エリアLOVEWalker総編集長・玉置泰紀「大阪・関西万博2025をブラタマキ」 第3回
Perfumeのステージを超技術でリアルに体感できる! 「大阪・関西万博」NTTパビリオンで時空を旅する経験をしてしまった
2025年05月16日 07時00分更新
「時空を旅する」がNTTパビリオンのテーマ
2025年大阪・関西万博を筆者が歩く連載の第3回。筆者も大ファンのPerfumeのスペシャルなライブも楽しめる、NTTパビリオンに行ってみた。
パビリオンのテーマは「PARALLEL TRAVEL(パラレルトラベル)」。時空を超えたコミュニケーション体験を提供する「時空を旅するパビリオン」を意味している。
全体は3つのゾーンで構成され、およそ25分間の体験を通じてコミュニケーションの歴史と未来を体感できる。
次世代通信基盤「IOWN」を活用し、離れた場所の空間をリアルタイムで繋ぎ、相互の存在感を共有する未来のコミュニケーションを、実際のPerfumeのライブで実現している。
核になる技術であるIOWN、つまり「Innovative Optical and Wireless Network(革新的光・無線ネットワーク)」については、NTTが2019年5月に発表した次世代の通信インフラ構想。筆者は立ち上げのころから興味を持って発表会に通っていたので、興味津々でパビリオンを体験したが、リアリティの精度にビックリした。
「時空を旅するパビリオン」とはなんだろうか。体験テーマ「PARALLEL TRAVEL –パラレル トラベル– 」を形にしたもので、次世代情報通信基盤「IOWN」による空間伝送技術で、離れた場所と空間そのものを繋ぐ。
距離を超えて場を共有し、互いに存在を感じあう。そんなコミュニケーションの未来を、展示体験として構成する……という展示のパビリオンになっている。
NTTは100年以上の間、離れた誰かとつながりたい、大切な気持ちを伝えたい、そんな想いをテクノロジーの進化とともにつないできた。
そんなNTTが2025年の万博で届けるのは、2030年に社会実装をめざすIOWNを用い、映像や音声だけではなく、離れた空間そのものや、離れた場所にいる人やモノの感覚を共有する体験だ。
NTTグループがもつ最先端のR&D(Research & Development=研究開発)技術をフル活用し、距離という物理的なもの、離れているという心理的なカベを超えた未来の体験や通信の可能性を見せていく。
NTTパビリオンは、IOWNが支える便利で豊かな未来を体感させ、30年後50年後の未来を担う子どもたちがワクワクする体験を提供する。Telecommunicationの、その先へ。夢見る未来社会を体感できるパビリオンだ。
コミュニケーションの歴史を振り返る「ZONE1」
コミュニケーションの進化には、超えられない隔たりがある。テクノロジーの向こう側にある、感情や感覚とは何だろうか。「ZONE1」ではそれを来場者に問いかけてくる。
手紙、電報、電話からインターネットにいたるまで、通信技術の発達により、私たちは距離を超えてさまざまな人とコミュニケーションすることができるようになった。けれども、まだ、つながりきらないものがある。
ことばにならない気持ち。映像や音だけでは伝わらない感覚。いっしょにいるだけで感じる、気配や空気。これまでのテクノロジーが捉えきれなかったものをもっと大切にしたいという、IOWN時代のコミュニケーションを表現するゾーンだ。
未来のコミュニケーションを体感する「ZONE2」
もしも、隔たりを超えられるとしたら。時間と空間がひとつになった時、そこには新しい感覚が生まれていく。2025年のNTTパビリオンと1970年の電気通信館、ふたつの“万博会場”の時間と空間を行き来するIOWNを使った世界初のパフォーマンスを見せるのが「ZONE2」だ。
スペシャルパフォーマーにPerfumeを迎え、2025年4月に夢洲と万博記念公園をつないで行われたライブパフォーマンスを完全再現。3D点群スキャン、3Dカメラ、振動伝送、空間同期技術。さまざまなテクノロジーを駆使することで、時空の隔たりを超えて「私たち」がひとつになる。IOWNによる、未来のコミュニケーション体験だ。
技術的には、1970年大阪万博「電気通信館」跡地の特設ステージのまわりに、3台のLiDARセンサと1台の光学カメラを組み合わせた独自システムを7セット配置。Perfumeの動きを3D点群データとして計測し、リアルタイムに夢洲会場へと伝送している。
LiDAR(Light Detection and Ranging)とは、現実世界の空間を計測・把握するためのセンサー技術。レーザー光により「点群データ」と呼ばれる3次元の測量データを取得することで、離れた場所にある物体の形状や距離を高精度に計測することが可能。
夢洲側ではそれらを元に、視点を自在に変えながら3次元LEDビジョンに立体映像として描き出した。リアルタイム3D点群データを、3D映像として表出するのは世界初の試み。
Perfume本人が加速度センサーを装着し、位置トラッキング用センサーを合わせた特殊なシステムにより、3人のパフォーマンスで発生する足元の振動データを位置情報とともに計測する。
夢洲側では128個の振動子を床下に埋め込み、離れた場所で行われたパフォーマンスを床面全体の振動を通じて臨場感たっぷりに具現化した。
演出に関わる膨大なデータは、NTTが万博会場全体に整備したフォトニクス(光)ベースのネットワーク環境(IOWN-APN)の高速大容量・低遅延性を活かして、万博記念公園から夢洲のNTTパビリオンへと伝送。まるでPerfumeが隣にいるように感じる未来のエンターテインメントを空間会場全体で実現した。
