エリアLOVEWalker総編集長・玉置泰紀のアート散歩 第33回

チームラボの常設アートミュージアムが京都市南区に誕生! 「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」2025年秋にオープン

チームラボ《Massless Amorphous Sculpture》
©チームラボ ※参考画像

 アートコレクティブ チームラボは、京都市が進める京都駅東南部エリアプロジェクトの一環として、京都市南区に没入型の常設アートミュージアム「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」を、2025年秋にオープン予定であることを発表した。

 このミュージアムは、これまでの常識的な物質の概念を超えた作品群に、身体ごと没入する体験を創り出すものとなる。

 「京都駅東南部エリアプロジェクト有限責任事業組合」は、アートコレクティブ チームラボが代表となり、京都・大阪を基盤とする複数の企業と共に、京都駅東南部エリアにおける市有地に、「新たな価値を生み出す創造・発信拠点」となる施設の設置・運営を行うプロジェクトを進めている。

 筆者は、東京都港区の麻布台ヒルズにある森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレスなど、様々なチームラボの施設や取り組みに向き合ってきた。

 日本を代表する観光地・京都への進出、しかも、京都駅東南部エリアでのミュージアム建設は、国内はもとより、急増している海外からの観光客も含め大きな一歩になると思う。

 「京都駅東南部エリア」は、京都の玄関口である京都駅の東南部に位置する。京都駅に近接し、京都芸大が移転する京都駅東部エリアに隣接する立地特性から、世界を視野に入れた新たな文化行政、文化交流を推進していくうえで、重要な地域となっている。

 京都市の資料によると、こうした立地を踏まえて、このエリアのまちづくりに「文化芸術」という新たな視点を取り入れることにより、「若者」を中心とした新たな人の流れを生み出し、このエリアの課題でもある人口減少や高齢化の進展に歯止めを掛けるとともに、このエリアと京都駅周辺地域の活性化の動きが連動することで、京都全体の活性化につなげていくことを考えているという。

 そのために、地域住民や地域団体はもちろん、NPO、企業、芸術家などと京都市が協働して、「文化芸術」と「若者」を基軸とした活性化を目的としているのだが、「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」は、その大きな一歩となる施設だ。

 「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」では、新たな作品や日本未公開作品も多数加わる。以下は一部の作品だが、今後もさらに多くの新しい作品群が発表されていく。

●Massless Amorphous Sculpture
 アートコレクティブ チームラボの資料より。

「この浮遊する巨大な彫刻は、泡の海から生まれ、質量の概念を超越し、地面に沈むこともなく、天井まで上がりきることもなく、空間の中ほどを漂う。この浮遊する彫刻の存在の輪郭は曖昧で、千切れて小さくなったり、くっついて大きくなったりする。人がこの彫刻に身体ごと入り込んでも存在は維持され、人々によって壊されても、自ら修復する。しかし、塊は、自ら修復できる範囲を超えて破壊された時、修復が追いつかず崩れていく。そして、人々が押したり、横にのけようとしても、この彫刻を動かすことができないし、人々が風をあおげば、彫刻は散り散りになってしまう。人間の物理的な行為では、この彫刻を動かすことすらできない。

 石ころや、これまで人間がつくってきたものは、物体であり、物体はそれ自体で安定的な構造をもつ。石ころは、外界から遮断され密封された箱に入れても存在し続ける。一方、海に生まれる渦は、閉じた箱に移すと一瞬で消えてしまう。つまり、渦は、それ自体で安定した自らの構造を保っていない。渦は、環境が生む流れの中にある存在であり、渦の外部から内部へ、そして内部から外部へと流れ続ける水によってつくられ、その流れが生んだ秩序を持つ構造によって渦は維持され続け、流れと共に変化する。そして、その存在の輪郭は曖昧で、渦と渦の外側の物質的な違いはない。

 物体ではなく、特別な環境を創ることで、その環境が生んだエネルギーの秩序によって存在を創る。そのエネルギーの秩序による存在を“HighOrderSculpture”と呼ぼう。それは、環境とは切り離せず、環境変化とともに変化する。これまでの物体による存在の常識を超越し、中空に存在を維持し、存在の輪郭が曖昧で、人がその存在の中に身体ごと入り込んでも存在が維持され、壊れても自らの存在を修復する。

