「東京駅丸の内駅舎」に使われてるレンガ、何個か知ってますか? 職人延べ75万人で作り上げた世界最先端のレトロモダン建築の歴史に迫る!!
2025年01月31日 12時00分更新
東京駅丸の内駅舎を戦前の姿に戻す復原工事
1950年代半ばに入ると、日本が高度経済成長期に突入します。1954年には八重洲口に地上6階(後に地上12階に増築)の駅ビルが完成、1955年には東京駅の一日平均乗降客数が498,000人に達し、1956年には山手線と京浜東北線が分離運転開始、1958年に東海道本線の電車特急「こだま」が運転開始する中、将来的な新幹線開通を見込んで仮復旧状態だった丸の内駅舎の改造計画も浮上します。
当時の国鉄総裁の十河信二は、丸の内駅舎を地上24階、高さ88mの日本で初めての超高層ビルへの建て替え案を発案、この計画は当時の100尺規制による法規上の問題で実現しませんでしたが、構造検討にあたっていた武藤清が、この時に確立された柔構造理論をのちに日本初の超高層ビルである「霞が関ビル」に活かしています。
その後、1964年に東海道新幹線が開業、1968年には混雑率が300%に達しつつも東海道本線の線路と共有していたため増発が困難であった横須賀線・総武本線を別線・地下化する工事が始まります。1971年に東北新幹線の東京駅延伸工事が始まり、1972年に東京地下駅の供用が開始、という流れの中、1981年1月に日本の中央駅である東京駅での再開発構想が再度浮上します。
この際の計画では、丸の内駅舎を地上35階、延床面積30万平方メートルの超高層ビルに建て替え、八重洲口を地上30階の超高層ツインビルを建設するというものでしたが、国鉄の赤字や分割民営化により頓挫しました。当時の国鉄では、超高層ビル建設案のほかにも、丸の内駅舎を全面保存する案や移築保存する案、外観のみ保存する案など様々な案があったほか、市民団体などによる保存や復原の活動などもあったようです。1990年には京葉線の地下ホームも開業、1991年には東北新幹線も乗り入れを開始し、東京駅は拡大し続けます。
そして21世紀に入る直前の1999年10月に、東京都とJR東日本により、東京駅丸の内駅舎を創建当時の形態に復原することが決まり、2001年に都市計画決定、2003年には重要文化財指定がなされます。復原工事には、500億円を要すると見込まれ、各法改正ののち、東京駅丸の内駅舎の未利用分の容積率を周辺の八重洲側のグラントウキョウや丸の内側の東京ビル、新丸ビルなどの超高層ビル建設時に移転することで、その対価を復原事業費に捻出することが可能になりました。
2004年には、容積移転を行った八重洲側の超高層ツインビル「グラントウキョウ」が着工、2007年には竣工し、同年5月についに東京駅丸の内駅舎の保存復原工事に着手し、戦後から仮復旧状態で使われてきた東京駅の大改造がようやく始まります。
東京駅丸の内駅舎は地上3階の創建当時の姿に戻されることとなり、耐震性能を現代の基準に合わせるために免震構造にすることになります。免震レトロフィット工事と呼ばれる工事では、既存の建物を一度ジャッキで仮受けし、基礎の松杭をすべて除去して新たな杭を打ち、地下空間を構築、免震装置352基とオイルダンパー158台を設置したうえで載せ替えています。
免震化工事と並行して、復原する3階部分は鉄骨鉄筋コンクリート造により増築、南北のドームや外観も創建当時のように復原し、炭殻コンクリートの床は強度不足だったため、すべて現代工法のコンクリートスラブに変えるという大掛かりな工事が行われました。復原工事が進む2011年3月11日、駅舎の屋根に用いる屋根材の天然スレートを補修・保管していた倉庫が東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受け、約65,000枚の天然スレートが流されてしまいます。何とか手作業で45,000枚がかき集められ、うち使用可能なものは南北ドームや中央部などの象徴的な屋根に配置され、不足分はスペイン産で補い、屋根全体では約45万枚のスレートが設置されました。また、天然スレートは、創建当時と同様の「一文字葺き」という手法により設置され、ドームの内観も約2.1mの大きさの鷲の彫刻や干支なども創建時の姿に復原されています。外壁も2階に取り付けられていた柱頭飾りを増築された元あった3階に移設されたほか、化粧レンガも創建時の姿に近いものに復原されました。
そして2012年10月1日、ついに復原工事が完了し、グランドオープンに至りました。2017年12月7日には、東京駅丸の内駅前広場の供用が開始され、今の姿になりました。2024年12月20日に開業110周年を迎えた東京駅ですが、この先110年はどのような変化があるのでしょうか。日本の中央駅としてこの先100年、200年と更に発展していくと良いですね。
以上で今回の建築ツアーは終了。今回改めて丸の内駅舎を調べてみて、歴史的遺構としてもとても価値がある建築物だと痛感しました。みなさんも利用する機会の多い駅だと思いますので、ぜひ訪れた際には少し足を止めて、歴史の風を感じてみてください。
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