「ご飯がおいしくなった!」の声も。国際ビルの一室にオープンした「丸の内精米店」のチャレンジ
2024年09月05日 12時00分更新
2024年8月、東京・丸の内に新たに「丸の内精米店」がオープンしました。ただ、このお米屋さん、普通のお米屋さんではないようです。
「丸の内精米店」は試験運用が始まった「MEC PANTRY(メックパントリー)」という共同調達プラットフォームの第1弾プロジェクト。三菱地所が、丸の内エリア(大手町・丸の内・有楽町)の飲食店を対象に、食材費やエネルギーコストなど増大する飲食店の運営コスト低減を目指しています。
丸の内エリア専門のお米屋さんとはどんな店なのか、国際ビルの一室にあるMEC PANTRYを訊ね、そこで働いている佐々木大輔さんと山田真吾さんにお話を聞いてきました!
飲食店舗に新たなサービスを
――なぜこのMEC PANTRYという事業を始めることになったのでしょうか。
佐々木さん「私たち2人は長年、商業施設関連事業に携わっているのですが、コロナ禍を経て、店舗、特に飲食店経営を取り巻く環境はかなり厳しくなったなと感じています。(コロナ禍で)お酒の飲み方が変わったこともあり、売上を確保することが難しくなっていることに加え、食材費、エネルギーコスト、人件費などが高騰しています。
飲食店を取り巻く環境がますます厳しい状況になっていく中で、三菱地所として、場所を提供して賃料をもらう以外に、何かできることはないかなと考え、店舗の代わりに食材を調達することで飲食店のコストダウンを図る共同調達のプラットフォームを作れないかと考えたのがきっかけです。
数ある食材の中でもお米に着目したのは、多くの店舗が共通して扱う商材という点と、個人的に好きというシンプルな理由から、まずはお米からやってみようということになりました」
――「丸の内精米店」が始まってまだ1ヶ月も経っていない(※取材時)ところではありますが、事業の状況はいかがでしょうか。
佐々木さん「まだまだ本格的な稼働はこれからですが、現在は三菱地所が運営している『Marunouchi Happ.STORE』『Marunouchi Happ. Stand & Gallery』をはじめ、約4店舗に取り扱っていただいております」
山田さん「10月頃より、その他の飲食店舗も順次増えていく予定です」
佐々木さん「新米の時期ですね」
“精米したて”のおいしさを体感してほしい
――お店側から反響は何かありましたか。
佐々木さん「まだ直接はもらえていないですが、社員食堂のSPARKLEでは、近しい社員が我々がアナウンスするより先にお米が変わったことに気付き、『お米がおいしくなったから厨房の人に聞いたら、実は今日から使ってるんですって話でしたよ』って連絡をくれました。(違いがはっきりわかるのは)お米の質もですが、やはり“精米したて”が効いてると思います」
――お米はどこのお米を使っているんですか。
佐々木さん「今回は縁があって千葉県の匝瑳(そうさ)市の特別栽培米『匝瑳の舞』を買わせてもらっています。特別栽培米は一般的な農法と比べて農薬の使用量が少ないので、ご利用いただくワーカーの方にわかりやすくアピールできるのかなと思っています。
健康意識の高い方が多いエリアですので、そういうところもしっかり訴求しながら、あとは精米したてがいかにおいしいかというところを体感してほしいです」
地方と東京の橋渡し役になることを目指して
――精米の作業を始めてみて、どんな感想をお持ちですか。
佐々木さん「当然ですが、精米機を買うのは初めてだったので、専門家の方のご意見を頂きながら機器の選定をしました。不動産屋が片手間で始めたものではなく、プロ仕様の精米機を準備し、お米屋さんの指導の元で精米されたお米に関しては自信を持ってご提案できると思っています。
作業をしていて思ったのは、元々オフィスとして使われていた一室を居抜きで使用しており、精米機を設置している部屋も元々会議室だった小部屋だったりするので、機器や什器の配置など、課題を多く感じることはあります。
そのような課題の確認も含めて、テストマーケティングを実施しているので、来年度から本格的にMEC PANTRY『丸の内精米店』をしっかり稼働させる場合は、場所探しから機器の配置などうまくデザインして、より効率的に展開できたらいいなと思っています」
――いま来年度という言葉もありましたが、最後に改めて今後の展望をお聞かせください。
佐々木さん「お酒などお米以外の商材も取り扱いを拡大していきたいと考えております。また、お店に商材を卸すだけではなく、将来的には“MEC PANTRYにお願いすれば自動的に丸の内の数十店舗に卸せて、丸の内ワーカーに食べてもらえる”といった形で、我々の取り組みをプロモーションの場としても活用してもらいたいと考えております。
そのような場として活用いただくことで、『このお酒は、この期間に丸の内でしか飲めませんよ』と言った具合に、まだ市場に出回っていない限定品が日々丸の内のどこかにあるという状況をつくる。そうすることで、地方や行政の方々にも新商品を東京でマーケティングするときに、最初に声をかけてもらえる、地方と東京の橋渡し的存在をも担えるとMEC PANTRYを始めた意味があるかなと思っています。
最終的には、このエリアのワーカーに『MEC PANTRYが入っているから、この店舗を選びました』というような信頼の証になっていきたいですね」
MEC PANTRYがあるのは国際ビルの本当にただ一室で、壁には周囲への配慮で吸音材も貼られていました。ここからさまざまな食材を扱うようになってどんどん大きくなっていったら…ベンチャーもののドラマみたいでワクワクしますね! 10月頃からは私たちが利用できる飲食店へのお米の卸し先は増えるみたいなので、店舗で食べられる日を楽しみに待ちたいと思います。
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