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東京會舘 ロッシニテラス

仕事に飽きてしまったらどうしたらいい? バーテンダーが考える、仕事を作業化しない姿勢に納得!

三浦孝太さん

 たくさんの人が訪れ、さまざまな悩み相談に答えてきたであろう丸の内のバーテンダーの方に、あなたに代わって相談を投げかける本連載「人生の達人はBARにいる」。今回は、東京會舘の「ロッシニテラス」を訪れました。本格的なディナー、皇居を望めるカフェスペースでのランチやアフタヌーンティーが楽しめるほか、バーテンダーが腕を振るうカクテルも楽しめるなど、あらゆるシーンで利用できるオールデイダイニングです。チーフバーテンダーの三浦孝太さんにお話を伺っていきます。

仕事を作業化せず、未来に繋がる視野の広さが大事!

 今回のお悩みはこちら。

仕事に飽きてきた… 毎日楽しんで仕事を続けるには?
仕事が嫌いなわけではないのですが、ルーティーン化してきたこともあり、退屈に思うことが増えてきました。もっとわくわくしながら楽しんで仕事をできればと思うのですが、どのような姿勢でいればよいのでしょう?


──仕事というのは毎日続けていると慣れも出てきて、どうしてもルーティーンワークになりがちですよね。

三浦さん「誰でも多少はそういう部分はありますよね。でも、私自身がいつも思っているのは、作業にしてはいけないということです。仕事を作業にして漫然と働いてしまってはいけないと思うんです」

──確かにルーティーンワーク化している時って、仕事を作業としてとらえてしまっている時かもしれません。

三浦さん「そういう時はどうしても仕事に情熱を持てないし、油断してミスも起きがちで、仕事もどんどん楽しくなくなってしまう気がします。

 私の仕事はお酒をお客様にお出しすることですが、その一瞬で仕事が完結するわけではなく、丁寧に仕事をしてお酒を提供することが、再びそのお客様が来店してくださることや、後輩への指導など、さまざまな未来に繋がって来ると思うんです」

──ひとつひとつの仕事が、未来に繋がるという視点は大事かもしれません。

三浦さん「はい、そんな風に視野を広く持って仕事をすることで、毎日の仕事を頑張ろうと思えますし、そうすれば仕事が作業になることもなく、より楽しんでやれるものになるんじゃないでしょうか」

──三浦さんご自身も、自分の仕事が未来に繋がっていたことを実感した瞬間はありますか?

三浦さん「私は大学卒業後、ずっと東京會舘で働いていますが、ロッシニテラスのある本舘には、今年の2月に12年ぶりに戻ってきました。かなり久しぶりなので浦島太郎状態というか、いろいろと状況も変わっていて最初はわからないことも多かったのですが、しっかり情報収集をして努力していたらお客様にもとても喜んでいただける機会が多くて、嬉しかったですね。やはり真面目にやっていればきちんと返って来るものだな、と思いました。

 12年前にメインバーで働いていた当時に必死に覚えたお客様の情報も、自分でも驚くのですがいまだに覚えていることがほとんどです。お仕事やお酒の好み、当時は店内でタバコも吸えたのでその銘柄など、当時は必死で覚えていました。久しぶりに東京會舘の本舘に戻って来て、当時のお客様で今でも通ってくださっている方にお会いすると、自分でも驚くのですが自然とそのお客様の情報が思い出されるんです。やはり一生懸命頑張ったことって忘れないんだな、と思います。当時の思い出などをお話しするとお客様も喜んでくださりますし、まさに当時の仕事が今に繋がっていると感じますね。

 こういったことはやはり仕事が作業になってしまってはできないことだと思いますし、作業化せずに目の前の仕事に取り組むことでしか得られない喜びがあるんじゃないかと思います」