 この空間には、物質は、ごく普通の石鹸と水と空気しか存在していない。泡は石鹸の泡である。

 空間を石鹸の泡で埋め尽くし、特異な環境を創り、空間にエネルギーの秩序を生み出す。そうすると、泡の海から巨大な塊が生まれ、浮き上がり、中空に定常する。」

チームラボ《Massless Amorphous Sculpture》
©チームラボ ※参考画像

●質量のない太陽と闇の太陽

 アートコレクティブ チームラボの資料より。

「私たちは、見ている世界を認識しているのではない。私たちは、認識している世界を見ている。

 無数の光の球体群。人々が光の球体に触れようとすると、強く輝き、周辺の球体も次々と呼応し連続していく。視野を広げてじっと見ていると、闇が凝固したかのような闇の塊の球体群も現れはじめる。

 しかし、これらの光と闇の球体群は存在しない。闇の球体群は、カメラにすら写らない。

 光の球体表面にガラスなどの物体は何もなく、この球体は光だけでできている。物質的な境界面はなく、球体と身体との境界の認識は曖昧である。しかし、この宇宙では、光は凝固せず、光だけで球体状の塊になることはない。つまり、この光の球体は存在しない。

 この球体は、物理世界には存在せず、認識世界に存在する彫刻「CognitiveSculpture/認識上の彫刻」。マテリアルは、光と環境、そして身体と認識。体験者自らの動的な身体と認識によって形作られ、体験者自身の認識世界に出現し、存在する彫刻。

 認識上存在する時、それは存在である。

 そして、球体はそれ自体では認識世界にすら存在できず、環境が生み出している。環境がつくる現象が、作品の存在である。

 存在とは何かを問う。」

チームラボ《質量のない太陽と闇の太陽》
©チームラボ ※参考画像

●Morphing Continuum
 アートコレクティブ チームラボの資料より。

「ひとつひとつの構成要素は時間的空間的に離れていても、それらに秩序構造が生まれると、構成要素が時空間を超越し、ひとつの存在が現れる。そして、表層的に形状や大きさが大きく変化したり、全ての構成要素の入れ替えがあったとしても、ひとつの存在は維持される。この時空間的存在は、全体の一部であり、全体から生まれ、全体に還元されていく。時空的存在群による生命的宇宙。

 空間に、存在が生まれる。存在は、塊となって地面に生まれ、地面から立ち上がる。また、存在は、空中に生まれ、質量の概念を超越し、空中に固定的に存在し続ける。これら存在の輪郭は曖昧で、存在を構成している輝く球は入れ替わっていく。人がこの存在に身体ごと入り込んでも存在は維持され、人々によって壊されても自ら修復する。そして、人々が押したり、横にのけようとしても、存在を動かすことができない。人間の物理的な行為では、この存在を動かすことすらできない。

 物体ではなく、特別な環境を創ることで、その環境が生んだエネルギーの秩序によって存在を創る。それらを“High Order Sculpture”と呼ぼう。それは、環境とは切り離せず、環境変化とともに変化する。これまでの物体による存在の常識を超越し、中空に存在を維持し、存在の輪郭が曖昧で、人がその存在の中に身体ごと入り込んでも存在が維持され、壊れても自らの存在を修復する。」

チームラボ《Morphing Continuum》
©チームラボ ※参考画像

●Traces of Life
 アートコレクティブ チームラボの資料より。

 「作品空間は人々と一体となって動き、人々の足下には痕跡が残り続ける。痕跡は一本の長い軌跡となり、作品世界に残り、大きな存在になっていく。

 この作品空間は、人々がいなければ空間だけが存在し、何もなく、何も描かれない。この作品世界は、人々の存在によって描かれはじめる。」

チームラボ《Traces of Life》
©チームラボ ※参考画像

●teamLab Biovortex Kyoto Teaser video / チームラボ バイオヴォルテックス 京都 ティザー動画

【チームラボ バイオヴォルテックス 京都】

住所:京都市南区
公式サイト:https://www.teamlab.art/jp/e/kyoto/
開業:2025年秋オープン予定

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