下関の「ふぐ」を一泊二日で学んで味わう!ガストロノミーツーリズムのFAMツアーを体験レポート
2026年02月03日 12時00分更新
1月15日、16日に山口県下関市で行われた、「食」の力を最大活用したガストロノミーツーリズム FAMツアーに参加してきた。下関の特産品で、市のブランドシンボルにもなっている「ふぐ」。地元では“幸福を運ぶ魚=縁起物”として、「ふく(FUKU)」と呼ぶ伝統がある。
下関市の縄文時代の遺跡「塩待貝塚」からふぐの歯とされる遺物が出土しており、豊臣秀吉が出した禁食令や明治期の解禁令よりもはるかに昔から、下関ではふぐが食べられていたことがわかっている。
そんな下関市とは切っても切れない伝統食材「ふぐ」で地域を盛り上げようと企画されたのがこのガストロノミーツーリズムで、テストツアーは今回が2回目。「ふぐ」をキーワードにさまざまなスポットを巡った、一泊二日のツアーの様子をレポートする。
※ガストロノミーツーリズム:その土地の食材・習慣・伝統・歴史などによって育まれた食文化に触れることを目的としたツーリズムのこと
※FAMツアー:国や自治体などが観光誘致を目的に、旅行会社・メディア・インフルエンサーなどに現地視察してもらうツアーのこと。Familiarization Tripの略
■工程
【1日目】
下関市立しものせき水族館 海響館→日清講和記念館→赤間神宮→亀山八幡宮→夕食(喜多川)→リゾナーレ下関(宿泊)
【2日目】
南風泊市場→ふく小屋HATA→唐戸市場→カモンワーフ→下関市内で昼食→長府観光会館→JR下関駅(解散)
※スポット間はすべてタクシーで移動
■FAMツアー1日目
■“ふぐ愛”が止まらない!?「下関市立しものせき水族館 海響館」
ツアー初日。まず足を運んだのは、2025年8月に大規模リニューアルした「下関市立しものせき水族館 海響館」。ふぐは世界で約440種が確認されており、ここではそのうちの約100種を展示。トラフグやハリセンボンといった定番どころから、ふぐの仲間であるマンボウやカワハギ、淡水に住むふぐまでを観賞することができ、この展示規模はなんと世界一!
さらに骨格標本などを通してふぐに関する知識を学べる「フグペディア」なる常設コーナーがあり、水族館では珍しい(?)食用としての歴史にも触れられている。“ふぐ愛”にあふれる展示内容と水族館スタッフの解説に、ツアー参加者らは興味津々に聞き入った。
■下関市立しものせき水族館 海響館
住所:山口県下関市あるかぽーと6-1
■明治のふぐ食解禁地に隣接「日清講和記念館」
次に向かったのが、1985年春に下関で開かれた日清講和会議と、講和条約の歴史的意義を現代に伝える「日清講和記念館」。1937年開館で、講和会議の舞台となった料亭「春帆楼(しゅんぱんろう)」の隣接地にある。当時は国道9号あたりまでが海だったため、すぐ目の前の関門海峡に日本の軍艦を次々通過させて日本の軍事力を誇示することで、交渉を日本のペースで展開したらしい。
ちなみにふぐ食が解禁されたのは、明治時代に伊藤博文が春帆楼でふぐを食べ、その味を絶賛したことがきっかけ。しかし当時から山口の人たちは禁止されていたはずのふぐをこっそり食べていたそうだ。ガイドからは「伊藤博文もふぐのおいしさを知っていて、ひと芝居打ったのでは?」という地元ならではの説も飛び出した。
■日清講和記念館
住所:山口県下関市阿弥陀寺町4-3
HP:https://www.shimohaku.jp/page0106.html
■平家ゆかりの地で耳なし芳一の舞台「赤間神宮」
続いて訪れた「赤間神宮」は、境内に安徳天皇の御陵や平家塚(平家一門の墓)がある平家ゆかりの地。朱と白が目を引く水天門は、平家物語に安徳天皇と二位尼が住む竜宮城が出てくることから竜宮造という様式が採用されている。毎年5月にはこの水天門を背に、境内では華やかな特殊神事「先帝祭」が開催されるそうだ。
実は明治期の神仏分離によって仏教寺院から神社となった「赤間神宮」。前身である「阿弥陀寺」は、小泉八雲の怪談「耳なし芳一」の舞台になっており、平家塚のそばには「芳一堂」という祠が建っている。平家一門の墓の前で、「芳一堂」から流れる琵琶の音を聞きながら、参加者らは源平合戦に思いを馳せた。
■赤間神宮
