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「アートでめぐる横浜18区」緑区編 木の「声」をきくー澄川喜一《そりのあるかたち》

2023年08月15日 10時00分更新

 皆さん、こんにちは!

 大規模改修工事のため長期休館中の横浜美術館。 休館中は、長い間、市民の皆さんに親しまれてきた、横浜美術館コレクション(所蔵作品)の魅力や休館中の活動、リニューアルに向けての取り組みなどをさまざまな切り口でご紹介します。

前回の記事はこちら
横浜美術館おしごと図鑑――vol.11 ミュージアムショップ&カフェ担当 普川由貴子

※過去の連載記事はこちら
アートで暮らしに彩りを。ヨコハマ・アート・ダイアリー

横浜美術館コレクション×18区

 さて、横浜美術館のコレクションの中には横浜市内18区と関連する作品があるのをご存じですか?横浜の風景が描かれた作品、横浜出身の作家や横浜を拠点に制作活動にはげんだ作家の作品などを所蔵しています。

 「横浜美術館コレクション×18区」では、これらの作品や作家についてご紹介します。

 今回は、緑区ゆかりの作家、澄川喜一(1931-2023年)《そりのあるかたち》についてのご紹介です。

澄川喜一《そりのあるかたち》2017(平成29)年
木(欅)/h210.0 × w62.0 × d38.5 cm
横浜美術館蔵

木の「声」をきくー澄川喜一《そりのあるかたち》

 すっと立ちあがる木の彫刻。木のもつ自然な形を切りとったかのような作品です。木にはそれぞれ個性があり、木の「声」に耳を傾け、対話しながら形を彫りだしていくと語る作家。「そりのあるかたち」シリーズは、澄川が木という素材に真正面から向き合い始めた1970年代以降、長きにわたって追求してきたテーマです。

 弧(こ)を描くなだらかな曲線は、山のすそ野のゆるやかなラインや日本刀の背と棟にみる反りと起(むく)り、または神社仏閣の張り出した屋根など、作家にとって、古くからの日本の風土や文化に通じるかたちなのだとか。この曲線は、東京スカイツリーをはじめ、澄川がデザイン監修を手がけた多くの公共造形物にも活かされています。

 JR鴨居駅近く、鶴見川にかかる鴨池橋(かもいけばし)もそのひとつ。遠くから眺めると堂々としなやかな曲線を描き、橋を渡ってみると、ゆったりとした心地よさに包まれます。欄干(らんかん)ひとつひとつのデザインにも目を向けてみてください。

鴨池橋 1991年(撮影2019年)

横浜美術館スタッフが18区津々浦々にアートをお届け!
「横浜[出前]美術館」―「アートでめぐる横浜の街−緑区編−」―

 横浜美術館は、休館中の間、学芸員やエデュケーター(教育普及担当)が美術館をとびだして、レクチャーや創作体験などを横浜市内18区にお届けします。その名も「横浜[出前]美術館」!

 第17弾は、緑区の横浜市緑区民文化センター みどりアートパークに、エデュケーターによるワークショップ「シュールなおばけをつくろう!」をお届け!その様子をレポートします。 また講座参加者の皆さんに「みんなに伝えたい!わたしの街のいいところ」をきいてみました。今まで知らなかった新たな魅力が見つかるかもしれません!

見たことのないおばけをつくってみよう!
講座名:「シュールなおばけをつくろう!」
開催日時:2023年5月20日(土) 13時30分~15時
開催場:横浜市緑区民文化センター みどりアートパーク
講師:横浜美術館エデュケーター
対象:小学生とその保護者
参加人数:19名

 会場となったのは、緑区にある横浜市緑区民文化センター みどりアートパーク。JR横浜線、東急田園都市線・こどもの国線「長津田駅」から徒歩4分という便利な立地にありながら、豊かな緑に囲まれた気持ちの良い環境です。コンサートなど多彩なイベントが開催される334名収容のホールをはじめ、リハーサル室、練習室、会議室なども完備し、誰でもが気軽に芸術に触れられる環境が整っています。今回のワークショップは、創作活動の発表の場としても利用される地下1階のギャラリーで開催しました。

 会場に入ると、テーブルの上にいろんな素材が用意されていました。

 植物の葉っぱや、スタッフが海岸で拾い集めた流木。文房具や工具など、横浜美術館の事務所から持ってきたモノも並んでいます。今日のテーマは、これらを使った「おばけづくり」。一体どう使うのでしょう?

 挑戦するのは「フロッタージュ」。凸凹のあるものの上に紙を置き、鉛筆などでこするように描くことで、凸凹の形状などを写し取る技法です。ある程度凸凹したものなら、自然素材からプラスチック雑貨、布類、ゴム手袋までいろんなモノが使えます。

 まずは、エデュケーターの森さんのお手本を見てみましょう。

 やり方がわかったら、自分のテーブルに戻って練習開始!

 コインや葉っぱの上に紙を置いて、鉛筆でこすってみます。上手に写し取れるかな?

