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ありがとう横浜春節祭、そしてありがとう横浜中華街

2024年05月30日 18時00分更新

横浜市中華街

 報告が遅れましたが、今年の春節祭が無事終了しました。

 半年以上にわたり、このプロジェクトに注力してきました。僕にとっては、まるで部活動のような存在でしたが、ようやく終わりました。

横浜市中華街

 オープニングセレモニーには山中市長にもお見えいただき、関係した方々をお招きした「報告会」にはゴールデンウィークの狭間だったにもかかわらず、二人の副市長はじめ、関係した横浜市の8局の局長、企業や町の重鎮140名の方々にお見えいただきました。

横浜市中華街
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横浜市中華街

 春節祭は、横浜中華街で36年続く伝統行事であり、その魅力を中華街の外にも広げ、訪れるお客様を増やす取り組みです。具体的には、春節をモチーフにした大型ランタンオブジェを横浜の代表的な町や施設、駅に設置し、ランタン巡りを通じて横浜全体を楽しんでいただく企画です。ランタンがある景色は、街の活気にも貢献します。ランタンを設置するだけで、その場所が「映えスポット」となり、多くの人が写真を撮り、SNSで拡散されることで、いつの間にか名所となります。例えば、馬車道駅には大型のランタン三面柱を設置し、春節祭開催期間中は、馬車道駅のチェックインで検索するとランタンオブジェの投稿で溢れかえっていました。山下公園も同様です。

横浜市中華街
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横浜市中華街
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 この取り組みは今年で3年目を迎えますが、これは横浜中華街発展会協同組合の理事長、高橋氏が提唱した「横浜中華街ゲートウェイ構想」の一環です。ゲートウェイ構想とは、2020年の賀詞交換会で初めて発表されたもので、横浜中華街を地域経済の要として、各街をつなぐ玄関口として位置づけるというものです。以前は、横浜中華街は他の街から隔離されているような印象がありました。これは、街を取り囲む牌楼(門)によるものか、このエリアに入った途端に五感で強烈に感じる異国情緒によるものかもしれません。また、この街に住み、商売をしている多くの華僑たちの独特な感性によるものかもしれません。良くも悪くも、他の街と隔離された独特な環境が、発展と保護の両方をもたらしてきたと思います。

 しかし、時代は変わりました。自分たちの街の未来を考える際には、自分たちの街だけでなく、近隣の環境についても考慮することが、まちづくりにおいて欠かせない視点となりました。

 特に、春節がある1月から2月にかけては、地域全体が観光閑散期に当たります。横浜中華街では、春節のイベントや飾り付け、春節期間にだけ味わえる特別メニューを楽しむために、期間中100万人ものお客様が横浜中華街を訪れます。

横浜市中華街
横浜市中華街

 しかし他のエリアや施設はこの時期が最も客足が少ない時期です。

 横浜のある施設の入場者数と売上を見せていただきましたが、1月後半から2月にかけては大きく落ち込んでいます。2月が一年で最も来場者数も売上も落ち込む時期なんだそうです。他の街の人流データを見ても、ほぼ同じ傾向が見られます。みなとみらい線の乗降者数のデータも見せていただきましたが、2月はやはり最も落ち込む月です。

横浜市中華街
横浜市中華街
横浜市中華街
横浜市中華街

 たまたま横浜には横浜中華街の「春節」があります。このコンテンツを利用して、中華街のみならず横浜全体にお客様を集客→周遊させることができないか、と考えたのが「横浜春節祭」です。

 「春節」という言葉を使うことができる街は、日本にはたった3つしかありません。長崎の新地中華街、神戸の南京町、そして横浜中華街です。他の2つの街では、中華街を飛び出して春節のお祝いをしています。したがって、横浜だけが中華街の中に春節を閉じ込めておく理由はありません。

