有明海を知り尽くした団体・有明海ぐるりんネットが九州を代表する海の魅力を語るシンポジウムを開催!
2025年01月09日 11時30分更新
12月14日(土)に佐賀市内にて、有明海の魅力を発信する有明海ぐるりんネットと環有明海観光連合が、有明海沿岸のポテンシャルを訴えるシンポジウムを実施。有明海の魅力や有明海沿岸道路の全面開通によって考えられる地域活性化について、環有明海観光連合に加盟する各市町村が意見を交わした。
大盛況だったシンポジウム
有明海周辺地域の発展を考える有識者の講演をはじめ、環有明海観光連合に加盟する観光協会のスタッフによる熱いディスカッションが繰り広げられた
有明海関連の2団体の代表から挨拶
最初に有明海ぐるりんネット代表理事の荒牧軍治氏が挨拶。「2025年で20年目を迎える有明海ぐるりんネットの目的は、有明海を“楽しむ組織”です。有明海周辺の市町村で、食べたり飲んだりと様々なことを経験しました。そこで各地の色々な“良い物見つけ”を行い、それを観光に繋げられないかと考えました。そこで環有明海観光連合兼太良町観光協会の古賀さんにこの思いを話したところ、環有明海観光連合に加盟しているみんなで集まり情報の共有ができないだろうか?という話しになり、今回のシンポジウムの開催に至りました」。
続いて挨拶したのは、環有明海観光連合副会長兼鹿島観光協会副会長の中村 雄一郎氏。「有明海の環境資源を作り出す環有明海観光連合は、2022年に発会して、現在、福岡、佐賀、熊本の17の団体で構成しています。一部未完成ですが、有明海沿岸道路ができたことで、鹿島から荒尾までとても近くに感じるようになりました。この道路を活かしながら、佐賀空港を起点とした沿岸の発展を願っております」。
有明海の魅力を考える有識者が講演を行う
シンポジウムの前半は2人の知識人が登場。最初に有明海ぐるりんネット理事の西村宏之氏が登壇し、「有明海の魅力を観光資源として売り出す方策のヒント」をテーマに自身の意見を発表。まずは、コロナ前後で変わった観光の特色を説明する。「旅行する人が団体客から個人や家族などへシフトしたり、品物を購入するモノ消費から体験などを重要視したコト消費に変わってきました」。円安などの影響もあり、2024年に訪日外国人が過去最高を記録するなど、コロナ前と比較しても遜色はない。「観光客は見たい、知りたい、広めたいという気持ちを無意識に持ちながら観光しています。観光によって幸せを実感したり感動することで、“また来たい”と思ってくれます。多くの観光客が来てくれることは、地域の担い手や住民が主体的に動くきっかけにもなり、エリア全体の価値が増します。長く続けるためには、後継者の育成も重要です」。これらを実現させるには、継続的な熱意と行動が必要なのは言うまでもない。
魅力的な素材があっても多くの人に知ってもらわなければ意味がない。だが、魅力を発信するプロモーションはひと筋縄ではいかないそうだ。「ここ数年、主に口コミ、ネット、SNSが中心になっています。もちろん、広告媒体などのメディアを使う昔ながらのやり方もあります。コストパフォーマンスを考えながら、様々な組み合わせを検討してほしいです」。各地域単体のPRには限界がある。だからこそ、それぞれの地域が県の垣根を越えて手を合わせる必要があると訴えた。「それぞれの観光協会のみで情報発信するのは、非常に難しい。県境を超えて各観光協会が広域連携してほしいですね」。プロモーションに関しては、まさに総力戦という言葉がピッタリだ。
各地で観光ができるのも、一つの海に3つのラムサール条約の登録湿地がある日本で唯一の海である有明海があってこそ。SDGsの観点からも有明海の環境を維持する大切さを説いていた。「有明海は環境を守るのは大前提です。渡り鳥の中継地で有り続けることや、生態系の豊かさを維持していくためにどうするか?を考えるのは大事。有明海が誇る自然環境を守り続けることも、観光の一つの仕事だと思っています」。
最後に観光における問題点として、有明海の魅力をどのようにして磨き、成長させるかを提案。「有明海沿岸の魅力を観光資源として役立たせるためには、その魅力を磨き上げることが重要。情報をどのように発信し、誘客に結びつけていくのかが課題だと思っています。観光客に足を運ばせ、またその場所に留めることで、お金を使ってくれる。そうすることで観光地の稼ぐ力が増して、地域活性化が生まれる。そんなストーリーを描いてもらえればと思っています」。
続いては環有明海観光連合 企画広報委員長の坂口浩規氏の発表がスタート。「環有明海観光連合(通称:TAP)は、大牟田観光協会が幹事となり2022年6月に誕生しました。私達は有明海の価値の共有化と最大化を目的に、観光誘客や地域産品の拡販、観光資源の保全を目的にしている団体です」。実際の活動としましては3つの柱があるそうだ。
その1つ目の柱として、SDGsの観点から持続可能な環境資源を守るための活動が挙げられる。「まずはラムサール条約の登録湿地などの観光資源の保全が主です。2023年は清掃活動を企画実施し、2024年は、鹿島市と荒尾市にラムサール条約の登録湿地の清掃活動を支援しております」。今ある環境を大切にするため、清掃活動を積極的に行ってる。単年ではなく、永続的な活動を視野に入れている。
魅力ある施設やスポットがあっても、観光客に足を運んでもらわないと意味がない。そこで環有明海観光連合では珍しいイベントにも積極的に参加し、観光誘客を行っている。これが2つ目の柱となっている。「2023年&2024年に、アートとスポーツがテーマのイベント・ONE有明アートフェスティバルの後援をしています。太良町でSUPの大会開催をバックアップしたり、有明海を自転車で一周するイベント・アリイチインターナショナルモニターライドの支援も行っています」。
最後に3つ目の柱として地域産品拡販が挙げられる。地元産の特産品を販売するブースをさまざまなイベントに出店している。「2022年にONE有明マルシェというブースをみやま市に共同出店しました。2023年と2024年は、福岡・天神の大丸に出店しています。今後も色々なところに有明マルシェのブースを出店できればと考えています」
今後、環有明海観光連合における願いも話してくれた。「現在、17の観光協会が加盟しています。実は、福岡、佐賀、長崎の沿岸の市町村はコンプリートで、あとは熊本県のみ。今後はご縁があれば、参加してもらいたいと思っています」。将来は有明海に接する熊本の市町も加盟して、一大プロジェクトになることを期待しよう。
ラムサール条約の登録湿地がある荒尾市、佐賀市、鹿島市をはじめ、太良町や有識者が参加して議論
シンポジウムの後半は、有明海ぐるりんネット代表理事・荒牧軍治氏に進行役になってもらい、有識者や環有明海観光連合に加盟している市町の観光協会がディスカッション。ここではその一部をご紹介。有明海沿岸の市町の自慢から観光資源の磨き方まで、クロストークは大盛りあがり!
