街が丸ごと美術館みたい! 無料とは思えないほど充実している「有楽町ウィンドウギャラリー」に行ってきた
2025年03月04日 12時00分更新
エリア内に多くの美術館を有し、丸の内仲通りにはアート作品が点在する丸の内ストリートギャラリーがあるなど、日本有数のアートな街である大丸有エリア。2024年11月には、長期休館を経て三菱一号館美術館が再開館し、より一層注目度が上がっています。
そんなこの街では現在、丸の内仲通りの商業店舗にアート作品が飾られる「有楽町ウィンドウギャラリー2025」が開催中。街全体が美術館のように楽しめ、ますますアートな街となっています。プレスツアーに参加してきましたので、魅力的な作品の数々をご紹介していきます!
自宅でも気軽に飾れる鉄の線画
ザ・コンランショップ丸の内店 × 今井みのり
まず最初にご紹介するのは、新丸ビルにあるザ・コンランショップ丸の内店で展示されている、今井みのりさんの作品。
アイアンアーティストの今井さんは、鉄の角棒を曲げて、溶接し、線画を“作る”作風の作品を手がけています。今回展示場所となったザ・コンランショップは、ライフスタイルショップのため、作品も生活をイメージしたモチーフを扱い、部屋を彷彿とさせるような見せ方となっています。
作品には、壁に掛けて飾れるようなタイプのものと、床やテーブルなどに置いて飾れるタイプのものがあります。
私が1番気に入ったのは、床に置いて飾られていた、こちらの猫ちゃん! 表情が愛らしいですし、尻尾の部分は床にぴったりとくっついて作品全体の土台にもなっている工夫がユーモラスです。作品の影も線画となって現れているのも、おもしろいなと思いました。
今井さんは作品によって使う棒材を変えているそうですが、今回使用しているのは太さ4ミリのかなり細いもの。そのため、鉄でできた作品とは思えないほど軽くなっています。「有楽町ウィンドウギャラリー」では、気に入った作品については購入することも可能で、今回の作品も「自宅でも簡単に飾れて、ポスターくらい気軽にアイアンアートを楽しんでほしい」ということを意識して作られたそうです。
工芸品のような美しさの革靴から生まれた作品
ラコタハウス丸の内店 × 岩崎貴宏
続いてご紹介するのは、ラコタハウス丸の内店に展示されている、岩崎貴宏さんの作品。岩崎さんは2017年第57回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館代表でもあり、日本を代表する現代アーティストの1人。
岩崎さんは日頃、タオルや歯ブラシなど、身の回りの日用品を分解して新たなものに作り替えるという作品を生み出しています。
今回作品の展示場所となるラコタハウスは、アメリカの最高峰の革靴ブランドオールデンを取り扱うショップ。日頃革靴は履かないという岩崎さんは、革靴を分解して作品を作りたいと考え、ラコタハウスからオールデンの革靴を提供してもらったと言います。そこで初めてオールデンの革靴を手に取った岩崎さんは、その工芸品のような美しさに感動し、「この美しい革靴を解体するのはただの破壊でしかない」と感じたんだそう。そこで、革靴をよりおもしろく見せる作品作りにシフトしたとのこと。
そして完成した作品がこちら。
「こんなに美しいものが本当に人の手で作られているのか」と革靴に対して感動した時、眠っている間に小人が靴を作ってくれるグリム童話「小人の靴屋」を思い出した岩崎さん。それを現代的に解釈して、工事現場で靴が組み立てられている様子が作品となっています。このオレンジ色の工事現場の様子は、靴の中のオレンジ色の靴下の糸を引き出して作り上げているというのも驚きです。
もう1作品は、シューズブラシを素材とした作品。こちらもシューズブラシの毛から、クレーンを作り出しています。非常に繊細な作品で、写真に撮るのは難しいので、ぜひ実際に見ていただきたい! 細やかな作りにきっと驚くはずです。
蚕の習性を利用して古布が作品に生まれ変わる
Allbirds 丸の内 × 遠藤 薫
続いては、Allbirds 丸の内に展示されている、遠藤薫さんの作品をご紹介。Allbirdsはサステナブルなものづくりを行うシューズブランド。
店内に展示されている大きな布の作品は、青森県で採集した古布。大きな穴が開いていますが、近づいてよく見ると、透き通るような薄さの布で穴が塞がれていることがわかります。これは蚕が糸を吐く習性を利用して不織布を作るアジアの伝統的な技法を用いて、布を修復しているんです。そんな技法があるなんて、全く知らなかった!
