理想は追わない。変えられない現実を受け入れる――東日本大震災とロックダウン下の異国を生き抜いたJICA職員の「しなやかな生き方」
2026年03月23日 10時00分更新
26年3月8日の「国際女性デー」に合わせ、JICA(独立行政法人国際協力機構)内の有志が手掛ける「Hikari Project」 から、一冊の書籍が発行されました。タイトルは『逆境の先に 世界の女性10名が紡ぐ“ひかり”の物語』。本書には、世界各地でさまざまな人生の困難と向き合ってきた10人の女性が登場します。その一人がJICA職員の清水川佳菜さんです。
高校生時代の東日本大震災の経験、そして幼い子どもを連れての海外赴任で直面したコロナ禍のロックダウン生活……。自分の力ではどうにもできない状況に何度も直面してきた彼女に、葛藤の末に見つけた「しなやかな人生の歩み方」についてお話を伺いました。
支えられる側だった17歳の決意。東日本大震災の日に「託された」役割
――福島での震災経験が、現在の仕事を選んだ原点だそうですね。
清水川さん:高校2年生の時に東日本大震災で被災しましたが、当時は「守られる側」である自分の無力さを痛感する日々でした。目に見えるところで大人たちが必死に通学環境を整備し、世界各国から支援物資が届き、一つ上の先輩たちが大学生になってすぐボランティアとして社会を支える側になっているのに、自分はただ勉強の土台を整えてもらうことしかできなかったんです。
高校で避難生活を送っていた地域の方々が場所を譲ってまで、私たちが受験勉強に集中できる環境を作ってくれた。その時に「自分はしっかり勉強して大学に入り、いつか必ずこの恩を社会に還元しなければならない」と強く思いました。ボランティアや社会起業家に関するの学びを経てJICAを選んだのは、あの時すべてを支えてもらった自分に「託された役割」を果たしたいという想いがあったからです。
3歳児と半年間「一歩も外出禁止」。フィリピンでの極限生活で得た悟り
――その後、子連れでのフィリピン赴任中にコロナ禍のロックダウンを経験されたとか。
清水川さん:2021年に3歳の息子を連れて赴任しましたが、コロナ禍のフィリピンは非常に厳格で、息子は半年間、一歩も外に出ることができませんでした。当初は異常な状況に戸惑いましたが、ここでも震災の教訓が活きました。
「外に出してあげたい」という理想を追うと、できない自分を責めてしまいます。だから、「外に出られない」という抗えないルールはそのまま受け入れ、その代わり、オンラインで友達と繋がったり、家族の時間を密に取ったりと、「今、できること」に目を向けて割り切ることにしたんです。
「理想を追わない自分」を許し、しなやかに立ち上がる
――現在の人事部での仕事や、キャリアと育児の両立で大切にしていることは?
清水川さん:私が「理想を追わない」という選択をできたのは、個々の事情を理解し、寄り添ってくれる上司や組織の支えがあったからこそだと感じています。完璧を求めすぎず、今の自分にできる付加価値を模索し続けること。現在は人事部で、次世代育成や女性活躍推進を担当していますが、小さな仕組みの変化が組織全体の大きな動きに変わると信じて取り組んでいます。
――最後に、今壁にぶつかっている方へメッセージをお願いします。
清水川さん:震災もコロナ禍もそうでしたが、人生には自分の力ではどうにもできない逆境に直面することがあると思います。そんな時、私は「変えられないことは受け入れ、変えられることに全力を出す」よう心掛けています。本書に登場する女性たちの物語も、誰かの支えを力に変えてしなやかに立ち上がっています。この本が、今独りで闘っている誰かにとって、「一歩ずつ進めばいいんだ」と思える小さな光になればうれしいです。
書籍名:逆境の先に 世界の女性10名が紡ぐ“ひかり”の物語
内容:JICAのHikari Projectにより制作されたインタビュー集。ジュエリーアーティスト、シングルマザー、ジャーナリスト、町長など、逆境を乗り越えて生きる10人の女性たちの等身大な記録です。
「逆境の先に」は下記URLで公開されており、手軽に読むことができます。英語版も同時公開中。 https://www.jica.go.jp/information/blog/1579092_21942.html
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