【連載】データ利活用実証プロジェクト報告 1/5 (株式会社MYCITY)
2021年04月21日 10時00分更新
※新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
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東京都 戦略政策情報推進本部 次世代通信推進課です。
戦略政策情報推進本部は、東京の成長戦略やICT利活用の更なる推進のため、2019年(平成31年)4月に新たに設置された組織です。その中で、次世代通信推進課は、TOKYO Data Highwayの構築を推進し、いつでも、誰でも、どこでも「つながる東京」の実現に向け、取り組んでいます。
都民の皆様がどこにいてもサクサクつながる環境を構築するため、全国初となる5Gアンテナ基地局を搭載するスマートポールの試行設置や通信事業者が5Gアンテナ基地局を設置しやすいように、行政財産を開放するなど様々な取組みを展開しています。こうした日々の取組みを都民の皆様に情報発信していきます。
前回はこちらをご紹介しました。
■【連載】YOUは何しに都庁へ? 〜デジタルシフト推進担当課長1周年記念座談会〜 後編
※過去の連載記事はこちら:東京都 戦略政策情報推進本部 ICT推進部 次世代通信推進課note連動企画
次世代通信推進課の隣のチームが昨年実施していた「データ利活用実証プロジェクト」の報告を今後5回シリーズでご紹介していきます。
都では、2020年2月策定の「スマート東京実施戦略」の下で、社会的な課題の解決や都民の生活の質の向上に寄与するサービスが、テクノロジーの力で次々と生み出されることを目指しており、行政や民間などの様々なデータを有効に活用できるデータ連携基盤として、「官民連携データプラットフォーム」を整備する予定です。
その整備に先立ち、都市をより良くするテクノロジーで、社会的な課題の解決等に貢献するデータ利活用実証プロジェクトを4つのテーマ「3密回避」「交通混雑」「バリアフリー」「防災」のもと選定しました。
今回はその第1回として、野村不動産、森ビル、東急不動産が共同実施者となり、MYCITYが実証した「オフィスの疎密可視化」のプロジェクトについて、担当した近藤がご紹介します。
「オフィスの疎密可視化」を通して目指したもの
コロナ禍の中、3密回避は重要な社会課題です。今回、MYCITYの「MyPlace」というビーコンを活用したオフィス内位置情報把握ツールを活用し、オフィス内の3密回避策につながる知見を得ることを目指しました。
また同時にオフィスフロアだけでなく、オフィスが入居するビル、その周辺のエリアといった3つのスケールでも混雑情報の見える化を行ない、With・Afterコロナにおける、新しいオフィス利用や働き方の在り方の検討につなげました。
プロジェクト概要
先に触れたように、このプロジェクトでは
① オフィスフロア(共同実施者のオフィス専有部)
② オフィスが入居するビル
③ ビル周辺のエリア
の3つのスケールで混雑状況を把握・可視化を行ない、各スケールでの混雑の影響因子と回避策を特定すること、さらにそれらスケール間での相関モデルを作成することを行ないました。またこれらを共同実施者である3社の大手ディベロッパーの本社オフィスがある西新宿/六本木/渋谷の3つのエリアで実施しました。
① オフィスフロア(共同実施者のオフィス専有部)
取得した混雑情報を活用し従業員の行動変容を促し、可視化の前後での密の発生状況および接触頻度の効果検証を行ないました。各共同実施者本社オフィスの一部エリアで各社200人から300人の社員の方々の協力の下、条件を変更して2度データを取得し、混雑・接触の発生頻度を分析することができました。2度の測定及び3社の差異から、オフィスの物理情報、勤務ルール、曜日・時間帯、混雑の可視化有無などの条件による密・接触の発生頻度の影響を分析しました。
② オフィスが入居するビル
上記3つのビルで、セキュリティーゲートの情報からビル単位の混雑を測定・可視化し、日時・天気による影響を分析しました。
③ ビル周辺のエリア
上記3つのエリアで、交通情報・メッシュ情報からエリア単位の混雑を可視化し、日時・天気による影響を分析しました。
④ スケール横断
さらに、①~③の3つのスケールの相関性を解析しモデルを作成し、これによってデータが不足している場合でも他のスケールのデータから混雑状況を推定することを可能になりました。
プロジェクト成果
エリア・ビルの混雑推計モデルを作成
エリアやビル単位での混雑状況の間では、1週間前と前日の同時間帯の混雑状況をもとに高い精度で推計可能であることが確認できました(重回帰分析によって誤差3%程度の精度の予測モデルを構築が可能)。
また、今回の実証3エリアで、エリア間の日・時間別推移に強い正の相関(相関係数0.9以上)があり、あるエリアの混雑から、他エリアの混雑状況を推定しうることもわかりました。
ランダム性の高いオフィス内混雑
一方、フロアでの混雑状況はランダム性が高く、推計よりもリアルタイムでの状況把握が必要になることが分かりました。接触回数が多い社員は特定部署に偏在しており、該当部署の働き方の検討及び感染予防対策の徹底が必要だと考えられます。接触人数の多い部署は出社/会議/他部署とのやり取りが多い部署でした。
また、さらなる確認は必要なものの、接触人数が相対的に少なかった企業のオフィス環境から、フロア面積の大きさとグループアドレスの実施やABW(Activity Based Working:作業によって場所を変える働き方)の選択肢の多さによって生じている可能性が考えられます。
フロアの混雑状況等の発信に対する関心度
実証に参加した従業員の方々の関心度も非常に高く、およそ6割のユーザーが恒常的にアプリを活用しています。そのうち、1割程度のユーザーにおいて行動変容が確認されました(本プロジェクトで実施した426名の実証参加従業員へのアンケート結果)。
関心が高いのに1割しか行動変容に至っていないのはなぜなのでしょうか? たとえアプリで混雑状況がわかっても、部署等で使用する座席やエリアが指定されている制約が、行動変容が制限されてしまった背景にあるようです。
参考:この実証を紹介したイメージ動画
おわりに
この実証を通じて、様々な事業者が既に持っているエリア滞在人数や施設の在館人数情報を活用することで、エリア・ビルにおける混雑予測といった情報発信が十分見込めることが分かりました。都としては、事業者などからのデータ提供に向けたガイドラインや運用ルール等の策定を都主導で実施する意義があるのではないかと考えています。都はデータ流通を促進する活動の一環として施設系混雑ワーキンググループの活動を行なっていますが、その活動テーマとも合致し、改めてその活動の必要性を確認できたと思います。
また、オフィスでの混雑・接触を避ける行動変容を実現するには、混雑の可視化と並行し、勤務ルール等を見直すフロア運用の施策と連動させ実施することが重要であることもわかりました。
皆さん、お気づきのように従来からあった「働き方改革」課題に、さらにコロナ禍の中では「3密回避」という文脈が追加されており、課題がさらに複雑になってきています。都としては複雑な課題に対してデータを活用することで指針を示せる、そういった活動を積極的に推進していきたいと考えています。
◆この記事は、下記より転載しています
https://note.com/smart_tokyo
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