スイスに生まれ、19世紀末のパリで活動したフェリックス・ヴァロットン(1865-1925)。前衛芸術家グループ「ナビ派」とともに活動しましたが、その冷淡でシニカルな視点による独自の世界観は他の画家たちと一線を画していたこともあってか、周囲から「外国人のナビ」とも呼ばれました。ヴァロットンは、当時すでに廃れつつあった「木版画」の技法を復活させ、黒と白の大胆な構図による新たな芸術表現を生み出して、同時代や後世の画家に衝撃を与えました。
しかし、ヴァロットンの芸術に対する美術史的な評価が高まったのは、ここ15年ほどのことです。特に2013年から、パリのグラン・パレ、アムステルダムのファン・ゴッホ美術館、三菱一号館美術館で開催された「ヴァロットン―冷たい炎の画家」展によってヴァロットンの全体像が提示され、評価の大きなきっかけとなりました。その後ヴァロットンの評価はさらに高まり、2019年にはロンドンのロイヤル・アカデミーとニューヨークのメトロポリタン美術館で回顧展が開催されました。そして、ヴァロットンの没後100年にあたる2025年、画家の故郷であるスイス、ローザンヌでの回顧展「ヴァロットンよ、永遠に」(Vallotton Forever. The Retrospective https://www.mcba.ch/en/exhibitions/vallotton-forever/)が注目を集めています。
ヴァロットンの版画作品をまとめて約180点収蔵する三菱一号館美術館では、画家の没後100年を記念して、「フェリックス・ヴァロットン―親密な室内」と題した小企画展を開催します。とくにその室内表現における鋭い観察眼と研ぎ澄まされた心理描写に着目し、ヴァロットンの木版画を中心に約30点を展示します。なかでも連作〈アンティミテ〉は、室内という親密な空間での男女の駆け引きを描き出し、ブルジョワ社会や孤独な人間関係への皮肉をあらわにしています。ヴァロットンのモノトーンの版画作品は、その斬新な表現においても、また現代に通じるテーマにおいても、私たちの感覚に直接的に響いてくるのではないでしょうか。企画展「アール・デコとモード 京都服飾文化研究財団(KCI)コレクションを中心に」(https://mimt.jp/ex/artdeco2025/)にいらした際には、ぜひ三菱一号館美術館が所蔵するヴァロットン版画の魅力もあわせてご堪能ください。
三菱一号館美術館 小企画展
「フェリックス・ヴァロットン―親密な室内」
会期:2025年10月11日(土)〜2026年1月25日(日)
主催:三菱一号館美術館
観覧料金:小企画展の観覧料は、企画展(アール・デコとモード展)に含まれます。
※小企画展のみの入場はできません。
https://mimt.jp/small-gallery/#vallotton
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