荒牧(有明海ぐるりんネット代表理事)「今回のシンポジウムを開くきっかけを作ってくれた古賀くん。まずは、古賀くんが住んでいる太良の一番魅力的なものを教えて下さい」
古賀(太良観光協会兼環有明海観光連合 企画広報員)「有明海沿岸エリアのなかで、太良は随一のグルメの町だと思っています。冬になると養殖の竹崎カキが食べられたり、カニを通年で提供しています。養豚や養鶏も盛んで『たらふく丼』というご当地丼も絶品です。これらのグルメで色々な人に訴求できるんじゃないかと思っています」
荒牧「みやま市の魅力を聞いてもいいですか?」
坂口(環有明海観光連合 企画広報長)「まず交通の便がとても良い。環有明海観光連合の自治体のなかでも特にです。もうひとつは夕日。世界中の様々な場所に行きましたが、個人的にはみやまの夕日が一番キレイだと思っています」
荒牧「では、鹿島のいいところを教えて下さい」
田中(鹿島市観光協会 事務局長)「鹿島には3つの観光拠点があると思っています。1つは年間300万人以上の人が訪れる祐徳稲荷神社。2つ目は、10年ぐらい前から盛り上がっている日本酒。世界一のお酒に選ばれた鍋島があり、2日間で10万人以上が訪れる酒蔵ツーリズムを実施しています。最後は、道の駅鹿島を中心とした干潟体験ですね。問題点は宿泊施設が少なさ。今は30~40代の人がゲストハウスを作ったり、鍋島が宿泊施設を作ったりと、少しずつ改善はしています。」
荒牧「これまでの話は、有明海の魅力とは何か?ということでした。ここからは各地域の観光素材を磨くことで、集客につなげる話しをしたいです。最初に中村さんに聞いてもいいですか?」
中村(環有明海観光連合 副会長兼鹿島観光協会 会長)「素材を磨くということで最初に行ったのは、ガタリンピックですね。都会の人にとって干潟は、泥だらけになるし臭くなるなどイメージが悪かった。でも、実際に入ってみると臭いもなく気持ちいいんですよ。あとは日本酒。鍋島が世界一に選ばれたことをきっかけに、13軒の酒蔵を巡る酒蔵ツーリズムが誕生しました。このイベントを毎年磨いた結果、今や世界中の人が鹿島に訪れてくれます」
荒牧「イベントといえば佐賀市のバルーンフェスタ。ぶっちゃけ儲かりますか?」
喜多(佐賀市観光協会専務理事)「バルーンフェスタは、行政から1億3000万円ぐらいの補助を含め、約2億円を会場の整備や交通整理などに使っています。運営はボランティア。収支からいうとほぼトントン。佐賀市における経済波及効果でいうと80億円ぐらいと言われています。ただ、個人的にはこれだけではダメだと思っています。なぜなら、バルーンのパイロットだけでご飯を食べていける土壌がないからです。そのためには、商業フライトができる仕組みがあるといい。せっかく佐賀市を観光するなら、バルーンに乗りたいと思う人が多いはずなので、まずは係留体験ぐらいから始めたいと思っています」
荒牧「荒尾市はどうなんですか?」
徳村(荒尾市観光協会事務局長)「荒尾市はグリーンランドで1日中過ごすので、そこで終わってしまう。本当はそこから荒尾干潟や万田坑に行ってほしいんですけど。泊まるところは、熊本市内などになってしまうんです」
荒牧「ありがとうございます。最後に有明海沿岸道路が有明海の観光に大きな影響を与えると思います。全線開通したら期待できますか?」
坂口「人の流れが変わると思いますね。荒尾や大牟田から鹿島まで車で行きやすくなるし、ひいては佐賀空港へのアクセスが良くなる。世界中のインバウンド客が来ると思うので、伸びしろは十分ある。それを考えながら受け皿作りをみんなでやっていくべきだと思っています」
田中「便利になるので、早く全線開通してほしいと思っています。そうすれば、有明海沿岸エリアに来やすくなります」
荒牧「最後に西村さんから今回のシンポジウムの総括をお願いします」
西村(有明海ぐるりんネット理事)「有明海の観光はいいところだらけなんですけど、観光全体として見るとまだまだ。各々に観光で稼ぐ力が必要だと考えます。稼ぐぞ!という気持ちを持ってもらい、国内外の人に関わらずお金を使ってもらえるような政策に取り組んでもらえればと思っております」
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