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圧巻の西洋建築を誇る東京ステーションホテル その100年の歴史を守り100年先を見据える丸の内びと―― 八木千登世さん

今でも残る「日本オリジナルの西洋建築」を後世に残していくために

 意外なことに宿泊者は東京の人が多く、「毎日近くを通っているけれどホテルの中に入ったことがない」ということで利用する方も多いのだそう。ホテルの長い廊下には丸の内や鉄道の歴史、ホテルの歴史などにまつわるアートワークが100点以上展示されていて、皆さん美術館のように歴史をたどりながらのんびり過ごしていくのだという。

廊下の長さが丸の内駅舎の中にあるホテルだということを思い出させる

八木「リピートしてくださるお客さまも多いですし、コロナ禍後はインバウンドのお客様も増えています。この建物は日本人が建てているので、例えばドーム名の装飾も日本の歴史や神話をモチーフにしたレリーフがあります。西洋建築ではありますが日本人によるオリジナルの様式も取り入れており、東洋文化への成り立ちと敬意の部分はわれわれが伝えていかないといけないと思いますし、もっと興味を持っていただきたいですね」

――日本人だけじゃなく、海外の方にもエピソードを伝えていきたいですよね。ドームのレリーフのクレマチスひとつをとっても印象的ですもんね。

八木「そうですね。お客様が入る正面ロビーの床とデスクのところに、真鍮でクレマチスをデザインしたものがはめ込まれています。花言葉が『旅人の喜び』で、駅にあるホテルにはふさわしいものだと思っています。私たちは東京ステーションホテルの歴史やデザイン、そこに隠された思いなど、ストーリーを届けていくことが第一のポリシーでもありますし、これからも伝え続けていきたいです」

ホテル館内からドーム内部のデザインがよく見える。ドームに沿って配置されたドームサイドの部屋もあり、抜群のロケーションだ

――これからの東京ステーションホテルの展望などがあれば教えてください。

八木「開業後110年が経ち、ここは『いつでも帰ってこられるホテル』『なくならない場所』なんですね。そういう意味でも、次の100年も日本人にとってなくてはならない建物だと思うのです。 私たちはその歴史の一端を担っているという自負、そして使命と責任を持ってこの先100年持続的であるために、サステナビリティをリードしていく必要があると思っています。

 その一つの取り組みとして、地球温暖化対策のカーボンオフセットがあります。どうしても削減できない二酸化炭素の排出を埋め合わせるための費用は、お客様に負担をしていただくことなく、全室ホテル負担にしています。 この取り組みをしているのは、日本のフルサービスホテルではおそらくここだけのはずです」

丸の内はアートと建築好きにはたまらない!

――八木さんは丸の内エリアをどのような場所だと考えておられますか?

八木「エリア全体が、ホテルのブランド価値を上げる重要な要素だと思います。 日本有数のビジネス街ですし、なんといっても江戸城のお堀の内側にある“丸の内”ですから。我々としてもこの地にあることが誇りでもあります。

 丸の内は東京の中心であるにもかかわらずこれだけ緑があって水があって、実に風光明媚だと思いますね。皇居のおかげなのか、気もいい感じがしますしね」

以前は都内の他のホテルに勤めていたという八木さん。だからこそ丸の内という立地に対する誇りが伝わってきた

――最後に、好きな場所を教えてください。

八木「三菱一号館美術館や東京ステーションギャラリー、静嘉堂文庫美術館ですね。アートが好きなので、美術館のホッピングができるのも良いんです。明治生命館も見学できますし、美術、建築が好きな方には最高な場所だと思います。丸の内仲通りの新東京ビルジングや日本工業倶楽部など、近代建築もそうですがその後の昭和のモダニズムの良さも多く残っていて、散策が楽しいですね」

八木千登世(やぎ・ちとせ)
●東京都出身。ハイアットホテルズ&リゾーツ、ペニンシュラホテルズなどラグジュアリーホテルのセールスやマーケティング部門の業務に従事。2019年より東京ステーションホテルのエグゼクティブアシスタントマネージャー マーケティング&セールスに着任、2025年より現職。

聞き手=玉置泰紀(たまき・やすのり)
●1961年生まれ、大阪府出身。株式会社角川アスキー総合研究所・丸の内LOVEWalker総編集長。国際大学GLOCOM客員研究員。一般社団法人メタ観光推進機構理事。京都市埋蔵文化財研究所理事。産経新聞~福武書店~角川4誌編集長。

■関連サイト
東京ステーションホテル
https://www.tokyostationhotel.jp/

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