三菱一号館美術館の再開館後初の展覧会では、19世紀末の芸術家トゥールーズ=ロートレックと、現代を生きる作家ソフィ・カルの二人の作品を、「不在」というテーマを軸に、ゆるやかにつながる二本立ての構成でご紹介します。
展覧会のテーマや意義は、前回の記事(https://lovewalker.jp/elem/000/004/217/4217804/)で館長の池田が語っていますのでそちらもぜひご覧ください。
ここでは、本展担当学芸員より、当館として初めて協働する現代作家となるソフィ・カルについて、改めてご紹介したいと思います。
ソフィ・カルは10代の終わりから放浪生活をし、26歳でパリにもどった後に制作を始めました。ロンドンのテート(1998年)やパリのポンピドゥーセンター(2003年)など各国の主要美術館で個展を開催したほか、2007年のヴェネツィア・ビエンナーレではフランス館の代表アーティストに選出されました。また、先日、第35回高松宮殿下記念世界文化賞の受賞が発表されたことも話題になり、まさに現代フランスを代表するアーティストと言えます。
ソフィ・カルはこれまで、プライベートな体験をもとに写真と文字を組み合わせた作品を数多く発表しています。代表作には、遭遇した人を尾行してその行動を捉えた《ヴェネツィア組曲》(1980年)、目の見えない人々に「美しいもの」について尋ねた《盲目の人々》(1986年)などがあります。また、日本滞在中の自身の失恋体験による痛みを表現した《限局性激痛》(1999-2000年)や、渋谷のスクランブル交差点でも上映された映像作品《海を見る》(2011年)によって彼女を知ることになった方も多いでしょう。
本展の出品作である《自伝》シリーズも、父、母、愛猫の死という身近な出来事を扱った作品です。こうした私的な体験をもとにした創作活動で知られる一方、《あなたには何が見えますか》(2013年)のように、実在の美術館でおきた絵画の盗難事件を発端に、美術品の「不在」をテーマにした作品もあります。
近年は、パリの狩猟博物館(2017年)や、マルセイユの博物館群(2019年)などで、「美術館」とその「コレクション」にまつわる展示も行っています。パリのピカソ美術館では、昨年ピカソ没後50周年記念にピカソ「不在」の展示を行って人々を驚かせたばかりで、本展では、その際に制作されたシリーズのひとつ《監禁されたピカソ》(2023年)が展示されます。
展覧会では、こうしたソフィ・カルの近年の代表的なシリーズや、当館の所蔵作品である《グラン・ブーケ(大きな花束)》の 「不在」に着想を得た彼女の新作《グラン・ブーケ》を展示し、彼女の多くの作品に通底する「不在」というテーマを掘り下げていきたいと思います。どうぞお楽しみに!
三菱一号館美術館 再開館記念『不在』―トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル
会期: 2024年11月23日(土)〜2025年1月26日(日)
https://mimt.jp/ex/ls2024/
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