6年前、2019年から何度か経験したIOWNだが、今回のは桁の違うリアリティだ。パビリオンで観られるのは4月のパフォーマンスのアーカイブだが、これがリアルタイムで行われたということに驚く。3D眼鏡での映像も極めてクリアで、何といっても、Perfumeの3人が踊る際に生じる振動がリアルにパビリオンの僕たちにも伝わる。
IOWNによって、一つの空間で起きている事象が、別空間に共有されるというのは、デジタルコピーとはまた違う世界だ。
リアルとバーチャルが融合する未来社会「ZONE3」
自分の分身=Another Meを作って、新しい「私たち」の可能性と出会うゾーンが「ZONE3」。IOWNの時代は、自分という存在さえも、ひとつの可能性に縛られるものではない。
デジタルの世界であらゆる制約から解き放たれ、それぞれが新しい「私」と出会う。そして、新しい「私たち」が出会う。その先には、世界のまだ見ぬ可能性が広がっていく。言葉や文化の違いをこえて、 新しい「私たち」が、互いに響き合い高め合う。
このZONEでは、来場者自身のデータがスキャンされ、パビリオンの仕掛けの中に取り込まれる。これは実に面白い。今日この日の実感は、IOWNが導く未来社会の当たり前になっていくはずだ。
パビリオンの建築自体にも注目
コンセプトは「感情をまとう建築」。かろやかに、ゆるやかに浮遊するような外見のパビリオンは、公園のように開かれ、緑、光、空、来館者、散策者、多様な事象が重なる。
糸のような構造体は音を放ち、風によってゆらめく布は、日影をつくり人々をやさしく包み込む。それらは感動や熱狂と呼応して振動し、パビリオン全体が感情をもった生命体のようにうごめく。
人の居方も、自然のうつろいも、感情の機微も、デジタルのふるまいも、多様でありひとつである。感情を纏(まと)う多種同在の建築だ。
NTTパビリオンの飯村栄彦副館長に話を聞いた

熱く語る飯村栄彦副館長
「2025年大阪・関西万博の私たちのパビリオン『PARALLEL TRAVEL』について、ご紹介させてください。ちょっとワクワクするような、未来のコミュニケーションの旅を一緒に体験していただける場所なんですよ。私たちのパビリオンは、3つのゾーンでできていて、全部で25分くらいの体験になります。テーマは『時空を旅する』です」
「NTTはコミュニケーションの会社ですから、未来のコミュニケーションがどんなふうになるのか、みなさんに感じて、考えて、楽しんでもらいたいのです。特に、未来を担う子どもたちに、『こんな世界、面白そう!』って思ってもらえたらうれしいですね」
「まず、ZONE1では、コミュニケーションの歴史をちょっと振り返ってみます。昔の手紙や電報、黒電話から、スマートフォンまで、テクノロジーと一緒にどう進化してきたか、映像やデバイスを通じて見ていただくんです」
「例えば、最近だとZoomやTeamsみたいな2Dのビデオ通話が発展しましたよね。でも、やっぱり『一緒にいたい』『直接会いたい』っていう気持ちって、画面越しだとどうしても物足りない。そんなリアルなコミュニケーションの価値を、みなさんに改めて感じてもらいたいと思います」
「そして、メインのZONE2。ここでは、NTTが誇る次世代の技術『IOWN』を使って、未来のコミュニケーションを体験してもらいます。IOWNって、聞き慣れないかもしれませんね。簡単に言うと、光の技術で全部をつなぐ技術の事を言います」
「デバイスも、空間も、全部。離れた場所にいる人や空間を、リアルタイムで3Dでまるごと転送する、壮大な技術なんです。 実は、2025年4月2日に、万博会場の夢洲と、20キロ離れた吹田の万博公園──そう、1970年の万博で電気通信館があった場所です──をIOWNでつないで、世界初の実証実験をやりました」
「Perfumeのみなさんにご協力いただいて、吹田にいるPerfumeの空間を、振動も含めて夢洲にそっくりそのまま転送。これ、本当にすごいんですよ! その時のアーカイブデータを使って、ゾーン2でみなさんに同じ体験をしてもらいます」
「例えば、私がここでジャンプすると、離れた場所にいる人にもその振動が伝わる。触覚まで共有できるから、『あ、そばにいる!』みたいな感覚が味わえるのです。Zoomじゃ絶対にできない、立体的な『一緒にいる』感覚。これを、数十年前の1970年万博で『ワイヤレステレホン』を発表したみたいに、未来の当たり前にしたいんです」
「あの時は、電話と受話器が離れてるなんて誰も想像してなかったけど、30年後には携帯電話が普通になりましたよね。IOWNも、数十年のスパンで、そんな未来を作っていきたいのです」
「最後のZONE3は、リアルとバーチャルが融合する未来社会を、子どもたちを中心に体験してもらいます。みなさんをスキャンして、バーチャル空間にアバターとして登場させます。そしたら、突然歌い出したり、踊り出したり。そんな遊び心たっぷりの未来を想像しながら、『こんなコミュニケーションの形、面白いな』って感じてほしいと思います」
「このパビリオンは、ただの技術展示ではありません。1970年の万博でNTTの先輩たちが『未来の電話』を夢見て、それが今のスマホにつながったように、私たちも未来の種をまいているのです」
「IOWNで、離れた場所でも『そばにいる』感覚を届けたい。子どもたちには、この体験を通じて、『自分たちの未来って、こうやって作れるんだ!』って夢を持ってほしい。いやあ、話してるとほんとワクワクしますね。せっかくですから、みなさん、ぜひパビリオンに来て、この『時空の旅』を体感してください。絶対に『おおっ!』って感動します。未来のコミュニケーション、一緒に楽しみましょう!」
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