まちの魅力から春節の楽しみ方までを横浜・野毛町のプロに聞く
戦後闇市から奇跡の復興!昭和と令和が混在する野毛町は昼も夜も楽しい!
2025年02月21日 19時00分更新
1月15日(水)から2月28日(金)まで、横浜中華街を中心に「横浜春節祭2025」が開催中。期間中は「巨大ランタンオブジェ」が横浜中華街をはじめとした市内約50か所に設置されるほか、獅子舞演舞披露など様々なイベントが開催されます。
今回、横浜中華街グルメ大使で横浜春節祭公式グルメ大使でもあるはっしー(橋本陽)さんが、横浜春節祭を盛り上げる6人のキーパーソンに特別インタビューを敢行。第3回は、野毛地区振興事業協同組合理事長で野毛飲食業共同組合理事長の田井昌伸さんに「横浜のまちの魅力」「お気に入りのお店」「春節祭への意気込み」を尋ねました。
戦後の闇市を経て、飲食店に活気が復活
(はっしーさん)野毛と言えば“飲み屋街”というイメージを持つ方が多いと思いますが、もともとはどのような街だったのでしょうか?
(田井さん)実は、もともと野毛は衣類や靴、生活雑貨を扱う商店が多い“物販の街”だったんですよ。戦前から戦後すぐまでは、今ほど飲食店は多くなかったんです。でも戦後に闇市ができて、そこで鯨肉や闇焼酎が流通し始めたあたりから、徐々に「飲んで食べる」エリアへと変わっていったんです。
(はっしーさん)闇市だったイメージは語られることもありますが、鯨肉も売られていたんですね。
(田井さん)当時アメリカは鯨を捕っても、脂だけを使って赤身は処分していたらしいんです。それを闇市で買い付ける業者がいて、横浜・野毛に“クジラ横丁”と呼ばれる露店街ができました。まかないの焼酎を出すお店も一気に増えて、そこで安く飲めたというのが、今の野毛の飲食文化の原点と言えるんです。
東急東横線の廃止がもたらした大きな転機
(はっしーさん)その後、野毛は飲食店が増えていったわけですが、1964年の東京オリンピックあたりからも街並みが変わったとお聞きしました。
(田井さん)そうですね。東京オリンピックを機に露店を一斉撤去した影響もあって、野毛の商店街は衰退していきました。当時は横浜駅西口がどんどん整備されて、人の流れがそちらに集中し始めたんです。お店の倉庫化も進んで、空き店舗が増える中で、今度は飲食店が入ってくるようになった。それが今の「飲食の街・野毛」のベースになっています。
さらに大きかったのは、2004年の東急東横線桜木町駅の廃止ですね。あのときは“最後の日”に大勢の人が押し寄せたものの、翌週からは一気に客足が減りました。そこから閉店する店も多かったんですが、その結果、空いた店舗を若い人たちが居抜きで借りてバーやカフェバーを始める動きが出てきて、一気に新しいお店が増えたんです。
(はっしーさん)危機がむしろ新陳代謝を促して、若い世代の参入が今の野毛の活気に繋がった、ということですね。
(田井さん)おっしゃる通りです。ホルモン焼きや立ち飲みスタイル、カジュアルなイタリアンなど、若者向けのお店が登場して、若いお客さんも増えました。昔からの小料理屋や寿司屋、焼き鳥屋などが残っていて、新旧が同居しているのが今の野毛の面白いところですね。
夜だけだと思っていたらもったいない!野毛はランチも昼飲みも楽しめる町
(はっしーさん)僕も野毛町エリアには何度も来させていただいてるんですけど、「いがぐり食堂」さんは好きなお店の一つです。イタリアンのカジュアルな料理店で、「卵かけスパゲッティー」を略した「TKS」というメニューが美味しいんですよね。メレンゲのようにふわふわに泡立てた卵ソースを絡めて食べるパスタで、それが飲んだ後の締めにぴったりで。何軒かはしごした後に、「いがくり食堂のTKSで締めようか」みたいな感じで友人と使わせてもらっています。でも、野毛は夜だけでなく、じつはランチタイムも充実していますよね。
(田井さん)戦前・戦後の商店街時代を経ているからこそ、洋食屋や町中華、寿司屋がかなり充実しているんですよ。昔からの有名店では「センターグリル」のナポリタンや「キムラ」のハンバーグは定番ですし、小さな中華料理店も多数あります。最近は平日の昼間からお酒を出しているお店も増えているので、“昼飲み”を楽しむ人も少なくないですね。
(はっしーさん)ランチもできて、昼飲みも可能となると、より幅広い層が訪れやすくなりますね。
(田井さん)夜の雰囲気が苦手な方でも、昼間なら気楽に来られますし、ランチで野毛の味を試してみるのも良いと思います。そういう意味では、昔ながらの“物販の街”の名残が、今になって強みになっている部分もありますね。
