県を代表する2001年発売のロングセラー、その味わいはどのようにして出来上がるのか
大分麦焼酎「西の星」誕生と製造の舞台裏──さわやかな味と香りの秘密を徹底解説
2024年07月05日 11時00分更新
大分麦焼酎「西の星」の誕生にせまる
「西の星」といえば、大分県の代表的な酒蔵・三和酒類の本格麦焼酎。
三和酒類は西の星だけでなく、本格麦焼酎「いいちこ」でもよく知られていますね。今回紹介する西の星は、原材料に特別な大麦「ニシノホシ」だけを使用している点が大きな特徴です。
すっきりとした香りと絹のようになめらかな喉越し、料理を引き立てる特有の味わいは、日頃から焼酎に親しんでいる方はもちろん、焼酎初心者にも評判です。
そんな西の星、どのようにしてつくられているのでしょう? 三和酒類に協力してもらい、誕生の舞台裏に迫ってみました。
産官連携で生まれた、焼酎製造に適した大麦品種・ニシノホシ
西の星の製造工程を語る上で、まず知っておきたいのが焼酎製造に適した大麦品種・ニシノホシです。
大分県は、醸造メーカーや醤油、味噌の製造工場が多く、地元産の穀類を県内で消費しやすいという風土を持っています。そうした背景もあって、大分県では1980年代から、メーカーと農家の協業体制が全国に先駆けて見られていました。
当時は焼酎ブームの只中でしたが、酒税法の改正により、焼酎にかかる酒税の改定が差し迫っていました。焼酎ブームが長く続いていくように、県内の焼酎メーカーが協業して、焼酎のさらなる高品質化を目指した技術開発の熱が高まっていくのも自然な流れでした。
こうして県内の酒造メーカーたちで組織された大分県本格焼酎技術研究会が発足。同研究会は、大分県農業技術センター(現・大分県農林水産技術センター)と大分県工業試験場(現・大分県産業化学技術センター)と連携し、焼酎製造に適した大麦品種の開発に向けた研究をスタートさせます。
とはいっても当時、大麦は飼料、主食(パンやパスタ)、ビール向けの作物であり、焼酎向けの品種が存在しないどころか、焼酎製造への適性を“どのように評価するべきか”という基準すら存在しませんでした。このエピソードだけでも、当時の現場に大きな苦労があったことがうかがえます。
やがて研究チームは日本酒に関する評価基準を応用して、焼酎醸造適正を判断するための評価方法を確立します。試行錯誤の中で発見したのは、ビールの醸造向けに栽培されていた二条大麦が、焼酎の醸造にも向いているという事実でした。
やがて研究の中で選定された「西海皮54号」が、後に「ニシノホシ」と命名されることとなります。1998年には、 大分県奨励品種として採用されたニシノホシ。品種としては葉色が濃く、精麦適正に極めて優れているという特徴を持っていて、当時「ニシノホシでつくった焼酎は、素人でもわかるほど格段に味が違う」として関係者間で話題になったそうです。
大分麦焼酎「西の星」の味わいに欠かせないニシノホシの誕生には、当時の関係者たちの情熱が大きく影響したことがわかりますね。
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