真夏の果実・ブルーベリー、「甘味と酸味のバランスがいい」埼玉県・美里町が町を上げて取り組むブルーベリーの生産&収穫に密着!

2025年07月11日 10時00分更新

採れたてのティフブルー種。これより摘み取り時季の早い品種・ウェイマウスも一部栽培している

 埼玉県美里町が町を挙げて生産普及に取り組む真夏の果実、ブルーベリー。2024年の夏、収穫期真っ盛りのある日に、陽射しのもとでたわわに実ったブルーベリーを摘む生産者・卜部敦夫さんを訪ねました。

■自慢の品種はティフブルーとフェスティバル

青く瑞々しいブルーベリー

 甘味とほのかな酸味、果汁滴るみずみずしさが魅力のブルーベリー。美里町では1999年に「観光果樹園100町歩構想」を策定し、その栽培を肝いり施策として打ち出しました。“おいしくて安心安全な地域自慢の果物を作ろう!”というスローガンのもと、その意気込みに賛同した有志農家によって栽培をスタート。卜部さんもそのひとりです。

 収穫最盛期は7~8月。朝早く畑を訪ねると、卜部さんが摘み取ったばかりのふっくらと熟した実を見せてくれました。「この品種はラビットアイ種の中のティフブルー。甘味と酸味のバランスがいいんです。名前の通り、果実がウサギの目のような赤から青に変わるんですよ」

 ブルーベリーにかわいい名前が付いているとは…。聞けば、ブルーベリーの品種は約300種。その中から気候や土壌に合うものを選び育てているそうです。「うちで栽培しているのはティフブルーのほかにフェスティバル。青みの強いのが特徴です」

■安心安全の無農薬栽培、草刈りも手作業で

収穫期は、暑さを避けて毎朝5時から摘み取り作業をする

 卜部さんの畑は広さ約650坪。2004年に、JAの助けを借りつつ小さな苗を植樹し、定年退職後、本格的にブルーベリー栽培を開始。今では250本が見事に育っています。美里町はかつて養蚕が盛んだった地域で、この畑はもともと桑畑だったそうです。「苗が実をつけるようになるまで5年かかるんですよ。スタートしたちょうど5年後の2009年の出荷量は174㎏でしたが、徐々に増えて、10年後には最大500㎏までになりました」

250本の木が植えられた畑では摘み取り体験も実施。地元の家族連れが楽しむ

 実がなるまで5年…。おいしいブルーベリーは一朝一夕にはできないことがわかります。栽培時の苦労も話してくれました。「実つきをよくするために、アルカリ性だった土壌を改良剤で酸性にします。害虫や病気にやられないよう草刈りも欠かせません」

 美里町のブルーベリーは無農薬栽培。薬に頼らずに健康な果樹を守るため、地道な手作業を日々繰り返します。前述した土壌検査も毎年実施。土壌がアルカリ性になると葉の色が黄色くなり実つきも悪くなるので、様子を見ながら、その都度土壌改良をするそうです。

直径5㎝を超えた古い枝を剪定。葉が黄色に変色したら、土壌改良剤で土を酸性にする作業も行う

■青くて柔らかい実を丁寧に手摘みする

ブルーベリー部会の規定では直径が13㎜以上の粒がA級、それ以下はB級。小さいものは加工品用に出荷する

 そうして迎えた収穫期。1日に10㎏ほどを、ひと粒ずつすべて手摘みして出荷するといいます。「どうぞ摘んでみてください」卜部さんの言葉に甘えて、取材陣もトライしてみました。「こつはまず色を見ること。青くて、かつ柔らかく、茎からポロッと落ちるくらいが摘み取るのにいいタイミング。そういう実はとても甘いですよ」

 そっと手を伸ばして、口に含んでみると…なるほど、本当に甘い! このタイミングを逃すとそのまま地面に落ち、スズメやムクドリに食べられてしまうので、逃すわけにはいかないのです。

 もうひとつ、ブルーベリーは追熟しない果物であるということも卜部さんに教わりました。「甘いのは木上で完熟した実だけ。だから私は完熟したものだけを出荷しています」

 摘み取ってから私たち消費者が口にするまでの時間を見越して、早摘みして出荷する人もいるそうですが、早摘みした酸っぱいものを家で寝かせても甘くなることはない…。店でブルーベリーを購入する時も、完熟したものを選ぶようにするといいですね。「熟した実は買ったその日のうちに食べてほしい。食べられない分は冷凍がおすすめです」

 凍らせた実のシャリシャリした食感とひんやり感を一緒に味わうのも、夏ならではです。

 そうして夏の間、朝の5時から休み返上で収穫します。その後、ひと段落かと思えば、さにあらず。すぐに枝を剪定して、来年の準備に取りかかります。「主幹が5㎝を超えたらカットして、脇芽が出るのを促し、横方向に誘導します。古くなった枝は実がつきにくく、ついても小さくなっちゃうんですよ」

 A級の実は直径13㎜以上。規定に沿うものを出荷するための隠れた努力は尽きません。根が地中10㎝ほどしか伸びず、ゲリラ豪雨や台風、風で倒れやすく、雹(ひょう)にも弱い…。繊細な性質を見極めて、その都度対応するのも仕事です。

■地元の直売所で販売、ソースやジャムも人気

ジャム(右)とソース(左)も直売所に出荷

 卜部さんのブルーベリーは、名前入りで美里万葉の里直売所に並びます。完熟で甘いことを知っているファンは多く、その日のうちに完売するそう。直売所では例年7月に「ブルーベリー祭り」も開催されます。卜部さんいわく「健康にもいい。私は毎日ブルーベリーを食べて、アントシアニンのおかげで視力も維持できているのかもしれないと思っています」

(取材にご協力いただいた生産者さん)
卜部敦夫さん(73歳)

 JA埼玉ひびきのブルーベリー部会メンバー。1999〜2003年度に美里町が打ち出した「観光果樹園100町歩構想」に賛同し、会社勤めの後、定年を機に栽培をスタート。加工品の開発にも尽力し、ジャムやジュースのカロリー計算まで行っている。

埼玉県の農業や旬の農産物をJAグループさいたま情報誌「みらの」でチェック!

 7月4日より配布/公開中の「みらの」No.86では、甘さと酸味のバランスが好評! 埼玉県美里町のブルーベリーを特集。栽培や収穫に密着したほか、フレッシュ果実を使ったレアチーズケーキやマフィンのレシピも紹介。

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