第6回
帝国ホテル 東京 オールドインペリアルバー
「意見が食い違う上司とどう付き合う?」に対するバーテンダーの答えに感嘆 流石イイこと言う!
2024年12月05日 12時00分更新
たくさんの人が訪れ、さまざまな悩み相談に答えてきたであろう丸の内のバーテンダーの方に、あなたに代わって相談を投げかける本連載「人生の達人はBARにいる」。
今回は、日本を代表するホテルである帝国ホテル 東京の「オールドインペリアルバー」を訪れました。近代建築の巨匠であるフランク・ロイド・ライトの設計による帝国ホテル2代目本館(通称「ライト館」)の面影を現在に伝える歴史を感じるバーで、チーフバーテンダーとして働く西脇司さんにお話を伺っていきます。
合わないと感じる上司も、目指すゴールは同じはず
今回のお悩みはこちら。
考え方や仕事の進め方が合わない上司がいます。仕事上の付き合いなので関わりを断つことはできないのですが、どうしたらストレスなく仕事を進められるでしょうか?
──上司との付き合い方は、働く上で問題になることもありますよね。
西脇さん「そうですね、私にも上司がいるので、答えにくい部分もありますが…(笑)
どうしても合わない上司というのはいると思いますが、そういう上司であっても同じ職場にいる以上、仕事の最終的な目標やゴールは近いところにあるのではないかと思います。例えば私のようなバーテンダーであれば、『お客様に楽しんでいただきたい』というのはみんなが共通して持っている想いです。上司と合わないというのは、そういったゴールに向かうまでの過程の違いが大きいのではないかと思います」
──なるほど、目指しているものは同じなんだ、という意識があると関係も良好に保ちやすいかもしれません。
西脇さん「はい、考え方ややり方の違う人と出会ったときは、自分の“引き出し”を増やしてくれる人だと考えるといいかもしれません。
自分の中に強い信念を持っていれば、考え方の合わない人と出会ったときに“自分の中の選択肢を増やしてくれる出会い”だと、柔軟性を持ってポジティブに捉えられます。自分の中の“引き出し”を増やせば、違う場面で役に立ってくることもあるかもしれません」
──合わない上司の存在も、自分にとってプラスに捉えていくということですね。実際に合わない上司と関わる時にどうすべきか、というコツのようなものはありますか?
西脇さん「やはり重要なのはコミュニケーションだと思います。日頃から一歩踏み込んだコミュニケーションをとることで、指導を受けた時にもその指導をしっかりと受け止められるようになると思います。合わないからと言って完全に拒絶してしまうのではなく、まずは挨拶から始めてコミュニケーションをしっかりとっていくことが大事だと考えます。また、指導される側だけでなく指導する側になった時にも、普段から後輩とコミュニケーションをとっていれば適切な指導がしやすいと思います。
私自身、日頃の挨拶はとても大事にしていて、挨拶と一緒に『元気ですか』『久しぶりですね』といった言葉を少し加えるだけで、ちょっとした会話が広がっていきます。帝国ホテルには多くの従業員がいますが、こうした挨拶で顔を覚えてもらうことで、何か困ったことがあった時には部署が違っても助けてもらえる、ということも多いです。自分の働きやすい環境を作るためにも、こういったコミュニケーションは欠かせないと思います」
「合わない上司がいても、自分の“引き出し”を増やしてくれる人と考えて」
100年の歴史を伝える「オールドインペリアルバー」
今回お悩み相談に答えていただいた西脇さんは、2007年に帝国ホテルに入社し、オールデイダイニング「パークサイドダイナー」に配属。そこで提供されるカクテルはホテル内のラウンジ「ランデブーラウンジ」に取りに行っていたそう。「そこでバーテンダーとして働くスタッフが、お客様と会話しながらかっこよく立ち振る舞う姿は衝撃的でした。その様子を見て、バーテンダーへの憧れを強めていきました」と話します。
