圧巻の西洋建築を誇る東京ステーションホテル その100年の歴史を守り100年先を見据える丸の内びと―― 八木千登世さん
2025年09月25日 12時00分更新
丸の内LOVEWalker総編集長の玉置泰紀が、丸の内エリアのキーパーソンに会いに行き、現在のプロジェクトや取り組みなどのエピソードを聞く本連載。第27回は東京ステーションホテルの八木さんにお話を伺った。
「日本の玄関口」という務めを果たすためにどんな困難下でも営業を止めない
東京駅丸の内駅舎の中に佇む「東京ステーションホテル」。その始まりは1915年に遡り、都内に現存するホテルでは帝国ホテルに次ぐ歴史を誇る。第一次世界大戦、関東大震災、東京大空襲……幾度もの困難に直面しながらも、時代ごとに役割を変え、再開業を繰り返してきた。その歩みを紐解きながら、日本の近代史と重なり合うドラマをたどってみたい。
――東京ステーションホテルは、東京で2番目に歴史の古いホテルなんですよね。
八木「そうですね。現存するホテルの中では2番目になりまして、今年で110周年を迎えます」
――当時は「東京駅の中にホテルは必要なのか」という議論もあったそうですね。それでオープンも遅れたとか。
八木「おっしゃる通りで、ホテルのオープンは1915年ですが、その1年前の1914年に東京駅が開業しました。その際に、駅の中にホテルを入れるという計画があったんですね。今でいうインバウンドゲスト、海外からのお客様などが泊まる場所が少なかったんです。当時は帝国ホテル様も60室しかなかったですし、フランス料理店の築地精養軒にも宿はありましたが12室しかありませんでした。海外の賓客をお招きする場所は必須でしたが、東京駅がオープンした1914年は第一次世界大戦が起こりまして、見込んでいた海外からの需要が急になくなったりと、いろいろな波がありホテルは駅開業から1年遅れてオープンとなりました」
――東京ステーションホテルさんの営業は、最初は築地精養軒さんに委託されていたそうですね。
八木「日本の国策として、ホテルを作っていこうというところから始まっています。昔は鉄道省が満州や山陰などでホテルを経営していましたが、やはり難しいということもあり、東京ステーションホテルに関しては民間に委託することになりました。精養軒はホテルの経営経験もありましたので、それを買われて委託したということです」
――その後、関東大震災がきっかけで鉄道省の直轄になったとお聞きしました。
八木「そうですね。 1923年の関東大震災で築地精養軒が倒壊してしまい、経営自体が難しくなってきまして。 1933年に鉄道省直下の国営という形になりました。その際に名前も『東京鉄道ホテル』、英語ですと『Tokyo Railway Hotel』として再開業しました」
――その後、第二次世界大戦に突入してしまいました。戦時中にはホテルのドームに爆弾が落ちたそうですね。
八木「1945年の5月25日の東京大空襲で、ドームと3階すべての屋根が焼夷弾によって焼けてしまいました。外壁に関しては本当に強固に造られていましたので大丈夫ではあったのですが、屋根と3階に関しては残念なことになってしまいました。そんな中でもホテルとしては簡易ベッドを置いて一時的に営業はしていたとのことです。東京駅は1日クローズしただけで、国民の足ということで翌日から運行していたようです。
ですが、その後ホテルは一旦クローズします。 元の姿に戻したくとも、戦後ので物資もなく資金調達も難しい中でしたので、とりあえずは燃えてしまった部分を切り取って、ドームだったところに八角屋根を被せました。4、5年もたせればいいという程度の仮復興という形で、2年後の1947年に完成、ホテルは1951年に営業を再開しました。2007年に丸の内駅舎の保存・復原工事が始まるまで、その仮復原の姿のまま60年以上営業していたことになります」
――戦後すぐでも東京駅直結のホテルというものが必要とされていたってことですよね。その後経営は日本交通公社に委託されていた時期もあると伺いましたが、実際はどうだったのでしょうか。
八木「1915年にオープンしてから、日本のお客様を中心に常に稼働していたと聞いています。
東京ステーションホテルはGHQに接収されていたわけではなく、クローズしていた時期に待合室として一部を使用されていたんです。1933年から戦後まで国営ホテルだったのですが、戦後は鉄道復興に優先順位があり、ホテルの経営はまた民間に委託ということで日本交通公社(現在のJTB)の名前が挙がりました。 日本交通公社も本業を立て直さなければならず、単独での経営は無理だということで、1950年に日本交通公社と外部資本でできた日本ホテル株式会社という今の親会社が設立されました。
その翌年の1951年に、『東京ステーションホテル』に名前が戻り、そこで再開業を果たすことになります。何回再開業するのかというぐらい、歴史がありますね」
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