 横浜の観光課題は周遊性にあります。横浜は日本を代表する観光地の一つですが、周遊率の低さが課題となっています。ここ数年の平均値はたった1.8箇所なんだそうです。コロナ禍以降、さらに低下しています。他の観光地に比べて圧倒的に周遊箇所数が少ない。せっかく横浜に来たのであれば、近くの魅力的な場所に足を伸ばしてもらいたいものです。横浜の臨海部はほとんど徒歩で移動可能であり、海沿いの美しい景色を眺めながら散歩するのも楽しいはずです。にもかかわらず、歩いてくれる人が少ないのは非常にもったいないことです。

 それぞれの街や施設は一生懸命自分のところにお客さんを呼ぶ努力はしますが、大概はそれで終わってしまっていて、点と点が線で結びつかない。行政もこの課題をどうにか解決しようとして色々やっていますが、いまいち効果が限定的です。

 観光閑散期に賑わいを作れば、皆がハッピーになるのでは?という想いでこの活動をしています。

 今回で3回目に当たりますが、今回は相当効果が出ました。

 詳しいデータなどは割愛しますが、この期間に例えば横浜中華街には春節祭期間中(2/1~2/24)に1,416,203人の集客がありました。そして各エリアや施設から横浜中華街に1,404,546 人のお客様が集まっていることがわかっています。逆に横浜中華街から各エリアや施設に3,700,538 人のお客様を送客しています。こうした分析はスマートフォンの位置情報によるビッグデータにより解析することが可能になっていて、春節祭では高度な人流分析を行っています。これまではイベント会場にカチカチ指で押して数を数えるカウンターを数日数時間座らせて調査をしてそれを拡大推計していたので、ずいぶん進化したものです。

 全ての箇所で見るとどうかというと、横浜春節祭2025では開催期間中に開催エリア(22箇所)に合計 ※8,354,862人の集客をもたらし、29,125,552人の周遊人流をももたらしました。平均3.5箇所の観光周遊を生んだことになります。

 すごくないですか?!周遊人口が2900万人ですよ!!そして、横浜市の観光周遊箇所数1.8箇所の二倍近い3.5箇所です!!

 ちなみに横浜市が主催するヨルノヨ の集客は240万人なんだそうです(横浜市発表)から本取り組みが周遊に大きな成果を産んだことがわかります。
(※不特定多数の人流が行き来する、駅や空港は本分析から除きました)

 今年はポケモンとのコラボが決まるなど、幸運にも恵まれました。

 人気キャラクターのひとつ、龍のポケモン「レックウザ」が一年に一度異空間から地球に戻ってくると言うストーリーで横浜中華街とコラボが決まったんです。

 龍を操る演者も横浜中華街の獅子舞・龍舞チームのメンバー。演者の視点から構造やデザインについてもアドバイスさせていただきました。長年に渡り、伝統文化を継承して来た成果です。

横浜市中華街
横浜市中華街
横浜市中華街

 大きな成果を生んだ横浜春節祭ですが、本来はこれ、行政がやることですよね。横浜中華街主催でやるには仕事が大きすぎます。

 ですので、2025年度からは横浜市にも手伝ってもらい、また価値観や想いを共有する地域や企業の方達にも加わっていただき、実行委員会形式で開催することを検討しています。

 僕たちの夢は「さっぽろ雪まつり」のように観光資源を活かし、地域を代表するお祭りに昇華させることです。

 「そんなバカな」と笑われたこともありますが、決してできないことではないと思っています。

 他の商店街の方に「これ、中華街のお祭りでしょ?なんで俺たちが手伝うの?」と誤解をされたこともあります。

 中華街の人からも「せっかく中華街だけ忙しいのに、なんで外に祭りを広げちゃうの?お客が逃げちゃうじゃん」と批判されたこともあります。

 そんな陰口を聞いて理事長の高橋が言った言葉が印象的です。

「ケチケチすんな!(笑)」

「年間3000万の観光人口のうち、2000万人が横浜中華街にくる。これが2倍3倍になったら、中華街だけでなく、どの街もみんな潤うはずだ。しかも春節の時期はみんなが最も苦しい時期。地域に活かされて来たのだから地域に恩返しするだけ。一生懸命やって効果が出れば誤解もいつかとけるはず。だからうちの客を取った取られたなどとケチケチすんな、と俺は言いたい」

