、クールジャパンパーク大阪などの新しい施設も人気を集めている。

重要文化財の千貫櫓(せんがんやぐら)。千貫櫓が造られたのは元和6年(1620)。乾櫓とともに大阪城内で最も古い建築物。元和6年は徳川による大坂城再築工事が始まった年になる。作事奉行は、小堀遠州だった。千貫櫓は、大手口を北東から横矢で防御する二の丸の隅櫓。名前の由来は、元々、大阪城の場所にあった石山本願寺を織田信長が攻めた際、横矢をかける隅櫓に苦戦し、あの櫓を千貫文の銭を出してでも奪い取りたい、と兵士の間で噂されたことからからきている、と言う

千貫櫓の内部

重要文化財、金明水井戸屋形。小天守台の井戸。徳川時代に天守が築かれたのと同じ寛永3年(1626)に作られ、天守が焼失した際にも類焼を免れ今に残る

屋根の桃がかわいい。縁起物の桃は実はそこかしこにあり探してみるのも楽しい

【大阪城天守閣・施設概要】

住所:大阪市中央区大阪城1-1

休日:年末年始(12月28日~1月1日)

営業時間:9:00~18:00(最終入館は17:30)

料金:大人 1200円、大学生・高校生 600円 要証明(学生証の提示)

※中学生以下、大阪市内在住65歳以上の人(要身分証明書)、障害者手帳などを持つ人は無料

公式サイトURL:https://www.osakacastle.net/

『戦国LOVEWalker2026 ウォーカームック』

発行:株式会社角川アスキー総合研究所
発売:株式会社KADOKAWA
発売日:2025年12月22日
定価:1,760円 (本体1,600円+税)
ISBN:9784049112979
サイズ:A4判/100ページ
詳細・購入はAmazon

【目次】 千田嘉博先生インタビュー:「武将たちがあこがれた城」
特集:秀吉・秀長の城(長浜城、姫路城、郡山城、聚楽第、肥前名護屋城など)
特別企画:深掘り 大阪城ガイド
特別企画:有馬温泉
大河ドラマ特集(主演インタビュー、ドラマ紹介、仲野大賀さんインタビュー)
戦国メタ散歩:金沢城、三方原の戦い、河越城の戦いなど

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