 仕事を作業としてとらえず、広い視野を持って丁寧に仕事をすることが、仕事を楽しんで続けるための秘訣だと三浦さんは教えてくれました。

100年を超える歴史を持つ東京會舘

 目の前の仕事に真面目に取り組む大切さを教えてくれた三浦さん。そんな三浦さんご自身のことや、東京會舘 ロッシニテラスの魅力について迫ります。

 お父様もバーを経営するバーテンダーだった三浦さん。三浦さんのバーテンダー人生は、大学卒業後、お父様の知り合いを頼りに東京會舘に入社したことから始まります。「三浦さんの息子ならバーでしょ」ということでメインバーに配属されて2年半勤務。その後バンケット(宴会場)で1年半経験を積みます。それから本舘から勤務先が変わり、今はなくなってしまった浜松町東京會舘にあるBar39で7年の勤務、それから会員制のレストランに5年勤め、今年の2月に本舘に戻り、ロッシニテラスのチーフバーテンダーを務めています。

 お父様を介してのバーへの就職でしたが、「今まで1度もやめたいと思ったことはないですね」と話す三浦さん。お父様がバーで働かれている姿を見て、立ち振る舞いなどへの憧れはあり、漠然とバーテンダーになりたいという気持ちはあったと言います。

 そんな三浦さんが考えるバーテンダーの仕事の1番の魅力は、いろいろな方と出会えること。戦後、数年間は連合国総司令部(GHQ)に接収され、将校クラブとして営業していた時代もある東京會舘は100年を超える歴史を持ち、文化人や財政界の大物など多くの有名人が訪れてきた場所でもあります。そんな東京會舘のバーテンダーはバンケットのバーやケータリングを担当することもあり、一般の人は行けない場所へ行ったり、普通は会うことのできないような方たちに会う機会も少なくないのだとか。ここに名前を出すことはできませんが、三浦さんも数々の有名な方を接客してきたとのことで、緊張するような瞬間もたくさんあったと話します。

コースター

お酒の提供に使われるコースターは、3階にかかっている大シャンデリアの吊元にあるメダリオンのモチーフをデザインしたもの。大シャンデリアは東京會舘本舘が初代の頃からあるものだそうで、コースターのデザインからも歴史を感じ取ることができます

 長い歴史を持つ東京會舘は、多くのバーテンダーたちにとって“修業の場”となって来たそうで、東京會舘で経験を積んで独立していったバーテンダーも多くいると言います。そんな東京會舘には“會舘”と名の付くカクテルや技術がいくつかあるそうで、その1つが「會舘ステア」。ステアとはカクテルを作る手法の1つで、グラスに入ったドリンクをバースプーンでかき混ぜることを指します。

會舘ステア

「會舘ステア」を見せてもらいました

 多くのお店では親指・人差し指・中指を使うような形でバースプーンを動かしますが、會舘ステアでは主に中指と薬指を使ってバースプーンを動かします。親指や人差し指は添えるだけです。こうすることで繊細な動きが可能になり、氷同士や氷とバースプーンがガチャガチャとぶつかってしまうのを避けられるそう。氷がぶつからないことで溶けるスピードも緩められ、ドリンクが水っぽくなってしまうのを防ぐことができます。この會舘ステアを完全に習得するまで、2、3年かかるんだとか! そんな熟練の技術を楽しめるのが東京會舘という場所なんです。

それぞれのお客様に合わせた接客を提供するロッシニテラス

 三浦さんが現在働くロッシニテラスは、オールデイダイニングとして営業していますが、バーとして利用する方も少なくありません。メインバーは土日祝日の営業をしていないため、休日にお酒を飲みに来る方がいたり、ロッシニテラスはクローズタイムがないため、早い時間にお酒を飲みに来る方もいらっしゃるそう。

ロッシニテラス、グリルレストラン ローストビーフ&グリル ロッシニの入り口

ロッシニテラスと、隣接するグリルレストラン ローストビーフ&グリル ロッシニの入り口

 店内は窓が大きく開放的な雰囲気で、ソファ席でくつろぐこともできるので、バーにあまり慣れていない、という人でも気軽に訪れやすい雰囲気となっています。「『東京會舘』という場所に臆さずに、ぜひバー利用に限らずカフェやランチ利用でも気軽に訪れて欲しいです」と三浦さんは話します。

