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「新宿の拠点再整備方針~新宿グランドターミナルの一体的な再編~」始動! vol.1

【連載/新宿再開発】新宿はこれからどうなる!? 次世代に向けて目指すべき新たな“都市”の姿とは?

2021年10月29日 12時00分更新

新宿は「東京」という都市のショーケースでなくてはならない

 

――新宿に限っていえば、どのようなまちを目指すべきでしょうか?

岸井「新宿にはさまざまな機能と地区が集積、併存していますが、一つ一つが全て世界一というわけではありません。例えば、もう少しディープなサブカルチャーなら池袋、電化製品なら秋葉原を真っ先にイメージしますよね。さまざまな機能や人が『集まっている』『広がっている』という今の状態から、それぞれのエネルギーが相互に作用して融合し、新しい何かを生み出す『次の段階』に入るべき。『新宿グランドターミナル』再編のテーマでもある、『交流・連携・挑戦』の場となることを目指したいと考えています」

――いろいろな顔の「新宿」を、一つの大きな「新宿」にする、ということでしょうか?

岸井「新宿は、駅の乗降客数1日350万人、渋谷や東京にも近いコアなところなのに、東口の歌舞伎町や西新宿の高層ビル群、エンタメ施設や飲食店など、複数集まっているエネルギーが融合しているかといえば、必ずしもそうではありません。

 もちろん、西新宿で働いている人が仕事の後に東口で飲むことはありますが、それは『融合』ではなく、それぞれのエリアの機能を人々が楽しんでいるということです。次の時代には、商業×エンタメ×業務のようにいろいろな機能が、お互いに刺激し合い、何か新しいものを生み出すことが求められます」

――そのようなまちの例は世界にありますか?

岸井「少し様相は違いますが、アメリカのシリコンバレーはその一例だと思います。ICT(Information and Communication Technology = 情報通信技術)を軸にさまざまな分野の人・企業が集まり、お互いに刺激を与え合い、あそこに行けば、誰か同じ志を持つ違う分野の人に出会え、何かチャンスがあるんじゃないかと思えたりしますよね。多様な国の人が自由に集まってきて、新しいものを生み出すために動いている…というイメージがあって。マーケットとしても世界に開かれている地で、自分にも挑戦できるチャンスがあるんじゃないか、と思える。そういうまちには自然と人が集まってきます。そういったものを意図的につくっていくことがとても大事です。そのタネは確かにありますから。

 東京も昔よりは外国人が増えたと思いますが、他の都市と比べればまだまだです。いろいろな人たちが、ここでチャレンジしようとか、ここで自分も何かできるんじゃないかと集まってくるような魅力をもっと高めていかないと、世界が変化していくなかでやや弱いのかな、と思います。

 新宿は、東京で挑戦したい人がまず訪れる地で、ここから次、奥が深い東京が始まるという、『東京』という都市のショーケースであり続けなくてはいけないと考えています」

――次世代の都市の見本となることが、『新宿グランドターミナル』には求められるのですね。

岸井「『新宿グランドターミナル』の再編では、そのメッセージをうまく打ち出せるかどうかがとても重要です。新宿の一番の強みは、とにかく大きくて、多くの人が集まっている世界一のターミナルということ。1日350万人がこの場所で動いているというのは、世界的に見てもとてもすごいこと。それだけ質の高い消費者がいるということにもなりますから。東京都、新宿区、鉄道各社が一丸となって、『世界一のターミナルはここにある、これだよね』っていうのを見せたいですね」

 

さまざまな機能を融合し、全ての人にチャンスがある新しい都市へと再編

 

 『新宿グランドターミナル』の再編では、老朽化が進んだ駅ビルの建て替えをはじめ、東西のまちをつなぐデッキの新設、歩行者優先の駅前整備、東西駅前広場の新設などを予定。駅とまち、まちとまちの回遊性の向上を図り、イノベーション機能の導入、次世代モビリティシステムへの対応なども方針として発表されている。

――「新宿グランドターミナル」の再編が、他の地区の開発事業と大きく異なる点は?

岸井「新宿は『世界一の駅と多様な顔を持つ大きい世界』ですが、今、次の時代の駅、商業、超高層ビル街、エンタメ、歓楽街について考える分岐点にあると思います。『機能純化の都市』から『機能融合の都市』へ向かう要素を大事にし、特定の地権者が強いまちでもないので、『全ての人』にチャンスを与える都市として再編されることが、大きな特徴です」

――例えば、東京駅周辺や渋谷にはどんな特徴が?

岸井「大丸有は世界に対峙(たいじ)するビジネスの世界、『戦う日本ビジネスの顔』として、規範的な要素が強いまちになっています。三菱地所が大きな地権者で、住民は少なく、金融や一流のものづくりをする大企業が中心です。

 渋谷はもう少し緩い生活文化を楽しむ世界。『憧れとなる日本の生活の顔』があり、自由の要素が強いまちとなっています。東急電鉄の影響力が大きいですが、大使館や大学も多く、周辺には松濤や青山といった高級住宅地もあり、IT系企業の出発点でもあります」

――今回の再編では、多様な都市機能が集積した抜群の拠点性と、世界一の乗降客数を誇る圧倒的な交通利便性を生かした新しいまちづくりの「デザインポリシー」を打ち出しています。

岸井「『デザインポリシー』は、商業地区の東口、歌舞伎町、西新宿の高層ビル街、賑わいの場である新宿中央公園など、特徴が異なるさまざまな新宿の要素を一つの『新宿グランドターミナル』として再編するため、空間や景観のつくり方を示すものです。 『新宿グランドターミナル』という施設が新しくできるわけではないので、どうやったら皆さんに認識してもらえるか、ただ古い建物の建て替えで終わらせず、皆さんで『新宿グランドターミナル』をつくり上げた、となるような、共通認識を持ってもらう工夫が必要だと考えて取りまとめました」

「新宿グランドターミナル」の再編イメージ。東西南北の移動がしやすい「人中心のまち」になり、多様な文化やにぎわいが交差する国際交流都市を目指す
※画像は「新宿の拠点再整備方針~新宿グランドターミナルの一体的な再編~」(平成30年3月)に掲載された画像に加筆したものです。

 
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