丸の内LOVE Walker総編集長・玉置泰紀の丸の内MEMO
今年のラ・フォル・ジュルネはまさに、音楽のフルコース。世界中のあらゆる音楽の歴史的な局面をワクワクさせて音楽こそが「オリジン」だ
2024年05月01日 12時00分更新
昨年の4年ぶりのラ・フォル・ジュルネ(LFJ)のテーマはベートーヴェンだったが(元々は2020年のテーマで、ベートーヴェン生誕250周年にちなんだものだったが、新型コロナウイルスの感染拡大により中止になったため、2023年に改めて取り上げられた)、今回のテーマは「ORIGINES(オリジン)ーすべてはここからはじまった」。世界のあらゆる国々の作曲家たちをインスパイアしてきた様々な音楽の伝統に、スポットライトを当てる。メインビジュアルに取り上げられた作曲家は22人に及び、ベートーヴェンは勿論、バッハからモーツァルト、国民楽派から現代音楽のグラスまで非常に幅広い。まさに、2024年は、様々な音楽を楽しめるフルコースのディナーになる。
メインビジュアルに取り上げられた作曲家は左から以下のメンバー。
①アントニオ・ヴィヴァルディ
②ヨハン・セバンチャン・バッハ
③ヨーゼフ・ハイドン
④ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
⑤ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
⑥ルイーズ・ファランク
⑦フランツ・シューベルト
⑧ファニー・メンデルスゾーン
⑨フレデリック・ショパン
⑩クララ・シューマン
⑪モーリス・ラヴェル
⑫ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
⑬セルゲイ・ラフマニノフ
⑭メラニー・ボニス
⑮イーゴリ・ストラヴィンスキー
⑯ヨハネス・ブラームス
⑰ガブリエル・フォーレ
⑱ジョージ・ガーシュウィン
⑲ジェルメーヌ・タイユフェール
⑳フランツ・リスト
㉑ナディア・ブーランジェ
㉒フィリップ・グラス
今回のテーマの狙いについて、LFJアーティスティック・ディレクターのルネ・マルタン氏は以下のように説明している。
「まさに「音楽の父」の名にふさわしいJ.S.バッハでさえ、悠久の時と文明のるつぼに深く根を下ろした長い音楽の伝統を受け継いでいました。そして彼以後の作曲家たちは皆、どの大陸の、どの国の出身であっても、古くからの遺産をよりどころとして自分たちの音楽言語を練り上げ、作品を生み出してきました。
LFJ2024では、主に三つの角度から、この極めて豊かなテーマを掘り下げていきます。
音楽を通して「オリジン」が探求された有名な例は、19世紀半ば以降にロシア、ハンガリー、チェコスロバキア、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フランス、スペインなどで花開いた「国民楽派」です。この運動は、大昔に諸民族の魂から生まれた伝統の限りない豊かさに、価値を見出しました。これらの様々な伝統は、長きにわたり互いに影響を与え、混じり合ってきたわけですが、そのような肥沃な土壌が、作曲家たちの想像力をかき立てたのです。LFJ2024では、この大きな潮流を代表する楽曲の数々をお聞きいただきます。ムソルグスキー、チャイコフスキー、スメタナ、ドヴォルザーク、コダーイ、バルトーク、さらにはグリーグ、シベリウス、アルベニス、ラヴェル、ビゼーらが、各国の限りなく豊かな大衆音楽から想を得、名曲を残しました。
音楽の「オリジン」をめぐるテーマは、楽曲形式の変遷にも私たちの関心を向けさせます。時代を超えて多くの傑作を生み出してきたソナタ、四重奏曲、協奏曲といった重要な形式は、どのように誕生したのでしょうか? LFJ2024では、この問いの具体的な答えとなるプログラムをお届けします。LFJ2024は、楽器の起源にも目を向けます。今日の私たちが知る楽器は、どのように生まれ、時とともにどのような変化を遂げたのでしょうか? 人間の息は、あらゆる音楽の起源でした。竪琴とともに世界最古の楽器の一つとされる笛以上に、息を、すなわち世界の起源を体現する楽器があるでしょうか? LFJ2024では、格別に長い歴史をほこる楽器もご紹介します。たとえば、今から2000年前にバビロンで生まれた「ウード」は、アラブ/ペルシア文化圏を象徴する撥弦楽器であり、幾世紀にもわたり弾き継がれてきました。また、アルメニアの魂の歌を奏でる木管楽器「ドゥドゥク」は、その独特なサウンドで私たちを魅惑します。
さらにLFJ2024では、パイオニア的作品その法外な革新性によって新たな道を切り拓き、音楽史の流れを変えた作品も取り上げます。その好例が、ヴィヴァルディの《四季》、ストラヴィンスキーの《春の祭典》、バーンスタインの《ウエスト・サイド物語》です。
LFJ2024は、このインスピレーションに富んだテーマにちなんだオリジナル・プロジェクトもお贈りします。」
ワクワク、どきどきのおもろい「オリジン」なプログラムをチョイスしてみたぞ。売り切れのコンサートも出てきているので急げ!!
