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沼る人続出のレトロと新しさが同居する有楽町のホットスポット「東京交通会館」の丸の内びと

公共サービスまで担う東京交通会館は今後どうなる?

 半世紀以上にわたり有楽町の街を見守ってきた存在だが、その中身は時代とともに変化を重ねてきた。館内には老舗の味を守り続ける飲食店があれば、地方の魅力を発信するアンテナショップもある。さらには新しい商業の試みや、生活を支える公共サービスまでもが集まっている。

――そんな多彩なテナントの中で、特に歴史あるお店や話題性のある店舗にはどのようなものがありますか?

相良「すしや横丁時代から続くお寿司屋さん『照鮨』があります。昭和21年(1946年)に開店して以来有楽町、そして東京交通会館と共に歩み、来年で創業80年を迎えられる名店です。
 最近のお店だと、池袋にあった『宮城ふるさとプラザ』さんが8月に移転オープンしました。ずんだソフトやずんだシェイクが人気です! 他にも、2023年に世界初出店となるGODIVAさんの新業態『GODIVA Bakery ゴディパン』ができました。チョココロネや、カカオフルーツのソースを練りこんだクリームパンなどが人気です」

――『交通会館マルシェ』も開催されていますね。どのように始まり、どんな雰囲気なのでしょうか。

岩本「15年前に始めました。火曜・水曜は3、4店舗ほど、土日祝は多いときで30店舗ほど営業しています。食材から始まり、今では雑貨も扱っています。また、平日は東京都の『ヘブンアーティスト」(大道芸人などの登録アーティスト)さんに来ていただいていて、夜の18:00~19:00にパフォーマンスを行っています。都立総合芸術高校音楽科の生徒さんも年に4、5回、一般の方に披露する機会があり、それをモチベーションのひとつにしていただいていますし、当社または東京交通会館名店会が推薦する方たちの活動の場としても提供しています」

週末のマルシェは特ににぎわっている印象。今や東京交通会館の顔ともいえるイベントの一つ

実はマルシェを企画したのは岩本さんなのだそう

――パスポートセンターも入っていますよね。私もパスポート更新で訪れたこともあります。

岩本「東京都の機関のひとつですが、以前の東京都の建物との関係からこの場所に来ていただいたのではないでしょうか。あとは、献血センターのイメージもあるかもしれません。公共的なサービスが集まっているのも交通会館の特徴ですね」

 昭和のレトロ感と人情味あふれる雰囲気を残しながら、多くの人にとって「落ち着ける場所」として存在してきた交通会館。この街で果たしてきた役割、そしてこれから迎える未来とは――。

――有楽町駅直結という立地もあり、交通会館は長年街のハブとして機能してきたと思います。このビルが果たしてきた役割についてはどうお考えですか。

岩本「銀座との中間地点にあたるので、ここを通って銀座に行ったり、帰りに立ち寄ったりと、商業的なエリアを繋ぐ場所だと思いますね」

相良「利用者様からは『交通会館は落ち着ける』昭和的なレトロ感や都心にはない人情味がある、と言われるんです。テナントさんとお客さんの距離感がとても近いからだと思います。テナントさんは我々ビルの担当者にも気さくに話しかけてくださり、温かみを感じています」

岩本「東京交通会館は、良い意味で“取り残されている”感じがあると思うんです。他のビルは運営を委託するケースが多いのですが、交通会館はオーナーである我々が運営していて、直接営業しています。だからこそテナントさんとの呼吸を合わせながら関係を築けるんです」

今も昔も変わらない有楽町の「顔」

――最後に、お二人と東京交通会館との関わりについて伺いたいのですが、これまでどのようにこのビルに関わってこられましたか?

岩本「入社して17年、総務や駅前広場、清掃などを担当してきました。入社前から東京交通会館は知っており、『こんな面白いビルがあるんだな』と思っていました。高校生時代、埼玉から訪れた時に感じた有楽町の雑多で庶民的な雰囲気が印象的で、職員となってからはお客さんがここでくつろぐ姿を見て『こういう場所は必要だ』と実感しています。年を重ねても安心して過ごせる場所があるのは大切ですね」

相良「私は2019年入社の7年目で、先ほど話題にあがった『有楽ピアノ』や、『有楽祭』といったイベントの企画などを担当しています。東京交通会館との出会いはパスポートセンター。アクセスの良さから訪れ、偶然『北海道どさんこプラザ』を見つけて、道産子として親近感を抱きました。観光向けだけでなく地元の味が並び、素直に『いいな』と感じたことを今でも覚えています。前職時代も当時あまり交通会館として認識していなかったのですが、今思い返してみると地下1階の喫茶店『ローヤル』で商談をしていました」

長年あるビルだからこそ、それぞれの「東京交通会館の思い出」があることがよく分かる

――そんなお二人が、このエリアで特に好きな場所はどこでしょうか。

相良「東京交通会館の地下1階の雰囲気がとても好きです。小さな区画に多くのお店が入っていて、独特の雰囲気とにぎわいがあります。地下1階には2つの横丁があって、2019年に『横っちょ横丁』『ぶらり横丁』という名前が付いております。昔ながらの60年を迎える店舗と新しいお店が入り混じって同居しているので、作ろうと思って作れる雰囲気ではないところが魅力ですね」

岩本「私は地下道です。地下1階から駅前広場へとつながる通路があり、雨の日には多くの人が利用します。晴れている日は地上を歩いてしまうので印象が薄いのですが、実は有楽町マリオンや日比谷方面へ抜けられる便利な道なんです。有楽町らしい空気を感じられる場所なので、もっと知ってもらいたいと思いますね」

 半世紀を超えて有楽町の街を見守り続けてきた東京交通会館。老舗から新しい試みまで多様なテナントが共存し、人々の暮らしや記憶に寄り添ってきた。有楽町のランドマークとして築いてきた歴史は、これからも変わらずに街の中心で輝き続けていくだろう。

岩本匡史(いわもと・ただし/写真左)
●埼玉県出身。1996年大学卒業後、道路メンテナンス会社、鉄道会社を経て、2008年10月より株式会社東京交通会館勤務。現在は清掃、マルシェ、撮影・取材等を担当

相良文紀(さがら・ぶんき/写真右)
●北海道出身。2014年大学卒業後、不動産仲介会社を経て、2019年7月より株式会社東京交通会館で勤務。東京交通会館ビル内の店舗で構成される「東京交通会館名店会」の事務局業務や「有楽ピアノ」等を担当。

聞き手=玉置泰紀(たまき・やすのり)
●1961年生まれ、大阪府出身。株式会社角川アスキー総合研究所・丸の内LOVEWalker総編集長。国際大学GLOCOM客員研究員。一般社団法人メタ観光推進機構理事。京都市埋蔵文化財研究所理事。産経新聞~福武書店~角川4誌編集長。

■関連サイト
東京交通会館
https://www.kotsukaikan.co.jp/

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