 慣れてきたら、いよいよ本番です。いろんなモノを選んで、フロッタージュしてみましょう。

 スタッフが用意した材料は選び放題。あれこれ選んで、あれこれ試してみます。事前に「好きなモノをお持ちください」とお知らせしていたので、団扇などを持ってきてくれた方もいらっしゃいました。

 用意されたのは虫めがね型のフレーム。この中に、好きなモノをフロッタージュしてみましょう。

 写し取った絵柄は何に見えますか? 何に見えるか、どんな感じがするかを考えて、吹き出しの中に書いてみます。

 そして、いよいよ「おばけ」の登場です。色鉛筆でカラフルにフロッタージュしてもいいし、ペンで描き足してもいいし、シールを貼るのもOK。いろんな形のフレームが用意されているので、好きなものを選んで自由な発想でおばけをつくってみましょう。もちろん、フレームを使わず自分でオリジナルの「おばけ」を考えてみるのも大歓迎!

 いろんなおばけが、どんどん生まれます。

 保護者の方もぜひ挑戦してみてください・・・と声をかけるまでもなく、いつの間にかおとなの方が夢中になっているようです。

 いろんなおばけができたら、その中から「これがいちばん!」と思うお気に入りを選んで、保護者の方やきょうだいの作品と交換します。自分の手元に来たおばけに名前をつけたら、壁に貼ってみんなで鑑賞会です。あれこれ工夫した、いろんな名前の、いろんなおばけが並びました。

 最後はちょっぴりお勉強タイム。

 「フロッタージュ」はフランス語の「frotter(こする)」に由来し、ドイツの画家、マックス・エルンストがはじめた技法です。エルンストは「シュルレアリスム」という芸術運動を代表する作家のひとりです。シュルレアリスムの作家たちは、作品タイトルを他の人に委ねることがあったので、今回のワークショップでも同じことに挑戦しました。

 横浜美術館では、エルンストをはじめシュルレアリスムの作家たちの作品を所蔵しています。リニューアルオープン後に展示される機会があると思うので、ぜひみにきてくださいね!

 また、今回のワークショップで完成した作品の複製が、みどりアートパーク開館10周年を記念した利用者参加型アートプロジェクト「アニバーサリーツリー」に飾られています。

 ぜひみどりアートパーク屋外のショーケースをご覧ください。

※新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、ガイドラインを遵守した対策を講じた上で実施しています。

18区の魅力発見! 講座参加者の皆さんにきいた「みんなに伝えたい!わたしの街のいいところ」

 横浜のことを知っているのは、よく訪れたり、住んでいる方々!
 講座参加者の皆さんの声から緑区の魅力をご紹介します。

自然が豊かで、のんびりとした雰囲気の住みやすい街。

●横浜の中でも、自然が豊かな場所が多いと感じます(緑区、40代)
●大きな公園があり、自然豊かなイメージ(横浜市外在住、30代)
●首都圏なのに、里山が残る緑が豊かな「四季の森公園」がある(港北区在住、60代)
●地産地消の新鮮な農産物の直売所が市内で一番多いところ(中区在住、60代)
●緑区キャラクターのミドリンがかわいい(港北区在住、30代)
●子育て世帯に住みやすい街でのんびりとした空気があります(港北区在住、40代)
●ラーメン二郎の名店があり、遠くてもわざわざ足を運んでいます!(横浜市外在住、40代)

――みなさんもぜひ緑区を訪れてみてくださいね――

・中区編「撮るのも撮られるのもひと苦労ー下岡蓮杖(しもおかれんじょう)《三人の少年》」はこちら

・泉区編「「繭」でつむいだ「造形詩」ー由木礼《けものたちはみな去ってゆく》」はこちら

・港北区編「現実の中の幻想的な一瞬、光と影を描く作家の代表作ー山本貞《地の光景》」はこちら

・保土ケ谷区編「今につたわる今井川のほとりの小さな社―亀井竹二郎が見た明治初期の保土ヶ谷宿」はこちら

・港南区編「夫婦そろって、は初の快挙! 共に高め合い、それぞれ築いた絵画世界」はこちら

・南区編「波間に浮かぶタコとカニ。確かな技術が可能にした三代井上良斎の自由な作陶。井上良斎(三代)《波文象嵌壺(はもんぞうがんつぼ) 銘「海」》」はこちら

・旭区編「絵からどんな歌がきこえる? 岡本彌壽子(やすこ)《幻(捧げるうた)》」はこちら

・都筑区編「波しぶきにこめられた、荒ぶる海のエネルギー。クールべ《海岸の竜巻(エトルタ)》」はこちら

・金沢区編「カラリストの真骨頂、色の魔法使い。高間惣七《カトレアと二羽のインコ》」はこちら

・戸塚区「幕末のイギリス人写真家・フェリーチェ・ベアトがみた戸塚。―カラー写真?絵画?どちらも違う「手彩色」写真とは―」はこちら

・青葉区編「中島清之が愛した青葉区・恩田町」はこちら

・栄区編「ステンレスと伝統的な漆芸の融合。新たな漆芸の可能性を追求する作家・赤堀郁彦」はこちら

・西区編「細やかな点描で、幻想的な世界を描く。田中惟之《港の博覧会》」はこちら

・磯子区編「消しゴムスタンプで「オリジナルのエコバッグをつくろう」。」はこちら

・鶴見区編「埋め立てが進む前の生麦の姿を捉えた、石渡江逸《生麦の夕》。黄昏時の下町風景にみる人々の暮らし」はこちら

 

この記事は下記を元に再編集されました
https://yokohama-art-museum.note.jp/n/n19cdc366a136

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