 この活動をしていてモヤモヤすることもあったのですが、この言葉にだいぶ救われました。

 高橋の言う、「横浜中華街ゲートウェイ構想」って言い換えると、以前の記事で書かせていただいた「たらいの水の話」のことだと思うんです。
「欲張って自分に水を引き寄せても手前の壁に当たって水は逃げてしまう。奥に送ってあげれば、たらいの向こう側の壁に当たって自分にいつか戻ってくる」と言う話です。

 「さっぽろ雪まつり」は地元の中高生が大きな雪だるまを6基作ったことから始まりました。今では国内外からたくさんのお客さんがいらっしゃる北海道を代表するお祭りにまでなりました。

 もともと冬の札幌市内は観光閑散期。観光客はスキー場に行ってしまい、地元の人たちも雪ばかりで外にも出かけません。観光経済も当然停滞していました。それが今では1年で一番賑やかな時期に変わりました。

 「横浜春節祭」はまだまだ小さいお祭りではあるかもしれませんが、やってやれないことはないと思っています。

 すでに来年の横浜春節祭に向けて「うちの街(会社)でもオリジナルのランタンオブジェを作りたい!」というお声をあちこちからいただいています。それぞれの街や企業がこのお祭りを「自分ごと」として楽しみ、いらっしゃるお客様にも愛されるお祭りに育てて行きたいです。

 最後にお知らせですが、僕、5月末日の総会を持って横浜中華街発展会の副理事長を降ります。

 役職を降りるだけでなく、理事も退任します。理事を15年続けて来ましたが、あっという間でした。会社の歴史が24年ですから半分以上はまちづくりに関わって来たことになります。

 そろそろ次の世代に譲ることをずっと考えて来ましたが、この3年間はコロナ禍があったので、理事長と一緒に緊急的にやるべき仕事が山積みで、辞めるどころではありませんでした。

 でもようやくコロナも落ち着きました。横浜中華街のにぎわいもコロナ禍前まで戻って来ました。安心して次の世代に街を任せることができます。中華街は人材の宝庫です。才能があり若くて優秀な方達がたくさんいます。

 え?!僕ですか?

 これまでまちづくりにかまけてサボって来た分、本業の仕事に専念します!(笑)横浜春節祭は、実行委員会に引き継ぐまではもう少しお手伝いします。

 長きに渡りコーナーをいただき、ありがとうございました!!

 編集部の方々も不定期の記事の更新でご迷惑をおかけしました(^_^;)

 今後も引き続き、是非横浜中華街をよろしくお願いします。

 ということで、最後のBOSS飯です。

 さて、今日はフィナーレにふさわしいメニューを選びました。「桂宮」のコース料理の一品で「蒸気火鍋」という料理です。

横浜市中華街
横浜市中華街

 横浜中華街唯一の中華蒸し料理です。鮑、ホタテ、エビなど生簀から出して来たばかりの活きた海鮮を特製の調理器で蒸して食べます。また野菜類、キノコ類、肉類なども蒸します。それぞれ好みの特製中華ダレで食べますが、蒸すと食材本来の旨味・甘みが引き出されてぐーんと美味しくなります。そして最後に蒸したときに出る食材から出たエキスが入ったスープを使い、雑炊でいただきます。これが本当に絶品です!!要予約です!お試しあれ。

動画はコチラ⇒https://x.com/ROUROU_boss/status/1778629962070913264

 Xで中華街の名店の料理を#BOSS飯としてつぶやいています。

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◆店舗DATA
店名:中華街 桂宮
住所:横浜市中区山下町151【中華街大通り】
電話:045-226-5088
※営業時間、定休日などは直接お問合せください
公式サイト:https://chukagai-keikyu.jp/

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文/石河 陽一郎

石河 陽一郎

いしかわ よういちろう。1972年生まれ。株式会社ロウロウ・ジャパン代表取締役・総合プロデューサー。横浜中華街発展会協同組合副理事長。茅ヶ崎出身、横浜市在住。幼少期をシンガポールで過ごす。趣味はシステマ、焚き火。

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