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沼る人続出のレトロと新しさが同居する有楽町のホットスポット「東京交通会館」の丸の内びと

今回の丸の内びと/東京交通会館 営業二部 岩本匡史(写真左)、営業一部兼 企画部 相良文紀(写真右)

 丸の内LOVEWalker総編集長の玉置泰紀が、丸の内エリアのキーパーソンに会いに行き、現在のプロジェクトや取り組みなどのエピソードを聞く本連載。第28回は東京交通会館の岩本さんと相良さんにインタビューを敢行した。

闇市、すし屋横丁、回転レストラン…街とビルの歴史をたどる

 東京・有楽町のシンボルとして長年親しまれてきた「東京交通会館」。1965年に誕生して以来、半世紀以上にわたり街の玄関口として機能してきた。東京交通会館は地方のアンテナショップや飲食店が集まり、多くの人が行き交うにぎやかな場所。単なる商業ビルを超えて刻み続けてきた“有楽町の記憶”について話を伺った。

――東京交通会館ビルの歴史について伺いたいんですが、今年60周年で、1965年竣工なんですね。東京オリンピック(1964年開催)に間に合わせようということだったんでしょうか?

岩本「オリンピックありきではなくて、有楽町エリアの混沌とした感じを綺麗に整備していこうという流れがあり、ビルが建てられたと聞いていますね」

――ビル建設前の当時、有楽町駅前と東京交通会館の間には「すしや横丁」があったんですよね。とても人気があったそうですね!

岩本「東京交通会館ビルとすしや横丁は切っても切り離せないですね。戦後に闇市から発展したバラックの立ち飲み屋やすし屋が立ち並んでいたのですが、衛生面ですとか建物の関係もあり、この土地一帯が再開発されました。当時、現東京交通会館ビルの場所には東京都が管理する建物があり、トローリーバスや市電、地下鉄など交通行政の要でした。その後、三菱地所と共同でこの建物が建てられました」

1865年のすし屋横丁の様子。飲み屋やすし屋がギュウギュウにひしめき合っている(提供:東京交通会館)

提供:東京交通会館

提供:東京交通会館

――今や東京交通会館は有楽町のランドマークになっていると思うんですが、この建物ができた当時は相当のインパクトがあったんじゃないですか?

岩本「当時の都内の建物の中では、一番高さがあったと聞いています。『銀座スカイラウンジ』(回転レストラン)からは、皇居、東京駅、海まで一望できたそうです」

――東京交通会館といえば、回転レストランというイメージが強いです。

岩本「2020年まで回転していました。当時、回転レストランはいくつかあったと聞いていますが、有楽町にランドマーク的な一番高いビルを建てようということと、目をひく何かを作ろうということで回転レストランになったんだと思いますね」

1966年頃の様子。回転レストランの帽子のような「ハット」がよく目立つ(提供:東京交通会館)

アンテナショップをはじめ人々に親しまれる場所

 長年有楽町の顔として親しまれてきた東京交通会館だが、近年特に注目を集めているのが全国各地のアンテナショップだ。地方の魅力を一度に体感できるスポットとして観光客だけでなく周辺で働く人々からも支持され、館内でも高い人気を誇っている。

――アンテナショップも人気ですが、現在何店舗あるのでしょうか?

相良「13店舗あり、年々増えていますね。自治体が運営している店舗もありますし、民間のアンテナショップもあって様々です。特産品などを置いていただいていて、とてもご好評いただいています。一番最初のアンテナショップは秋田の『秋田ふるさと館』さんなんです。もう20年以上前のようですが、八重洲からこちらに移転されてきたことがきっかけで、そこから他県のショップも徐々に増えていきました」

――個人的には、沖縄のアンテナショップのイメージがあります。

相良「『わしたショップ』さんはもともと銀座にあって、2023年に移転されてきたので意外にも最近なんですよね。あとすごいのが『北海道どさんこプラザ』さんで、全国のアンテナショップの中で売り上げナンバーワンなんですよ。ソフトクリームだけで年間1億円の売り上げだそうです。北の端の北海道と南の端の沖縄が来てくださったということで、ビル的にもとてもうれしく思っています」

「北海道出身なので『北海道どさんこプラザ』のラインアップに感動しました」と言う相良さん

 竣工当時から残る螺旋階段のオーロラキャンドルや矢橋六郎氏によるモザイク壁画なども、訪れる人々の目を楽しませている。さらに、屋上庭園「有楽町コリーヌ」は地域の憩いの場として親しまれ、近年では「有楽ピアノ」が新たな名物に加わった。

――東京交通会館といえば、螺旋階段やオーロラキャンドル、モザイク壁画など建物自体のデザインも魅力ですよね。屋上庭園や有楽ピアノについても含め、当時と今の様子を教えていただけますか?

岩本「矢橋六郎さんのモザイク壁画は竣工当時から残っているもので、60年が経った今でも色あせていません。基本的には人が日常的に通る場所なので特別な手入れをしているわけではないのですが、それでも存在感がありますよね。螺旋階段を登るときに見上げる大きなオーロラキャンドルも印象的で、あの光景は本当に素敵だと思います」

モザイク壁画はとにかく圧巻だ

存在感を放つオーロラキャンドル。ぜひじっくり見ながら螺旋階段を歩いてほしい

――屋上庭園の「有楽町コリーヌ」も長年にわたって人々に親しまれていますよね。

岩本「高層ビルが少なかった時代から、開放的な空を楽しめる場所として人気でした。当時は周囲に高い建物がなく眺望が人気でしたが、今となっては高いビルが多くなって当時とは眺望も変化しています。それでも、空が広く見渡せる場所なんです。真夏は暑いんですが、それでも人気なんです。なので日よけを作るなど対策をしてご利用いただいていますね」

――そしてもうひとつ、交通会館の新しい取り組みとして注目されているのが「有楽町ピアノ」ですよね。設置のきっかけを教えてください。

相良「『有楽ピアノ~有楽町で奏でましょう♪~』は私が担当させていただいていて、2022年に設置しました。都心で自由にピアノが弾ける環境はなかなかなかったので、“一度やってみようか”というところから始まったんです。ピアノは東京都立総合芸術高校さんからお借りしていて、企画のポスターやサイネージ等のデザインも生徒さんによるものです。有楽ピアノは、生徒さんにとっては人前で演奏する機会を持つ、いわば発表の機会の場にもなっています。『有楽祭』(東京交通会館内の商店会、「東京交通会館目名店会」主催の毎年開催するイベントで、今年は9月22日~9月28日開催)では、過去にピアノコンサートも開催しました。
 ピアノの設置場所がエレベーターホールで、近隣にはテナントさんもいらっしゃるため、利用時間は14:00〜16:00に限定していますが、それでも“交通会館でグランドピアノが弾ける”という口コミが広がり、訪れてくださる方が増えました。」

――学校との企画というのも、また面白いですね!

相良「総合芸術高校さんとは、ピアノ以外にも連携しているんですよ。館内フラッグ、ポケットティッシュや卓上カレンダーのデザインをお願いしていて、毎年12月に館内に装飾したり、お客様へ配布しています。商業的な視点にとらわれない独自のデザインが好評です。ぜひクリスマスシーズンに注目していただきたいですね」

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