横浜春節祭からの回遊を狙う施策は「大岡川を光で彩ること」
(はっしーさん)横浜春節祭の時期に合わせて、野毛や日の出町に賑わいを創出する企画があると伺いました。具体的にはどのようなことをされているのでしょうか。
(田井さん)横浜春節祭は毎年1~2月にかけて行われますよね。実はこの冬の時期はどの街も人手が落ち込みやすい時期で、野毛も例外じゃないんです。そこで、同じ中区エリアの商店街同士で連携して、大岡川沿いにランタンや提灯を設置してみよう、という話が出てきました。
暗い冬こそ光で街を明るくして、夜でも安心して散策できるようにしたいと思っています。それによって、横浜中華街に来た人が「ちょっと川沿いを歩いて日の出町や野毛まで行ってみようか」となってくれたらうれしいですよね。
(はっしーさん)確かに冬の野外は敬遠されがちですが、光があると歩いてみたくなります。大岡川沿いの提灯やランタンを目印に、自然と野毛に人が流れていくというわけですね。
(田井さん)そうなんです。橋の上や川沿いに設置した光が、人の足をそちらに向けてくれるのではないかと期待しています。春には桜まつりがあって、多くの人が川沿いを歩きますが、冬場もそういう演出があれば回遊性が高まるはず。行政の補助や企業との連携も必要ですけど、皆さんの協力が得られれば、街はもっと面白くなると思っています。
飲食だけでなくエンターテインメントのある町を目指して
(はっしーさん)最近の野毛は、週末ともなると若い人からご年配まで、本当に多彩な層の方々で賑わっていますね。
(田井さん)戦後の闇市から商店街、そして飲食街になり、さらに若い世代のお店も入り混じって、現在の野毛ができて、それに合わせて客層も変化してきました。今後は大道芸や音楽イベントなどとも組み合わせて、ただ食べて飲むだけじゃなく、エンターテインメントがある町としての魅力も発信していきたいと思っています。行政や企業が主導して一気に開発するのではなく、地元の住民と商店・飲食店が手を取り合って、一歩一歩作り上げていくのが野毛の良さだと思いますね。
(はっしーさん)最後に、これから野毛を訪れようとしている方へメッセージをいただけますか?
(田井さん)野毛は何度も形を変えながら、戦後からずっと人々の暮らしと飲食を支えてきた街です。昔ながらの小料理屋や寿司屋と、若者が始めた新しいお店が共存していて、はしご酒をするにも、ランチを楽しむにも、かなり奥深いところがあります。ぜひ路地裏や川沿いをぶらぶら歩いて、野毛ならではの“粋”な雰囲気を楽しんでみてください。
横浜春節祭2025
場所:横浜ベイエリア、首都圏、神戸エリアなど約50会場
会期:2025年1月15日~2月28日
巨大ランタンオブジェの展示や中華獅子による獅子舞などいろいろなイベントが盛りだくさん!詳しくは公式サイト(https://www.shunsetsu.jp/)をご確認ください。
田井昌伸さん●とんかつやお酒に合う一品がたのしめる「パリ一(いち)」の店主。店を営む傍ら、野毛地区振興事業協同組合理事長や野毛飲食業協同組合理事長、野毛大道芸実行委員会委員長を務めるなど、野毛の賑わい創出に欠かせないキーパーソン。
はっしー(橋本陽)さん●グルメプレゼンター。今まで全国15,000軒以上の飲食店を自腹で訪問し、テレビやSNSで食べ歩き&お取り寄せグルメを楽しくプレゼン。TBS「ラヴィット!」本気肉調査隊やテレビ朝日「キッチンカー大作戦!」などにレギュラー出演中。食で日本を元気にするため、農林水産省の国産食材アンバサダーや総務省の地域力創造アドバイザーを務めるほか、横浜中華街で史上初の公式グルメ大使として活動。2025年からは横浜春節祭の公式グルメ大使に就任し、横浜ベイエリアを中心とする横浜春節祭の魅力と美味しさを発信中。
取材に協力いただいたお店
福家(ふくや)
住所:神奈川県横浜市中区野毛町2-97
営業時間:月~土曜 ランチ11:30~13:30、月~日・祝日 ディナー17:00~22:00
定休日:日曜
HP:https://g656700.gorp.jp/
※本記事の内容はインタビュー時点の情報にもとづいています。実際に訪問される際は、事前に営業時間やイベントの有無を確認することをおすすめします。
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