ラ・フォル・ジュルネ(LFJ)は、東京国際フォーラムを中心に、大手町・丸の内・有楽町、東京駅、京橋、銀座、八重洲、日比谷を舞台に、1日ではとても回りきれないほどの多彩なプログラムを用意している。まさに、“LFJはクラシックのテーマパーク”。朝から晩までコンサートを楽しみ、地上広場でワインを味わいながら無料コンサートに親しむもよし。楽しみ方は無限にある。
ここでは、東京国際フォーラムでの有料コンサートから、筆者がビビッときた「おもろい」コンサートをピックアップした。ただし、数多くのコンサートも着実にソールドアウトしていっているので、それぞれのチケットがまだ入手可能かは確認してほしい。
「なるほど、オリジンっていうのは、音楽の歴史の様々な局面でのワクワクの事なんだ」ということが分かるプログラムばかりだ。
●5月3日
『魂柱と鞴と鞴と声帯』
https://www.lfj.jp/lfj_2024/performance/timetable/detail/126_modal.html
人気の姉妹ユニット&新倉・佐藤デュオが、ユダヤのクレズマー音楽を介して展開する刺激的コラボ。チャラン・ポ・ランタンは歌とアコーディオンの姉妹ユニット(もも、小春)で、ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」のテーマ曲で注目を集め、Mr.Childrenや松井玲奈、私立恵比寿中学など、幅広くコラボレーション活動も行っている。この組み合わせが生み出す「オリジン」に注目だ。
【時間】 20:30 〜 21:15
【会場】 東京国際フォーラム ホールC:エスプレッシーヴォ
【アーティスト】
新倉瞳(チェロ) )
佐藤芳明(アコーディオン)
チャラン・ポ・ランタン(唄とアコーディオン)
【曲目】
ヴィヴァルディ:チェロ・ソナタ 第5番 ホ短調 RV.40から(新倉・佐藤)
チャラン・ポ・ランタン:空が晴れたら(チャラン・ポ・ランタン)
愛の讃歌(チャラン・ポ・ランタン バージョン)
クレズマーメドレー
『アメリカの音楽、かく始まれり』
https://www.lfj.jp/lfj_2024/performance/timetable/detail/125_modal.html
Viva America ! 米国クラシック音楽史の黎明期を生きた作曲家たちに光を当てるプログラム。ヨーロッパに比べると歴史は浅く、ジャズや映画音楽と言った違った要素から生まれた音楽のオリジンはどんなものだったのか。
エマニュエル・シュトロッセ(ピアノ)は、パリ国立音楽院でペヌティエ、イヴァルディに師事。フライシャー、バシキーロフ、ピリスのもとで研鑽を積んだ。フィレンツェ室内楽コンクール、クララ・ハスキル・コンクール入賞。ソリストとしてはもとより、室内楽奏者としても定評があり、オリヴィエ・シャルリエ、ヤン・ソンウォンと共にトリオ・オウオンとしても活動中。
エリプソス四重奏団(室内楽)は、2004年にナントで結成。パリ国立音楽院でメイエおよびル・サージュから指導を受けた。2007年、FNAPEC国際室内楽コンクールで第1位を獲得。古典作品から現代曲まで幅広いレパートリーを誇る。これまで、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、リヨン国立管、フランス放送フィルハーモニー管等の名門から招かれ共演。
【時間】 18:00 〜 18:45
【会場】 東京国際フォーラム ホールC:エスプレッシーヴォ
【アーティスト】
エマニュエル・シュトロッセ(ピアノ)
エリプソス四重奏団(室内楽)
【曲目】
ガーシュウィン:3つの前奏曲から
ワックスマン:アルテミスへの夢
バーンスタイン:「ウエストサイド・ストーリー」から マンボ、マリア、アメリカ
●5月4日
『バーンスタイン+坂本龍一、天才の躍動』
https://www.lfj.jp/lfj_2024/performance/timetable/detail/213_modal.html
音楽のるつぼ「ウエストサイド・ストーリー」&バルセロナ五輪開会式を彩った「地中海のテーマ」。レナード・バーンスタインと坂本龍一というクラシックやロックなどの枠にとらわれない音楽家の姿をパッケージした、音楽の創造のオリジンに迫る企画。
シエナ・ウインド・オーケストラは、1990年結成のプロのウインド・オーケストラ。佐渡裕を首席指揮者に擁し、宮川彬良など多彩な指揮者を迎えている。2017年挾間美帆をコンポーザー・イン・レジデンスに迎える。文京区と事業提携し文京シビックホールを拠点に演奏活動を行う他、地域や教育機関と密着した活動も展開する。CD・DVDも多数リリースしている。
