日本酒と名水を体験 日本有数の酒蔵が集まる京都・伏見で

2023年11月07日 21時00分更新

文● LOVEWALKER
提供: 伏見酒造組合

 日本を代表する酒どころとして有名な「伏見」。京都駅から南へ約6㎞、京都駅から電車でわずか10~15分で、その情緒溢れる町並みや由緒ある酒蔵、趣ある歴史的建造物が点在する街に到着します。今回は、散歩しているだけでも楽しい伏見の町をめぐりながら、“伏見の酒”について学んだり、時に味わったり‥と、伏見の魅力を五感で感じることができました。伏見は酒造りに最適の条件を満たした地下水が沸き出る地。この記事では、酒どころ伏見を生み出した名水を体感できる名所と、長年続く技術と文化を受け継ぐ酒蔵の魅力に迫りたいと思います!

伏見の「歴史」と「水」の物語

城下町の面影が残る伏見の街並みを散策しよう!

 京都市南部に位置する伏見は、京都・大阪・奈良・近江の中継地にあたり、木津川・宇治川・桂川が合流する場所にあることで、昔から陸路・水路ともに交通の要衝として栄えてきた町です。平安時代には皇室や貴族の別荘が置かれた地として、安土・桃山時代には豊臣秀吉によって築城された伏見城の城下町として賑わいました。江戸時代には伏見港を中心に水運の拠点として発展。宿場町、港町として栄え、幕末には坂本龍馬をはじめとする志士が活躍した近代の夜明けの舞台にもなりました。

 それら時代の異なる建物や名所が地元の人々の力で維持され、風情ある街並みが守られています。

豊臣秀吉が伏見城築城の際につくった河川港「伏見みなと公園」

 またこの街はかつて「水運」でも栄えました。その面影を残す場所が、秀吉が築いた伏見港にある「伏見みなと公園」です。徳川家康が伏見城にて政権を運営し、伏見が京都と大坂を水運で結ぶようになり、伏見は京の南の玄関口としてさらに発展しました。その時代の面影を、当時伏見と大坂を結んでいた三十石船を復元した観光遊覧船「十石舟」に乗船しながら感じることができます。

十石舟は江戸時代に酒や旅客を運んだ舟を再現しています

 実際に十石舟に乗ってみました!弁天橋のたもとにある十石舟乗り場からスタートして、舟は宇治川派流の清冽な流れの中をゆっくり進んでいきます。水上から眺める伏見の町並みや、護岸を彩る美しい木々の緑に癒されながら進み、「伏見みなと広場」で一旦下船して周辺を散策。その後再び乗船して、元来たルートを戻り乗船した場所で舟を降ります。川沿いに連なる柳並木と風情ある酒蔵の白壁をのんびりと眺めながら、ベテラン船頭さんの伏見ガイドに耳を傾けているとまるで江戸時代にタイムスリップしたよう。日本酒の仕込み水として使われた地下水、そして酒やその原料となる米などを運び支えた水運。伏見と水の深い繋がりを改めて感じた約50分の「十石舟」体験でした。

春は桜、秋は紅葉のなか酒蔵と美しい街並みの港町伏見を楽しんで

■十石舟(じゅっこくぶね)
住所:京都市伏見区南兵町247
交通:京阪本線「中書島駅」から徒歩で5分
電話:075-623-1030
時間:10:00~16:00
休み:月曜
予約:公式サイトから要予約

 

伏見の日本酒と名水の深い関係

日本を代表する酒蔵が徒歩圏内に集まっています

 日本を代表する酒造りの町「伏見」には、2㎞四方に約20もの酒蔵が集まる酒どころです。どうしてここまで日本酒造りが盛んになったのでしょうか? ここでもキーワードとなるのはやはり「水」でした。一升の酒に、八升の水がいるといわれる酒造り。良質で豊富な水に恵まれることが、酒造地の最大の条件だといえます。この条件に見事なまでに合致しているのが「伏見」の大きな特徴なんです。

伏見にある酒蔵や寺社の敷地内では湧き水を汲むことができる場所もたくさん

 「伏見」はかつて「伏水」と書かれたことがあるほどに、質の高い伏流水に恵まれた土地です。桃山丘陵をくぐった清冽な水が、水脈となって地下に深く息づき、山麓近くで湧き水となってあらわれます。伏見が日本を代表する酒どころとなったのも、この天然の良水に恵まれていたから。水質もカリウム、カルシウムなどのミネラル成分をバランスよく含んだ中硬水で、酒造りに最適の条件を満たしています。酒質の特徴をとらえ、酸が少なめでなめらかな伏見は女酒、兵庫の酒どころ灘は辛口タイプが多く「男酒」とも呼ばれています。