穴が開いて捨てられるしかなかった布に、遠藤さんが蚕を利用して新たな命を吹き込み作品とする、という過程は、展示場所であるAllbirdsのサステナブルなものづくりとも繋がっているように感じます。
店内には、制作風景を記録したビデオも流れていて、これを見るとどんなふうに蚕が布を修復していくのかがよくわかります。ただ、しっかりと蚕が映っているので、虫が苦手な人は要注意かもしれません!
まだまだ見どころだらけのウィンドウギャラリー
ここまでいくつか作品をご紹介してきましたが、有楽町ウィンドウギャラリーの参加店舗は全部で8店舗。まだまだ魅力的な作品がたくさんあるんです。
HIGASHIYA man丸の内 × 髙山 瑞
蒸したてのお饅頭などを販売するHIGASHIYA man丸の内では、髙山瑞さんの作品を展示。ショーウィンドウに展示されている《くう》という作品は般若心経を絵文字で表した“絵心経”のうち仏教の思想である「空」を、餅を「食う」姿として描かれた文字を引用したもの。
餅を食べる人の様子のかわいさもさることながら、滑らかな木の質感としっかりとした線の質感が対照的で、つい触りたくなるような魅力を感じました。髙山さんは余白と線を主題にしており、木=余白を彫ることで影が落ちて線が生まれる、と考えているそうです。
DEAN&DELUCA カフェ丸の内 × アレックス・ダッジ
DEAN&DELUCA カフェ丸の内では、アレックス・ダッジさんの作品を展示しています。DEAN&DELUCAはニューヨーク発祥、アレックス・ダッジさんもニューヨークを拠点に活動しているという繋がりもあります。
展示されている作品は、ニューヨーク・タイムズをモチーフにしたもの。2016年の大統領選挙でトランプ氏が当選した際、ニュースメディアの不確実性にショックを受け、メディアリテラシーを問うためにニューヨーク・タイムズをモチーフとした作品を生み出したそう。トランプ氏が再選を果たした現在、アレックス・ダッジさんは再びニューヨーク・タイムズをモチーフとした作品を作り出し、それが展示されています。
メディアリテラシーを問う、という深いテーマがありながらも、作品のビジュアルにはポップな要素もあり、まずはいろんな人が興味を持ちやすいような作品に感じました。展示場所のDEAN&DELUCAのカップがモチーフに含まれている作品もあります。
Paraboot丸の内店 × 守山友一朗
Paraboot丸の内店で展示されているのは、守山友一朗さんの作品。ウィンドウに飾られているのは原寸大の油絵を印刷したターポリン。どちらもフランスの窓を描いた風景となっています。あたたかな雰囲気の絵画は、これからの暖かくなる季節にもしっくりきます。
店内には、ブロンズ像のある室内画4点を展示。どれもお店の雰囲気と調和していて、もともとそこにあったかのよう。
NUMBER SUGAR 丸の内店 × 山本万菜
NUMBER SUGAR 丸の内店では、山本万菜さんの作品を展示。山本さんは、NUMBER SUGARのパッケージのアートワークも手がけています。これまでの有楽町ウィンドウギャラリーでもNUMBER SUGARに作品を展示しており、アクリルの平面作品を出展してきましたが、今回展示されているのは陶板を使ったレリーフ作品。山本さんは、「NUMBER SUGARのなかでも丸の内店は、通りから店内に入る光がきれいで、お気に入りの店舗です。今回は光による陰影の表情を活かしたいと思い、陶板レリーフの作品にしました」と話します。
また、陶器を使用しているので、釉薬の混ざり合う表情が、キャラメルのとろけるような食感とも繋がる、と話す山本さん。
TexturA × 玉山拓郎
今回は鑑賞できませんでしたが、中華×スペイン料理のレストランTexturAでは玉山拓郎さんの作品を展示しています。TexturAと玉山拓郎さんのコラボレーションは今回で4回目です。
鑑賞には店内の飲食利用が必要となるとのことです。
これから暖かくなるにつれ、街を散歩したくなる季節。「有楽町ウィンドウギャラリー」は、街歩きをより楽しく彩ってくれるはずです!
有楽町ウィンドウギャラリー2025
会期:2025年2月28日(金)~3月23日(日)
会場:丸の内仲通り付近の商業店舗8軒
入場料:無料 ※但し「TexturA」での作品鑑賞には店内飲食のご利用が必要です。
文 / オシミリン(LoveWalker編集部)
大阪生まれ。
趣味は読書と写真を撮ること、おいしいものを食べておいしいお酒を飲むこと。
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