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「なんか不穏」という“褒め言葉”で気づくアートの楽しみ方が自由な理由 「ART AWARD TOKYO MARUNOUCHI 2025」が初心者でもおもしろい

なんかおもしろいなと思った「大きくなれば、いつか全ての人を抱きしめることができる」(橘葉月)

 食欲の秋、読書の秋、スポーツの秋、といろいろな「○○の秋」がありますが、私にとって一、二を争うほど縁遠いのが「芸術の秋」。「作者が伝えたいことと私の解釈が全然違っていたら申し訳ない」と思ってしまって、素直にアートが楽しめないんですよね。

 そんなアート初心者の方にぴったりなのが、行幸地下ギャラリーで開催されている「ART AWARD TOKYO MARUNOUCHI 2025」です。なぜおすすめかというと理由は2つ。「無料」で「ジャンルが多彩」だからです。気構えることなく「おっ」と琴線に触れる作品に出合えました。

無料なので気負わず鑑賞できる

 9月8日(月)から、若手アーティストの発掘・育成を目的とした現代美術の展覧会「ART AWARD TOKYO MARUNOUCHI 2025」(以下AATM)がスタートしました。全国の主要な美術大学・芸術大学・大学院からノミネートされた146作品の中から、選ばれた20作品が展示されています。

丸ビルと新丸ビルの間の地下通路が会場です

 通路を歩きながら作品を見ることができるので、とても気楽。ガラスに近づいて見る人や通りすがりに見ていく人、立ち止まってじっくり眺める人など、さまざまな鑑賞スタイルの人がいました。

 なお、今回から新たに「Machi Workers※賞」が設定され、推しアートに投票できるようになりました。会場にあるQRコードを読み取って気に入った作品に投票すると、抽選で30名に丸の内ポイント2,000ポイントが当たります。そのためか、会場ではスマホを片手に鑑賞していた人の姿もちらほら。

※「Machi Workers」とは、三菱地所が展開する「丸の内ポインアプリ」内の特典制度で、丸の内・大手町・有楽町エリアのオフィスやショップで働く就業者を対象にした会員制プログラムです。

「なんかいい」という感想でもいいですか?

 さて、そんなアート初心者の私が「なんかいいな」と思った作品がいくつかありました。一つは「発現」(キムダヘ)という作品。正直よくわからないのですが、平面と立体と映像がミックスされていて「なんかいい」んですよね。

「発現」(キムダヘ)。「なんか」が多くて申し訳ないのですが、なんかかっこいい

スペースの奥と手前を使って展示。平面と立体には「実態」があるのに、映像(斜めに走っている虹色っぽい映像も作品の一つ)には実態がないからなんとなく違和感がある

 作家のキムダヘさんによると、iPadで描いた線をデジタルデータ化し、そのデータを基に立体物を作っているそう。

 もう一つは「Background 1.0.3」(和田竜汰)。どこがいいって、なんかかっこいいんですよ。あと、大きくて迫力があるところもいい。

「Background 1.0.3」(和田竜汰)。端のスマホ、中央の絵画、右端の箱(絵画を運ぶためのクレートという木箱)の3つで一つの作品

この銅板みたいな色がすごくきれいなんです

 作者の和田さんによると、作品の制作過程にAIを使っているのだそう。生成AIでクレート箱のイメージを生成し、そのイメージを銀箔の変色を生かして描画、その作品を撮影したものをディスプレイに映しています。

 「なんかいい」「なんかかっこいい」しか言っていなくて本当に心苦しいのですが、私がいかに気軽に鑑賞しているかは分かってもらえたのではないでしょうか。

グランプリに輝いたのは「リアルで抽象的」と評された作品

 グランプリに輝いたのは「serious and unimportant」(相波エリカ)。私はちょっぴりポップな雰囲気があるのになんだか不安な気持ちになるなと思っていた作品で、審査員の方々は「現実感があるのに、抽象的で不穏」と大絶賛。

「serious and unimportant」(相波エリカ)。言われてみるとないはずの現実味があるように思えてくる

 作品タイトルの「serious and unimportant」は、AIで生成された画像が現実のものとして扱われてしまうことなど、重要なものとそうでないものが分からなくなることへの葛藤からつけられています。現実世界とデジタルの世界の境界があいまいになってきているこの時代、確かに不穏さがあります。

私の心に一番引っかかったのはこちら。ペリカンも車も後ろの木もかわいいのに、心がざわざわする風景と色使い

 「不穏」が誉め言葉になるのはアートの世界ならではかも!? でもそんな素直な気持ちでアート鑑賞をしてもいいんだなと思えて、また少しアートの楽しみ方が分かったような気がしました。

 若手アーティストたちの才能に触れられるAATMは、9月8日(月)から9月23日(火)まで開催中。無料で見られるのに、絵画から立体造形物、デジタル、それらを組み合わせたもの、と本当に多彩な作品が展示されているのでぜひ立ち寄ってみて!


ART AWARD TOKYO MARUNOUCHI 2025
期間:2025年9月8日(月)~9月23日(火)11:00~20:00
※最終日のみ18:00まで
※観覧可能時間は変更になる場合がございます。
場所:行幸地下ギャラリー
入場料:無料

AATM2025 サテライト展
第1回目の開催となったAATM2007に参加し、現在も活躍を続ける2名のアーティストの作品を紹介する特別展を開催!
日時:9月8日(月)~9月23日(火・祝) 10:00-18:00〈期間中無休〉
会場:三菱一号館美術館 Espace 1894
入場料:無料
出展アーティスト:薄久保 香(https://www.kaoru-usukubo.com/)、谷口 真人(https://makototaniguchi.com/

ギャラリーツアー
AATM2025参加アーティストが、自身の作品について会場で解説します。各日参加アーティスとが異なりますので、詳細はWebサイトをご覧ください。
日時:9月13日(土)、9月23日(火・祝) 15:00~16:30
集合場所:行幸地下ギャラリー(東京駅側エスカレーター上)


文 / 風都ナツメ(LoveWalker編集部)

東北出身。
居酒屋や旅先では初めて見る郷土料理や海外メニューを頼みがち。


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