本殿や表門が国の重要文化財にも指定されている格式高いお宮

 この質の高い地下水の伝説が残るのが、京阪伏見桃山駅から徒歩5分とアクセス便利な場所にある「御香宮神社」。境内には伏見の七名水のひとつ、「御香水」と呼ばれる名水が湧いています。社伝によると「千数百年前に、境内に香り高い清泉が湧き出し、朝廷から御香宮の名を賜ったのがそもそもの起こり」とあり、名水の地・伏見の象徴的な存在として広く知られています。

名水はコーヒーやお茶などに使うのもおすすめだそうです!

 「日本の名水百選」にも選ばれており、ペットボトルいっぱいに名水を満たして持ち帰ることができるのがうれしいですね。空のペットボトルは100円で販売されています。

■御香宮神社(ごこうのみやじんじゃ)
住所:京都市伏見区御香宮門前町174
交通:京阪本線「伏見桃山」から徒歩で約5分
電話:075-611-0559
時間:9:00~16:00(受付終了16:00)
休み:なし

名水の町「伏見」ならではの日本酒体験を満喫!

 ここにある約20軒の酒蔵は、それぞれ伏見の名水を使って独自の日本酒を造っています。清涼感、香り、コクなど、製造方法や米の違いで個性はさまざま。街のいたるところに日本酒の飲み比べができるお店や、製造工程の見学ができる酒蔵、ここでしか手に入らない伏見のお酒が買えるショップなどが点在しており、自分好みの1本を探すのも楽しみのひとつ。伏見名水の旅は伏見の酒に行き着く旅です。最後はそんな至福の時間が過ごせるスポットをいくつかピックアップしてご紹介します。

スポット1:酒蔵見学・きき酒・名水、全部ある!「月桂冠大倉記念館」

木桶、酒樽、櫂など、「京都市有形民俗文化財」指定の主な酒造用具類を展示

 まずは、伏見を代表する酒蔵の一つ「月桂冠」が運営する日本酒のミュージアム「月桂冠大倉記念館」にお邪魔しました。こちらは予約不要の一般見学のほか、要予約の酒蔵ツアー(ガイド付き)もあります。

 1909(明治42)年建造の酒蔵を活用した建物は重厚な木造建築で、エントランスに入ると、土間や梁、天井など目に入るすべてのものに、昔ながらの酒蔵の風情が感じられる空間が広がっています。そこに漂うひんやりとした空気がとっても心地良い!

隣接する酒蔵で醸造に用いられている名水をその場で味わうことができて感激です

 建物の外には、中庭や日本庭園のほか、伏水を飲むことができる井戸があります。見学の最後にはロビーに戻ってきき酒体験が楽しめるのですが、味わいの違いをしっかり体感。併設の売店で、一番気に入った銘柄を購入できますよ。

■月桂冠大倉記念館(げっけいかんおおくらきねんかん)
住所:京都市伏見区南浜町247
交通:京阪本線「中書島駅」から徒歩で5分
電話:075-623-2056
時間:9:30~16:30
料金:【酒蔵ガイドツアー】20歳以上3,000円。【一般見学】20歳以上600円、13歳~19歳100円、12歳以下無料
休み:8/13~16、12/28~1/4
予約:【酒蔵ガイドツアー】公式サイトから要予約。【一般見学】予約不要

スポット2:バーから蔵を眺める「酒蔵Barえん&藤岡酒造」

藤岡酒造のブランド酒「蒼空」は同じ銘柄でも様々な味わいが楽しめるのがポイント

 次に訪れたのが、青空を思わせるような爽やかで優しい味わいが特徴の純米酒「蒼空」を醸造する「藤岡酒造」と、酒蔵に併設する「酒蔵Barえん」です。 「酒蔵Barえん」の大きな特徴は店内正面の窓から、隣接する醸造蔵の中が眺められること。今まさに味わっているこのお酒が目の前で醸造されていると思うと、さらにお酒がすすんでしまう~!