住所:山口県下関市阿弥陀寺町4-1
■世界一巨大なふぐの像がある「亀山八幡宮」
次は唐戸市場そばの丘の上に鎮座する「亀山八幡宮」。境内から関門海峡が一望できる絶景スポットでもある。国道9号に面した大鳥居の「亀山宮」の文字部分には野球ボールが挟まっており、これが半世紀以上は落ちていないことから、この鳥居を拝めば入試や就職などに“落ちない”とされている。
今回は本殿にてガストロノミーツーリズムの成功を祈願するご祈祷を受け、ふぐをあしらった絵馬とお守りをいただいた。ご祈祷後は、境内にある世界一大きな「ふぐの像」の前で参加者全員で記念撮影。ちなみにこの像は1934年設置の「波のりふくの像」が大東亜戦争末期の金属供出で失われたあと、1990年に地元の有志たちによって再び建設されたものだ。
■亀山八幡宮
住所:山口県下関市中之町1-1
■2025年12月にオープンしたばかり「リゾナーレ下関」
参拝後はチェックインを済ませて、夕食までの時間をホテルで過ごすことに。この日泊まるのは、星野リゾートが手掛けるリゾートホテル「リゾナーレ下関」。すべての客室から関門海峡が見えるようになっており、時間帯で表情が変わる絶景を部屋のなかから楽しむことができる。そのほか、館内には砂地にソファやドームを配したふぐビーチ、全天候型のふぐプールといった施設も完備している。
■リゾナーレ下関
住所:山口県下関市あるかぽーと4-1
HP:https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/risonareshimonoseki/
■100年以上の歴史を誇る「ふく処 喜多川」
夕食は3班にわかれて、ふぐ料理を出す店に向かう。ふぐ料理の老舗「ふく処 喜多川」では、ふぐ刺しやふぐ鍋といったいわゆるスタンダードなふぐ料理に、今回のツーリズムのために開発したという「ふぐのあら炊き」を加えたフルコースをいただいた。
ふぐ刺しは天然ものと養殖ものの食べ比べという貴重な体験ができた。養殖でも文句なくおいしいのだが、天然ものは味の強さとその持続性に特徴があることを実感。またふぐのあら炊きは、煮物としては薄めの味付けながら、それがふぐの存在感を引き立てる見事な逸品。ふぐを知り尽くした老舗ならではの料理の数々に、参加者らは舌鼓を打った。
■ふく処 喜多川
住所:山口県下関市南部町7-11
HP:http://www.fuku-kitagawa.com/
■FAMツアー2日目
■全国からふぐが集まる「南風泊市場(はえどまりしじょう)」
2日目は、一般公開されていない日本唯一のふぐ専門の卸売市場「南風泊市場」の見学から。下関市彦島の西端にあるこの市場には、全国で捕れたふぐのほとんどが集まってくるという。今回は唐戸市場の松浦さんのガイドのもと、ふぐを管理するいけすを見学。市場にある水槽とイカダ(港内いけす)で、最大約5万匹のふぐを活かしたまま管理できるそうだ。
南風泊市場で行われる独特な競りの方法で「袋せり」がある。これは、黒い袋のなかで競り人の指を仲買人が何本握るかで価格が決まるというもの。松浦さんいわく、着物を着ていた時代は袖のなかで競っており、その名残りなのだそう。金額の表現方法を聞いたツアー参加者からは、ルールの複雑さに「難しい〜」といった声があがった。
■南風泊市場
住所:山口県下関市彦島西山町5丁目10-1
■ふぐ仲卸が営む「ふく小屋HATA」
「南風泊市場」見学後は、市場のすぐそばでふぐ料理を提供する「ふく小屋HATA」で朝ご飯。到着すると、店を営む畑水産の畑社長が明るく出迎えてくれた。店先での挨拶も程々に、店舗横の倉庫で活きのいい巨大ふぐを見たり、丸く膨らんだふぐのトゲ部分を触ったりと貴重なふぐとの触れ合い体験のあと店内へ。
通常は昼営業のみだが、このガストロノミーツーリズムにあわせて朝食コースを用意。コースに含まれる「焼きふぐ」は、味付けしたふぐを陶板で焼き、オリーブオイルとレモンで食べるオリジナルメニュー。米粉パンにのせて食べる「ふぐネギタルタル南蛮風」、梅干しをのせた「ふぐ雑炊」といったふぐ料理を堪能した。
■ふく小屋HATA
住所:山口県下関市彦島西山町5丁目9-5
Instagram:https://www.instagram.com/fukugoya_shimonosekihata/)