その後、バーテンダーを本気で目指すきっかけにもなった「ランデブーラウンジ」への異動があり、バーテンダーとしてのキャリアが始まった西脇さん。その後も他のバーラウンジでの勤務や出向を経て、2024年10月、帝国ホテル 東京に戻り「オールドインペリアルバー」の一員となります。「帝国ホテルのバーテンダーにとって、メインバーである『オールドインペリアルバー』は目標としている特別な場所です。ここのバーテンダーとして帝国ホテルに戻ってこられたのは素直に嬉しかったです」と西脇さんは言います。
そんな西脇さんにとってバーテンダーという仕事の魅力は、カウンター越しだからこそさまざまなお客様とお話ができること、だと言います。
帝国ホテルといえば、日本を代表するホテルの1つ。1890年に日本の迎賓館としての役割を担って誕生し、来年2025年で開業135周年を迎えます。これまでにも数多くのVIPが訪れており、「オールドインペリアルバー」にもさまざまな立場のお客様が来られたそう。
「何世代にもわたって帝国ホテルを利用し、ホテルの伝統を守ってくださっているお客様もいらっしゃいます。私よりもお客様の方が利用されてきた時間がずっと長いこともよくありますし、お客様に育てていただいている、と感じることは多いです」と西脇さん。
なんといっても重厚感のある雰囲気が魅力の「オールドインペリアルバー」ですが、ここには1923年開業の帝国ホテルの2代目本館(通称「ライト館」)の面影が残っています。ライト館を設計したのは、20世紀を代表する建築家フランク・ロイド・ライト。客室数不足や老朽化の問題によって1967年に閉鎖されたライト館ですが、壁画のテラコッタなどは当時のまま「オールドインペリアルバー」に残されています。
歴史の重みを感じる雰囲気は、バーになれていない初心者にとっては敷居の高さも感じてしまいそう。ですが、西脇さんは「初めてご利用の方は、遠慮なくおっしゃっていただければ私たちも一歩踏み込んだ接遇がしやすいのでありがたいです。入り口のハードルは高いのかもしれませんが、あまり緊張せずご来店いただきたいと思います」と教えてくれました。
また、現在の帝国ホテル 東京の本館は2031年から建て替えが予定されています。建て替え後に、このバーがどのような姿になるかはまだわかりません。確実に現在の姿を楽しめる今のうちに訪れるのがオススメです。
芯を持った、変わらない美味しさのカクテル
今回も本連載恒例の、相談者にオススメのカクテルをお作りいただきました。オススメいただいたのは「マウントフジ」。
こちらの「マウントフジ」は、帝国ホテルにとって初のオリジナルカクテルとして1924年、今からちょうど100年前に誕生したカクテル。世界一周のクルーズ船が来日した際に帝国ホテルで開催されたウェルカムレセプションで提供されたそう。冠雪した日本のシンボル・富士山に赤い太陽が昇る瞬間をイメージして作られたといいます。
早速いただいてみると、卵白や生クリームが使用されているため、口当たりはやわらか。また、レモンジュースやパイナップルジュースの爽やかな甘い味わいで、飲みやすさもあります。ベースはジンでしっかりとアルコールの飲みごたえも感じられるバランスの良いカクテルです。100年前のレシピで作られたカクテルが今でもこんなに美味しくいただけるなんて、感動!
「100年間愛されるカクテルであるためには、変わらない味、変わらないレシピ、変わらない気持ち…しっかりと芯があることが欠かせないと思います。相談者の方のように仕事をするうえで何か悩まれた時、柔軟性は持ちつつも、自分の中にゆるぎない芯を持っていただけたら、という想いでこのカクテルをおすすめさせていただきました」と話す西脇さん。
歴史を感じる「オールドインペリアルバー」の空間のなかで、100年続く芯を持ったカクテル、ぜひ味わってみては。
次回もバーテンダーさんの名回答と、美味しいカクテルに期待です!
帝国ホテル 東京 オールドインペリアルバー
住所:東京都千代田区内幸町1-1-1 本館中2F
営業時間:11:30~24:00(L.O.23:30)
定休日:なし
電話番号:03-3539-8088
文 / オシミリン(LoveWalker編集部)
大阪生まれ。
趣味は読書と写真を撮ること、おいしいものを食べておいしいお酒を飲むこと。
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