首都高の大手町付近に出現するあのロケットみたいなものは何?かつて日本の通信網の中枢を担ったビル
2024年12月27日 12時00分更新
高層ビルや歴史的建造物など、丸の内の建築群を現場のレポートを交えながら紹介する連載「丸の内建築ツアー」。今回は、大手町の北端に建つロケットのような鉄塔を載せた「NTTコミュニケーションズ大手町ビル本館・別館」を紹介します。
NTTコミュニケーションズ大手町ビル本館の建設と経緯
戦後の高度経済成長期が始まる直前に、電信電話業務の拡大や電気・通信事業の効率化などを目的に、元々、逓信省であった電気通信省から、1952年に日本電信電話公社(電電公社)が誕生します。そして高度経済成長期に突入し、急速な経済成長を支える電話の需要急増や電気通信技術の進歩から、大都市を中心に大規模な通信局舎の需要も増大していました。1961年4月に先行して建設が進められていた局舎本体が地上7階、地下3階、塔屋3階、高さ42.75mという規模で竣工します。竣工時は電電公社であったため、ビルの名称は「大手町電電ビルディング」で、電報や電話、電信、電話中継所、無線電信調整などの機能・用途が入っていました。
なお、国土地理院地図の1963年6月26日撮影の航空写真で確認してみると、現在、鉄塔が建っているビル東側部分はまだ建設中であったことが確認でき、綺麗なL字の平面形状で竣工しています。次の1966年6月29日撮影の航空写真では、ビル東側部分が長めになり、北東側の外壁が斜めになった現在と同様の形状になっていることから、大手町電電ビルディングの東側は、1963年~1966年の間に後からすぐに増築されたものであるようです。
NTTコミュニケーションズ大手町ビル別館の建設と経緯
本館全体が完成した後、別館の建設が始まります。敷地が狭く、更に都心の地価も高騰していたことや、1963年の建築基準法改正により百尺規制をはじめとした高さ制限が廃止されていたことから、電話局として初めて純鉄骨造の高層建築として建設されることになりました。
1969年4月に地上11階、地下4階、塔屋1階、高さ64.17m、軒高56.95m、延床面積41,210㎡という規模で竣工。竣工時のビル名称は「大手町電電ビルディング別館」でした。塔屋を含めた高さは60m超えとなっており、実は超高層建築物です。
建物形状は、長方形の平面形状、建物両側に階段室やエレベーター、水回りなどのコアを配置した両サイドコア、外装にはプレス成型による大型パネルを設置したアルミカーテンウォールを採用した、プレハブ化と経済合理性を重視したシンプルなものとなりました。内部は、事務所のほか通信機械室として使われていることもあり、窓は少なく、茶色の外壁で覆われた要塞のようにも見えます。
今にも発射しそうなロケットのような見た目の鉄塔
首都高を走っていると大手町付近で目に飛び込んでくる、赤白に塗り分けられた、まるで「ロケット」のような鉄塔が目立つビルがNTTコミュニケーションズ大手町ビルです。
この鉄塔の高さは140mとなっており、ビル屋上に約100mの高さの塔が載っかっていることになります。鉄塔の直径は約4m、下部で脚が4本追加されており、先端が尖った形状が特徴となっています。
電信電話など、通信ネットワーク内でデータを正確かつ安定して伝送するためには、「網同期」というものが必要になりますが、この網同期には、独立同期、従属同期、相互同期の3つの方式があります。日本では、主局の高精度な発振器に従局を同期させる「従属同期方式」を採用しており、効率的かつ高精度な同期が可能という特徴があり、その中枢を担う設備がNTTコミュニケーションズ大手町ビルにはあります。具体的には、ビル内に設置された原子発振器により作成されたクロック(信号、周波数)を全国の従局へ配信し、網同期をとっているとのことで、その通信のために鉄塔が設置されたのかもしれません。
NTTコミュニケーションズの本社移転と今後・・・
このNTTコミュニケーションズ大手町ビルには、元々、NTTコミュニケーションズの本社が入っていましたが、すぐ南側に竣工した「大手町プレイス ウエストタワー」に2019年1月4日より移転しています。移転したのが2019年でその後すぐにコロナ禍に入ってしまったこともあり、再開発計画はまだ発表されていません。しかし竣工から約60年が経過していることもあり、まもなく建て替えや再開発の話が出てきてもおかしくありません。大手町の赤白に塗り分けられたロケットのような鉄塔が見られるのもあと少しかもしれませんね。
以上で今回の建築ツアーは終了。電電公社時代の遺構が見つからなかったのは残念ですが、ロケットのような鉄塔やビルの壁の様子から通信を手掛ける会社のビルらしさが伝わってきました。みなさんもぜひ近くで見てみてください。
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