■多くの観光客でにぎわう「唐戸市場」
次に訪れたのは「唐戸市場」。毎週金曜〜日曜日にはネタの大きな寿司や海鮮丼などが並ぶ屋台イベントを実施しており、金曜日だったこの日も10時過ぎという時間帯ながらすでに多くの観光客ににぎわっていた。
ツアー参加者らは市場の2階にある実習室に移動し、吉田水産の吉田社長による「ふくみがき」を見学。「ふくみがき」とは「ふぐの身欠き」、つまり有毒・不可触部位と可食部位をわける下処理のこと。手際のよい包丁さばきに参加者らは見入っていた。
その後、兵庫県でふぐを養殖している若男水産の前田社長が来場し、稚魚の仕入れやエサの種類など、ふぐの養殖の現場について教えてくれた。「喧嘩していた夫婦が、ふぐを食べたら仲良くなって帰っていくのを見た。ふぐで笑顔になるのは日本人だけでなく、海外の人にも同じはず」と、ふぐを海外にアピールすることへの意気込みも語った。
■唐戸市場
住所:山口県下関市唐戸町5-50
HP:https://www.karatoichiba.com/
■レストランや土産物店が並ぶ「カモンワーフ」
ふぐについて学んだあとは、食べ歩きを楽しみながら「唐戸市場」と「カモンワーフ」を満喫!…の予定だったが、このあとすぐに昼食が控えていたこともあり、お腹の具合を考慮して参加者らは食べ歩きを断念。カフェで休憩したり、施設内を散策したり、各々で自由行動となった。
唐戸市場にある「ふぐの自販機」は日本でここにしかないこと、下関の外郎(ういろう)にはわらび粉が使われているため独特のもちもち食感を楽しめることなど、ガイドによる話を聞きながら、参加者らはショッピングを楽しんだ。
■カモンワーフ
住所:山口県下関市唐戸町6-1
■下関の絶景とフレンチを堪能「和欧風創作料理 日和庵」
昼食は2班にわかれて実施。訪れたのは、1921年(大正10年)に建築された古民家で営む「和欧風創作料理 日和庵」。和の外観ながら店内は洋館のような雰囲気で、丘陵地という立地から窓の外には関門海峡を望む最高のロケーション。こちらでは、季節の食材やふぐを取り入れた、ガストロノミーツーリズムのためのフルコースをいただいた。
フレンチに和の要素を取り入れたという料理は、どれも見た目から楽しませてくれるものばかり。トラフグを使ったオードブルをはじめ、下関産鹿肉のカルパッチョ、山陰産のキジハタを使った魚料理など地元の食材も取り入れた全8皿。参加者らは美しい盛り付けと奥深い味を、会話とともにゆっくり堪能した。
■和欧風創作料理 日和庵
住所:山口県下関市丸山町5丁目3-19
■広い駐車場完備で観光に便利「長府観光会館」
ツアーの最後は、城下町長府の散策の拠点であり、ふぐを中心とした山口県の観光物産店「長府観光会館」へ。ここでは観光客に人気の商品や、2年前から販売しているという「ふぐバーガー」を試食。食べやすいようカットされたバーガーやお菓子を味わいながら、ツアー内容に関する意見交換会が行われた。
参加者からは「下関のふぐを知るにはおもしろいツアーだった」「(創作フレンチなど)スタンダード以外のふぐの食べ方に感動した」「現地でしか体験できない内容でよかった」といった感想があがる一方で、「声が聞こえづらい瞬間があったのでマイクを用意したほうがいい」「スポットごとにガイドが話す内容をあらかじめ決めておいたほうがいい」といった意見もあった。
意見交換会の最後には、「地域の皆さんがすごく協力的で、すでにやってよかったと感じている。まだまだ改善の余地はあるが、いただいたご意見を踏まえて次のステップに進みたい」とツアーに同行した国際ふぐ協会会長・古川さんが挨拶。ふぐの魅力を全面に押し出した一泊二日のFAMツアーは幕を閉じた。
■長府観光会館店
住所:山口県下関市長府侍町2丁目1-15
下関でいかにふぐが愛され、親しまれているのかを改めて知ることができるガストロノミーツーリズム。ふぐ料理といえば刺し身や唐揚げのイメージが強かっただけに、現地でのふぐの食べ方のバリエーションにも驚かされた。ぜひ現地を訪れて、さまざまなふぐの楽しみ方を体験してみてほしい。
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