第3回
「新宿の拠点再整備方針~新宿グランドターミナルの一体的な再編~」始動! vol.3
【連載/新宿再開発】鉄道5社が初の一致団結! 力を合わせて新宿を“世界一”のまちへ
2021年12月17日 12時00分更新
目指すは「新宿ランド」!? 各社の最重要拠点・新宿の今と
これから
鉄道5社にとって、新宿の駅、まちはともに最重要拠点として位置付けられている。その特徴や魅力はどのようなものだろうか。
――各社から見て、新宿の駅、まちとはどのような存在ですか?
(小田急・北島)「新宿のまちの発展と共に、当社も発展してきました。そういう意味では、今までもこれからも重要な存在です。まち自体は歴史の積み重ねがあり、新旧が重層的に共存しているのが魅力。誰もが受け入れてもらえる、誰にとっても居心地の悪さを感じない、これからもさまざまなものを受け入れて成長していくまちだと思っています」
(京王・北原)「新宿駅は当社最大の乗降客数を誇る駅で、沿線のまちとつながる玄関口であると同時に、路線の終端駅。当社の路線は東京の西側と都心を結んでいますが、自然が残るのどかな西側から新宿に近づくにつれて乗降客数も増え、新宿に出ることで普段とは違った楽しみを見つけられるような、日常と非日常の境目のようなまちです。
まち自体は、西口のビジネス街や東口の歓楽街などエリアごとに大きく個性が異なるのが魅力でしょうか。ある意味、美し過ぎないところが、本当の多様性を受け入れる土壌として適していると思っています」
(東京メトロ・近藤)「当社は駅名に『新宿』と付く駅が5つあり、有数の乗降客を誇ります。その駅一つ一つに、性別、国籍問わず、いろんな方々が集まっており、多様性という意味でも魅力的なまちですよね」
(西武・油井)「西武新宿駅は『新宿グランドターミナル』のエリアのほんとに端っこにあるのですが(笑)、コロナ禍前は1日の乗降客数が約18万人あり、新宿プリンスホテル、西武新宿PePeと合わせて、西武グループの中では沿線の価値向上のための非常に重要な拠点となっており、都心部と沿線エリアをつなぐターミナル駅と位置付けています。西武グループのスローガンは『でかける人を、ほほえむ人へ。』ですが、新宿は、多様な出掛ける人のニーズに応えられるポテンシャルのあるまちだと思います」
(JR東日本・鈴木)「先ほど、小田急さんが『歴史の積み重ね』、京王さんと東京メトロさんが『多様性』とおっしゃいましたが、そのような歴史があり寛容力があるというのは、とても新宿らしいと思います。社内でこの新宿らしさをひと言で表すいいコンセプトを探していたんですが、『テーマパークがそうじゃないか!』と」
――確かに、新しいゾーンが次々生まれたり、多くの人々を歓迎したりして、訪れた人誰もが楽しめますね。
(JR東日本・鈴木)「ある有名なテーマパークは、いろいろなゾーンがあって、各ゾーンのテーマは異なっていても全体が一つのコンセプトでまとまっていて、老若男女が訪れて、誰もが楽しめる場所になっています。あのイメージをリアルな新宿のまちでつくりたいな、と考えたんです。社内では『新宿ランド』と呼んでいるんですよ(笑)。そういうイメージを掲げながら、この鉄道5社だけでなく、行政や地元の方々も巻き込んで旗印にしながら、まち全体で盛り上げていきたいですね。“世界一の駅・新宿”を世界に向けて発信することが、このメンバーや土地柄ならできると信じています」
企業間の壁を越えて人中心のまち、利用しやすい駅に再編
今回の「新宿の拠点再整備方針~新宿グランドターミナルの一体的な再編~」では、「交流・連携・挑戦」というメインコンセプトの下、10の再整備方針が発表されている。具体的には「グランドターミナルとまちを『東西骨格軸』でつなぐ」「人中心の広場とまちに変える」といったものだ。
――特に注目している方針やポイントは?