出口大地(指揮者)は、第17回ハチャトゥリアン国際コンクールで、日本人初の優勝。関西学院大学、東京音楽大学指揮科を経て、2023年ハンスアイスラー音楽大学ベルリン指揮科修士課程修了。2022年7月、東京フィルハーモニー交響楽団定期演奏会で日本デビューを飾り一躍注目を集め、以降各オーケストラへのデビューが続く気鋭の指揮者。
【時間】 15:45 〜 16:30
【会場】東京国際フォーラム ホールA:グランディオーソ
【アーティスト】
シエナ・ウインド・オーケストラ
出口大地 (指揮者)
【曲目】
バーンスタイン:「キャンディード」序曲
坂本龍一:El Mar Mediterrani(地中海のテーマ)
バーンスタイン:「ウエストサイド・ストーリー」からシンフォニック・ダンス
『スターたちによる愉悦の音楽!』
https://www.lfj.jp/lfj_2024/performance/timetable/detail/215_modal.html
“SALT”こと塩谷哲&日本ブラス界のスターたちが、20世紀前半に生まれた“超”名曲に挑む! これも世紀の始まりを告げるオリジン。
塩谷哲(ピアノ)は、ピアニスト/作・編曲家/プロデューサー。東京藝術大学作曲科出身。現在までに12枚のオリジナルアルバムを発表。活動のジャンル・形態は多岐に渡る。NHK「名曲アルバム」にオーケストラ・アレンジを提供する他、NHK Eテレ『コレナンデ商会』の音楽を担当。国立音楽大学ジャズ専修准教授。
SUPER BRASS STARS(器楽アンサンブル)は、世界的ブラスプレイヤーの中川英二郎、エリック・ミヤシロ、本田雅人によるユニット。20年に行われたオンラインフェスにてコロナ禍を逆手にとり3名だけで魅せたステージが好評を博し活動を開始。トリオ、ラージアンサンブル、オーケストラとの共演など幅広いコラボで音楽ファンを虜にしている。
【時間】 21:15 〜 22:00
【会場】東京国際フォーラム ホールA:グランディオーソ
【アーティスト】
塩谷哲(ピアノ)
SUPER BRASS STARS(器楽アンサンブル)
中川英二郎(トロンボーン)
エリック・ミヤシロ(トランペット)
本田雅人(サクソフォーン)
東京フィルハーモニー交響楽団(オーケストラ)
三ツ橋敬子(指揮者)
【曲目】
ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー
ラヴェル:ボレロ feat. SUPER BRASS STARS LFJスペシャルバージョン
●5月5日
『ミチヨシ&山根VS伊福部の伝説、再び!』
https://www.lfj.jp/lfj_2024/performance/timetable/detail/315_modal.html
引退表明の井上道義、最後のLFJ公演!日本クラシック音楽史が生んだ鬼才へのオマージュ。今も、日本はもちろん、アメリカや世界を魅了する怪獣、ゴジラの音楽を生み出した伊福部昭の音楽は、日本の音楽の根源、オリジンにも深く切り込んだ音楽だった。
井上道義(指揮者)は、新日本フィル音楽監督、京響音楽監督、大阪フィル首席指揮者、アンサンブル金沢音楽監督を歴任し、斬新な企画と豊かな音楽性で一時代を切り開いた。2023年「井上道義:A Way from Surrender ~降福からの道~」を世界初演。第54回サントリー音楽賞受賞。2024年12月30日に指揮活動を引退するため今回がラストLFJとなる。
【時間】 21:00 〜 21:55
【会場】 東京国際フォーラム ホールA:グランディオーソ
【アーティスト】
山根一仁(ヴァイオリン)
新日本フィルハーモニー交響楽団
井上道義(指揮者)
【曲目】
伊福部昭:ヴァイオリンと管弦楽のための協奏狂詩曲
伊福部昭:シンフォニア・タプカーラ
ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024
開催日 :2024年5月3日(金・祝)・4日(土・祝)・5日(日・祝)
会場 :東京国際フォーラム、大手町・丸の内・有楽町、東京駅、京橋、銀座、八重洲、日比谷
公演数 :90公演(有料公演のみ)
公式サイト :https://www.lfj.jp/lfj_2024/
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