 記念日のお食事やママ友同士の喫茶利用、仕事の打ち合わせなど、本当に幅広いお客さんが来店するというロッシニテラス。それぞれのお客さんに合わせた接客はまさに“作業化できない仕事”です。三浦さんは「幅広くいろいろな方にご利用いただいているからこそ、皆さまそれぞれに合わせての接客というのは難しいところです。どのお客様にも心地よく過ごしていただけるように心掛けています」と言います。

ロッシニテラス 内観

ソファ席もありゆったりくつろげる

ロッシニテラス バーカウンター

バーカウンターもあり、本格的なバーとしても楽しめる

マッカーサーの目を盗んで楽しまれたカクテル

 今回もこの連載恒例の相談者にオススメのカクテルをお作りいただきます。「仕事に飽きてしまった」という相談者にオススメするカクテルは「會舘風ジンフィズ」。“會舘”の名を冠したこのカクテルは、カクテルレシピとして確立しており、作り方の違いやアレンジなどはあるものの、多くのバーで「會舘風ジンフィズ」として波及しています。

 牛乳が入ったこのカクテルは、GHQに接収されていた時代、将校たちが朝からマッカーサーの目を盗んでお酒を飲むために、パッと見は牛乳のように見えるお酒ということで考案されたカクテルだと言われています。そんな面白い逸話を聞いたら、早く飲みたくてたまりません!

會舘風ジンフィズ

今回いただくのはこちら

 真っ白なもこもこの泡が特徴的なこのカクテル。口にするとまず濃密な泡の口当たりが楽しめます。お味はさっぱりとしたヨーグルトや乳酸菌飲料のような味わいが最初に感じられて、とっても美味しいです。ジン、レモンジュース、ガムシロップ、ソーダという、一般的なジンフィズの材料に加えて牛乳が使用される「會舘風ジンフィズ」。牛乳とレモンジュースの組み合わせがヨーグルトのような風味を生み出しています。牛乳とレモンジュースの組み合わせは分離が起こってしまうため、バーテンダーのシェイクの技術が試されるところでもあります。後からジンの味もしっかりと感じられ、お酒好きの人も十分満足できるカクテルです。

 また、このカクテルを作る過程でも、東京會舘ならではの技法が見られます。それが、メジャーカップを使わずに自分の感覚で液量を量り取るハンドメジャーです。何杯も何杯もカクテルを作ることで感覚をつかみ、身に付けていくハンドメジャーの技術。宴会なども多い東京會舘では同じドリンクをたくさん作らなくてはならない機会も多いため、メジャーカップを使うと時間がかかりすぎてしまいます。そのため、東京會舘のバーテンダーはハンドメジャーでカクテルを作れるように経験を積んでいくのです。

ハンドメジャーでジンを注ぐ三浦さん

ハンドメジャーでジンを注ぐ三浦さん

 そんなバーテンダーとしての技術がぎゅっと詰まった「會舘風ジンフィズ」。これを作る仕事も作業にしてしまってはいけないと三浦さんは話します。「東京會舘でも1番よく出る作り慣れたカクテルですが、漫然と作業として作っては絶対にダメですね。作業になってしまうとやはりミスも起きてしまいます。家族や大切な人に出すようなつもりで、一杯一杯いつも心を込めて作っています」とのこと。

 仕事に飽きてしまったときには、三浦さんが心を込めて作った「會舘風ジンフィズ」を飲んで、“仕事を作業化しない”という姿勢を思い出してみてはいかがでしょうか?

三浦さん

仕事に飽きないための姿勢を教えてくれた三浦さん。ありがとうございました!

 次回もバーテンダーさんの名回答と、美味しいカクテルに期待です!

東京會舘 ロッシニテラス
住所:東京都千代田区丸の内3-2-1 1F
営業時間: 11:30~22:00、土日祝 11:00~22:00
定休日:なし
電話番号:050-3134-4890(予約センター)
受付時間 10:00~20:00

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