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東京駅から有楽町駅に架かる美しい煉瓦アーチ造りの「新永間市街線高架橋」は山手線と共に100年をつなぐ

2025年11月07日 12時00分更新

歴史的建造物として再利用されるアーチ橋と高架橋のリニューアル

 現在の東京高架橋は、単なる鉄道施設を超えた文化的遺産として再評価が進んでいます。JR東日本は耐震補強と同時に、煉瓦アーチの意匠を生かした空間活用を推進。高架下には飲食やアートギャラリー、ショップなどを整備し、歴史的構造物を現代の都市生活に溶け込ませています。

 東京駅の高架下では、丸の内側と八重洲側を結ぶ北通路の改良工事が2010年11月~2021年2月にかけて進められました。開業当時から残るレンガアーチ構造を活かしていた旧通路は幅6.7メートルと狭く、混雑や耐震性の課題がありました。そこで線路やホームを支える構造を鉄筋コンクリート造の高架橋に改良し、通路幅を12メートルに拡張。地下には商業施設や待合広場も整備されました。

 施工を請け負った大林組は工事桁を本設構造に転用する独自手法や、高流動性コンクリートフレッシュキープ工法を導入し、品質と効率を両立し、高架橋の構造を含む高架下通路のリニューアルが完了しました。

 更に2020年代以降は「日比谷OKUROJI」などの高架下再開発と連動し、アーチ下空間が“都市の裏側”から“街の表舞台”へと変貌しました。照明や設備もアーチ構造を損なわないよう慎重に設計され、歴史的価値と現代的快適性が両立しています。また、2029年頃の暫定開業、2031年度冬の全体完成を目指して工事が進められている「東京駅南部東西自由通路」では、東京駅南側で東西を貫通する通路の整備をはじめ、待合広場や駅ナカ商業施設の新設などが進められています。このように、東京駅周辺の高架橋は現在もなお変化を続けています。

有楽町駅前を行き交う人々とアーチ橋の夜景

100年前のレンガアーチ橋と現代の通勤電車、背後に建ち並ぶ超高層ビルが幻想的な夜景を創り出していた

山手線環状運転開始100周年を記念したラッピングトレインも運行されている。こちらはE231系に代わる前の更に旧型車両である205系を模したラッピングトレイン

東京駅の南側では東京駅南部東西自由通路の工事が進められており、古い高架が撤去されて崖のような光景が広がっていた

当初、新永間市街線高架橋として建設された際は、上下2線ずつの計4本の線路で敷設されたが、現在は上野東京ラインの線路2本と東海道新幹線の線路2本の合計8本もの線路が存在する

 以上で今回の建築ツアーは終了。2025年11月1日には山手線の環状運転開始から100年を迎えました。東京駅〜有楽町駅間を結ぶ東京高架橋は、文明開化の時代に芽吹いた近代化の象徴であり、いまもなお都市の鼓動を伝え続けています。赤煉瓦のアーチをくぐるたびに、人々は過去と現在、そして未来の東京をつなぐ時間の流れを感じ取ることができるのです。

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