全てのお酒を手作りで提供する藤岡酒造

 毎年6月~9月の期間限定で藤岡酒造では酒蔵見学を実施。お酒が貯蔵されたタンクの前で蔵の歴史や、日本酒造りにかける想いなどについてお話を聞いた後、酒米を洗うところから始まる酒造りの工程を順に見ていくことができます。そして、酒蔵見学の最後には、グラス3杯の利き酒体験がついていて、とてもお得なんです。

■藤岡酒造 酒蔵Barえん(ふじおかしゅぞう さかぐらばーえん)
住所:京都市伏見区今町672-1
交通:京阪本線「伏見桃山駅」から徒歩で約5分
電話:075-611-4666
時間:11:30~18:00
料金:【酒蔵体験】2,500円
休み:水曜
予約:【酒蔵体験】公式サイトから要予約

スポット3:伏見の18蔵元のお酒がその場で呑めてその場で買える「吟醸酒房 油長」

伏見のメインアーケード・大手筋商店街にある老舗酒店

 伏見にある18の蔵元のお酒が用意されており、吟醸酒・大吟醸酒を中心に何と80~90種類ものお酒が試飲できるお店です。英語対応も可能なオーナーが切り盛りしていることで、外国の人にも優しい接客が評判で多くの観光客が訪れる人気店です。

店内にあるバーカウンターで、利き酒セットやおつまみを味わおう

 店内にズラリと並ぶ伏見のお酒を眺めながら、豊富な知識を持つスタッフの商品解説とともに、気の利いたおつまみと味わうことで、伏見のお酒に対する理解もぐっと深まります。伏見で最もにぎわう商店街の一つ・伏見大手筋商店街にあり、アクセスも便利。今回、訪れてみて自分好みの蔵元を探したいという人には最適のお店だと感じました!

■吟醸酒房 油長(ぎんじょうしゅぼう あぶらちょう)
住所:京都市伏見区東大手町780
交通:京阪電車「伏見桃山駅」から徒歩で3分
電話:075-601-0147
時間:10:00~20:00
料金:利き酒セット3種類680円~など
休み:火曜、第1・第3水曜

スポット4:伏見の清酒を使ったスイーツやきき酒を体験「伏見夢百衆」

大正時代に建てられ、もともと月桂冠の本社だった建物を利用した喫茶・土産処

 重厚な日本建築でありながら和モダンな要素を取り入れたおしゃれな空間は居心地も抜群。月桂冠本社時代の営業部と経理部の事務室を改装した喫茶コーナーでは、格子窓から差し込む陽光を感じながら日本酒を使ったメニューを楽しむことができます。

日本酒をかけていただく清酒アイスクリーム700円(税込)

伏見の清酒きき酒セット1,500円(税込)

 きき酒セットは酒蔵やお酒の名前が書かれた紙の上にお猪口が乗せられており、初心者にも飲み比べしやすいうれしいセットでした。また日本酒をかけていただくアイスクリームはバニラアイスの甘さに日本酒の辛みがほんのり加わり、やみつきの味わいでした~!

■伏見夢百衆(ふしみゆめひゃくしゅう)
住所:京都市伏見区南浜町247
交通:京阪本線「中書島駅」から徒歩で5分
電話:075-623-1360
時間:10:30~17:00
休み:月曜

スポット5:お酒が苦手な人でも楽しめる日本酒スイーツ「伏水菓蔵本店」

みたらしだんご1本140円(税込)、チーズケーキ醍醐の花1個140円(税込)

 伏見の町にはお酒が飲めない方でも味わえる、酒粕を使った料理やスイーツが楽しめるお店もいろいろとあります。こちらの和菓子店では隠し味に酒粕を使用したチーズケーキや純米大吟醸酒をタレに使ったみたらしだんごなどを販売。京都ならでは、伏見ならではの商品が並びます。

■伏水菓蔵本店(ふしみかぐらほんてん)
住所:伏見区上油掛町33
交通:京阪本線「伏見桃山」から徒歩で6分
電話:075-604-2237
時間:10:00~17:00
休み:月曜

 古くから水運で栄え、名水に育まれた伏見は京都駅から電車で10~15分と、実はとてもアクセス便利な場所にあるので、思ったよりも気軽に訪れることができます。徒歩圏内に多くの観光スポットが集まっているのも特徴で、お酒好きにとってはほろ酔い気分で酒蔵めぐりを楽しめるという夢のような場所。もちろんお酒が飲めなくても、伏見の名水の場所を訪ねたり、十石舟から風情ある街並みを眺めたりと、様々な楽しみ方があります。長い歴史にしっかりと裏打ちされた伏見の魅力を堪能する町めぐり・酒蔵めぐりをぜひ一度体験してみて。

 ガイドブック「酒蔵のあるまち 伏見」はepubにて公開されており、X上で読むことができます。気になった人はまずこのツイートをクリック!

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