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見ていると癒やされる! 教科書に載らない仏像「民間仏」が東京ステーションギャラリーで初展示!

2023年12月13日 11時00分更新

 北東北のくらしが生んだやさしい仏さまが、東京ステーションギャラリーで待っています。

 「民間仏」という言葉をご存知でしょうか。教科書にも載っている運慶など名のある仏師ではなく、大工や木地師(きじし)らの手で彫られた民家や村のお堂に祀られてきた仏像や神像のことを指す言葉です。

 江戸時代にはいると幕府や諸藩によって、寺院が「本山(ほんざん)」とそれに属する「末寺(まつじ)」に整理されました。

 それと同時に大阪・京都・江戸・鎌倉などの高い技術をもつ工房で端正な仏像・神像が制作されるようになりました。一般的に私たちがイメージする、また展覧会などで目にしている仏像がこれに当たります。

 一方で、地方の小さな村々では十王堂や観音堂など集会所を兼ねた場所が人々の拠り所でした。こうした場所や民家の神棚に祀られたのが「民間仏」です。

秋田県湯沢市三途川十王堂

岩手県八幡平市某社周辺

 粗末な素材を使って簡略に表現された「民間仏」は、日々の決して楽ではない生活のささやかな祈りの対象として大切にされてきました。

 仏師ではなく地元の大工や木地師らが彫った「民間仏」には、統一されたフォーマットや華麗な装飾はありません。仏さまの種類も様々で、木彫りの十王、地蔵、観音、大黒天・恵比須などがあります。

 一般的な寺院にある端正な顔立ちや姿のご本尊と違い、民間仏は彫りの拙さやプロポーションのぎこちなさが特徴です。

 一見、今はやりのユルカワ系の仏像に見えますが、ユニークなのではなく、厳しい風土を生きるみちのくの人々の心情を映した祈りのかたちそのものといえます。

《鬼形像》江戸時代 正福寺/岩手県葛巻町

《不動明王二童子立像》江戸時代 洞圓寺/青森県田子町

 東京ステーションギャラリー「みちのく いとしい仏たち」では、そんな個性派ぞろいの「民間仏」約130点が初めて紹介される展覧会です。教科書や美術史には登場しない木像を介し、日本の信仰のかたちについて考える好機です。

 展示構成は以下の通りです。
1 ホトケとカミ
2 山と村のカミ
3 笑みをたたえる
4 いのりのかたち 宝積寺六観音像
5 ブイブイいわせる
6 やさしくしかって
7 大工 右衛門四良(えもんしろう)
8 かわいくて かなしくて

展示風景

 「民間仏」の調査・研究を進めている須藤弘敏氏(弘前大学名誉教授)が「みちのく いとしい仏たち」展の監修を務めています。

 これまで誰も手を付けていなかった民間仏の調査・研究を何十年にも渡り、地道に続けてこられた須藤弘敏氏の言葉を紹介しておきます。

「展示作品はすべて村、特に山村漁村から奥羽山脈・北上山地のものです。権威や儀礼から離れたとき仏像もこれだけ魅力を持つのです。なぜ黒く煤けているのか?なぜ小さな像が多いのか?想像してみて下さい」

「稚拙はネガティブではありません。稚拙な表現・率直な信仰。稚拙なものを拝み続けてきたことに本質があるのです」

「同時代のそばにいてくれる仏像たち。古い霊験や功徳のあるお像も尊重し、寺院本堂の金色で端正なお像も尊重する。でも日常のささやかな愚痴や祈りは民間仏に向けます。同じ空間、同じ時代、同じ価値観、共感できる宗教造形がそこにはあります」

「つらさ、せつなさ、くやしさを今抱えている方たちに是非見てほしいです。環境も暮らしも厳しかった江戸時代のみちのくだからこそ、やさしさぬくもりを不眠りの像に求めた心情・感情がこもった宗教彫刻が生まれたのです」

「みちのく いとしい仏たち」
開催期間:2023年12月2日(土)〜2024年2月12日(月・振)
会場:東京ステーションギャラリー
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1(JR東京駅 丸の内北口 改札前)
HP:https://www.ejrcf.or.jp/gallery
時間:10:00~18:00(金曜日~20:00) *入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日(1/8、2/5、2/12は開館)、12/29(金)~1/1(月)、1/9(火)
入館料:一般1,400円、高校・大学生1,200円、中学生以下無料
主催:東京ステーションギャラリー(公益財団法人東日本鉄道文化財団)、NHK、NHKプロモーション
協賛:T&D保険グループ
監修:須藤弘敏(弘前大学名誉教授)

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