切なさが加速する!閉館するビルで高校生たちの青春映画など上映の「シネマキチ」 観る場所で変わる映画の印象
2025年02月07日 16時10分更新
まちなかの空き区画や空き地を活用して開催する映画上映&トークイベント「CINEMAKICHI(シネマキチ)」が今年2025年より開始されました。第1回目の開催地は有楽町にあるYAU CENTERで、1月10日(金)~12日(日)、2月6日(木)~8日(土)の期間に開催。
映画を観る場所というと、映画館か自宅が多いですが、まちなかの空き区画で観るって一体どんな感じだろう…普段とは違った映画鑑賞体験なのかな?と興味津々。というわけで、2月6日に行われた上映会へ行ってきました!
街と繋がるテーマで映画上映
今回の会場となるYAU CENTERは、有楽町アートアーバニズム「YAU(ヤウ)」の活動拠点の1つです。YAUとは、都心ビジネス街におけるアーティストへの持続的活動支援を目的に、大丸有エリアを拠点に行われている実証パイロットプログラム。YAU CENTERのある国際ビルは、建て替えのため2025年中に閉館が予定されています。この期間限定の余白の空間を活用して、今回のシネマキチは開催されます。
YAU CENTER内に作られたシネマキチのシアターは手作り感のあるもの。はじめは既成の同じ椅子を並べようと考えていたそうですが、映画館のように傾斜のある床ではないためそれでは後ろの席の人はスクリーンが見えないということで、運営スタッフの方たちによる手作りの椅子を設置。さらに前の方では床に座って観れたり、Yogiboに座ってリラックスしながら観れたりと、鑑賞姿勢の自由度が高いです。
今回はシネマキチ実行委員で大丸有エリアのまちづくりに携わる三菱地所/大丸有エリアマネジメント協会(リガーレ)の長谷川春奈さんと、俳優のサトウヒロキさんにお話を聞くことができました。
──シネマキチ開催のきっかけは何だったんでしょうか?
長谷川さん「もともと自主制作の『喪失の点描』というリーディング公演に私が制作部で携わり、サトウさんは出演されていました。その公演が終わった頃から、街なかで映画を上映して街と映画と人が繋がるようなイベントができるといいね、という話が出たのがきっかけですね。
実行委員は丸の内ワーカーと俳優という異なるフィールドのメンバーが集まっているんですが、映画が好きということは共通しています。街なかの余白空間を使って映画を上映することで、映画が好きな人がその街へやってきたり、街が好きで訪れた人がいたりするなかで、いろんな交流が生まれて欲しいと思っています。『シネマキチ』というのは、シネマと空き地・基地を組み合わせた言葉で、何かが生まれる基地のような場になってほしいです」
──今回の会場はYAU CENTERですが、今後別の場所でも展開されていくのでしょうか?
長谷川さん「初回は私たちが働いている街である有楽町で開催しますが、全く違った“暮らす街”での開催など、いろんな場所で実施していけたらと思っています。1月に開催した際は『地元の広島でやってほしい』というような声もいただいたりして、来てくださる方や、携わっている人たちで一緒に考えながら、大丸有エリアに限らず今後の開催地も考えていきたいです」
──映画の上映ラインナップを見てみると、マイナーなものが多い印象ですが、どのように選ばれているのでしょうか?
サトウさん「自主制作の映画をメインに上映していますが、テーマが街と繋がることを大事にしています。今回だと、YAU CENTERのある国際ビルが閉館になるので、なくなってしまう場でみんなで一緒に映画を観た、ということが、“街の記憶”だったり“卒業”というようなイメージにつながるのではないかと思い、そういったテーマの映画を選びました」
──1月の開催時の来場者の反応はいかがでしたか?
サトウさん「前回は金・土・日の開催だったので、金曜の夜は近隣のワーカーの方が多かったですね。未就学児のお子さまを連れた方もいらっしゃって、普通の映画館だと椅子にじっと座り続けるのがしんどいという場合でも、この空間だとリラックスして見れた、というお声もいただきました。大人の方も手作り感のあるこの空間がくつろげる、と言って気に入ってくれた方が多かったです。街に開けたゆるっとした空間でラフに映画を楽しめる場になったのではないかと思います。自主制作の映画が多いので、シネマキチを通じて知らなかった映画に出会えた、と言ってくださる方も多くて嬉しい限りです」
──トークイベント付きの上映もあるかと思いますが、どのような内容で行われていますか?
長谷川さん「基本的に監督にお越しいただいて、作品によっては出演している俳優にもお越しいただいています。また、シネマキチならではのイベントにしたいという思いから、丸の内ワーカーにも一緒に登壇してもらい、普段は異なるフィールドで活躍する方々のクロストークの場になっています。お互いに仕事で大事にしていることを語り合ったり、日頃当たり前だと思っていることがフィールドが違うとそうではなかったり、それぞれに新しい発見がありますね。監督・俳優、ワーカー、来場されたお客さま、みんながそれぞれに気づきを得られるようなトークイベントになるといいな、と思っています」
──最後に改めて、今回のシネマキチ開催への思いをお聞かせください
長谷川さん「街は日々変わっていきますし、この国際ビルも閉館してしまいますが、建て替え後のビルができあがった時にも、シネマキチに来ていただいた方たちが映画のことや街のことをリンクさせて思い出せるような、記憶の1ページになったら嬉しいです」
高校生映画と“大人の街”大丸有がリンクする
上映前に国際ビル内を少し歩いて回ったのですが、すでに撤退しているお店や、「2月末日が最終営業日」というような案内を出しているお店も多く、閉館が間近であることが伝わってきます。終わりの足音が聞こえるというのは、どうにも寂しい気持ちにさせられるものです。
さて、今回私が参加したのは、2月6日(木)16:00~の回。この回で上映されたのは、村田夕奈監督の『可惜夜』と『自画自讃』の2作品です。
『可惜夜』は高校2年生の女子生徒が主人公で、主人公の周りの登場人物もほとんどが女子生徒。『自画自讃』は高校卒業を控えた3年生の男子生徒が主人公の作品です。
監督の村田夕奈さんは現在大学1年生で、『可惜夜』は彼女が高校2年生の時、『自画自讃』は高校の卒業式直後に撮影した作品だそう。休み時間の過ごし方の雰囲気や、ちょっとしたことで友達同士の関係が微妙にうまくいかなくなるような描写など、忘れていた高校時代がふっと思い出されるようなシーンが多く、物語を追いかけつつも自分の学生時代を懐かしくも思いました。
大丸有エリアといえばオフィスワーカーが多く、高級ブランド店なども多いことから、「大人の街」というイメージが強いので、そんな場所で高校生の物語を上映するのはミスマッチなような気もしていました。ですが、閉館を控えた国際ビルの様子を見たあとだからこそ、このビルと高校生活を描いた映画の両者で、物事の永遠には続かない刹那的なイメージが重なります。このように、観る場所によって映画の印象が変わったり、いろいろな思い出が重なったりすることこそが、映画館ではない場所で映画を上映する「シネマキチ」の価値なのかもしれません。
CINEMAKICHI
開催予定:2025年2月7日(金)16:00~・19:00~、8日(土)13:00~・16:00~・19:00~
開催場所:YAU CENTER(東京都千代田区丸の内3丁目1−1 国際ビル 1F)
チケット購入:https://cinemakichiyurakucho.peatix.com/
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