(JR東日本・鈴木)「東西南北に歩行者ネットワークをつくっていく点でしょうか。新宿というまちはまず道があって、そこに宿場町ができて発展してきたという歴史があります。それを踏まえると、まずは人が歩く動線が充実することがまちの発展として重要で、駅からまちへ、まちからまちへという動線をつないでいくことが大事なポイント。今回、鉄道5社が協力したからこそ、東西南北の軸が初めて生まれるのではないでしょうか」
(小田急・北島)「10の方針は全部大切ですが、特に着目しているのは、『人中心の広場とまちに変える』という方針です。歩きやすくするのはもちろんですが、滞在・滞留空間をしっかり整備しつつ、そこがさまざまな活動の場、ひと休みできる場となることで、人が活動を活性化するまちになると考えています」
――西口に南北400mをつなぐ空中回廊(スカイコリドー)や屋内の縦動線を生む歩行者回廊などが造られる計画もあります。
(小田急・北島)「さまざまなものがある新宿で不足しているといわれているのが、滞在・滞留空間でした。それをどこに設けるかと考えたときに、まちを立体的に縦に考える、縦に充実させるという結論にたどり着きました。今回の新しいポイントの一つで、座れる、休める、くつろげる場という観点から設置されるのが空中回廊(スカイコリドー)です。
さらにこの空間に併設する形で、新しい魅力が生まれるオープンイノベーション施設を整備します。作り手や企業側だけでなく、一般の消費者も交えながら、地域、生活、社会の課題を見つけて、それに対して作り手は新しいものを生み出し、消費者はそれを見て触って、またフィードバックしていくという『社会課題解決型』の場として展開することも考えています」
(東京メトロ・近藤)「あとはやはり、東西デッキなどを新設して『グランドターミナルとまちを「東西骨格軸」でつなぐ』という方針ですね。新宿は鉄道会社が次々と開業し、地下も含めて重層的な駅ができましたが、利用者にとっては東西の通り抜けができなかったり、不便もあったかと思います。2020(令和2)年7月に新宿駅東西自由通路が開通して、便利になりつつあり、今後、上空も地下もつながっていくのは非常にいいことだと考えています。
実は当社は60年ほど前から、丸ノ内線新宿駅と新宿三丁目駅の間にある歩行者専用の地下連絡通路『メトロプロムナード』で東西軸をつないでいたんですよ。これは言っておかないと(笑)」
――複雑な新宿駅も、もっと利用しやすくなりますか?
(京王・遠藤)「はい。『新宿の拠点再整備方針』の一つに『グランドターミナルを一体化して整える』という方針が記載されていますが、当社は、京王線のホームを東京メトロ丸ノ内線側に移動して改札を新設し、乗り換え利便性の向上を図る案を検討しています。今後さらに増えるであろう人の交錯を避けるために、乗り換えの動線を一つ下げて、まさに重層的に動線をつくるという計画です。
小田急の北島さんがおっしゃったとおり、10の方針は全部大切で、これを全て実現することで、まちが広がって、人や駅がまちとつながって、いろいろなところに人が行き来できるようになる、新宿からいろんなところへ行くという動きが拡大していくのが一番のポイントかなと思っています」
(西武・油井)「当社も京王さんと同じ方針に着目しています。当社は、西武新宿駅と東京メトロ丸ノ内線新宿駅をつなぐ地下通路の検討を進めていて、具体的には西武新宿駅からつながる新宿サブナードとメトロプロムナードを結ぶ新しい地下通路を計画しています。
この通路が開通すると、西武新宿駅から各社新宿駅への乗り換えの利便性だけでなく、歌舞伎町などのエリアとその他のエリアを結ぶ回遊性も向上します。これまでは地下での移動には迂回(うかい)が必要でしたが、開通後はほぼ直線で移動できるようになり、所要時間が短縮される予定なんですよ」
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