【動画あり】 「なごやめし」フードダイバーシティ対応セミナーをレポート!
2025年03月11日 09時00分更新
1月30日、フードダイバーシティ(食の多様性)のニーズに応えるための飲食事業者向けセミナーが、なごやめし普及促進協議会主催で行われた。ムスリム(イスラム教徒)、ヴィーガン、ベジタリアンといった“食事の制限”のある訪日観光客は近年激増しており、彼らが名古屋特有の食文化「なごやめし」を楽しめるように、対応飲食店を増やすことが本セミナーの目的。
会場である名古屋・中日ビル内のホールには、飲食店の経営者やホテルの関係者など計42名が参加。講演に耳を傾け、熱心にメモを取る様子が見受けられた。
講演は3部構成で、専門家である3人の講師がそれぞれの視点からフードダイバーシティ対応のポイントを講演。
まず登壇したのは、イスラム関連ビジネスの普及・啓蒙活動を行っている一般社団法人ハラル・ジャパン協会代表理事の佐久間朋宏氏。豚肉や酒類の摂取が禁じられているムスリムの方への対応の基礎知識を披露した。
佐久間氏は、「2060年には、世界人口の約3分の1がイスラム教徒になる」といった対応の必要性を説きながら、礼拝などムスリムならではの習慣を解説。「ムスリムは味が濃い食べ物を好み、日本のB級グルメが大好き。なごやめしは彼らの好みに合っています」とした。対応のポイントについては「まずは、いま提供しているメニューを整理整頓し、情報開示することから始めましょう。ムスリムは寛容な人も多いですし、ムスリム対応は難しくない」と語った。
2番目に登壇したのは、NPO法人ベジプロジェクトジャパン代表の川野陽子氏。川野氏は昨年、ヴィーガニズムの発展に貢献した個人・企業を表彰する「第7回 日本ヴィーガンアワード」で大賞を受賞。ベジタリアンおよびヴィーガンへの対応方法を、実際に使われている食材など多くの実例を交えて紹介した。
川野氏は、肉や魚介を食べないベジタリアン、動物由来全般を食べないヴィーガンに対して注意すべき食材や対応方法について解説。かなり個人差があることに加え、「地球環境への配慮、動物の権利尊重、自身の健康増進など、ベジタリアンやヴィーガンが増えている背景を知ると、より深く理解できます」と提言。「ベジタリアン、ヴィーガンに対応すると、より多くの人に喜んでもらえる料理になる。料理のおいしさや見栄えも大事にし、取り組む価値を感じながら対応を進めてほしい」と語った。
最後に登壇したのは、有限会社山本屋・専務取締役の青木裕典氏。なごやめしの代表格である味噌煮込みうどんの老舗「大久手山本屋」店主である青木氏は、2018年から名古屋ではいち早くフードダイバーシティ対応を推進。自店舗での対応の実例と、その成果を伝えた。
青木氏は対応を決意したきっかけについて、「日本人の人口減少と、他店との競争の激化。100年後も店を存続させるには、ムスリムやヴィーガンなど今来店してくれていないお客様を増やさないといけないと考えた」と述べた。さらに、対応する過程でのメニュー開発やキッチン、ホールオペレーションの工夫を詳しく説明。対応して良かったこととしては「実際に売り上げも増加したし、海外進出にも役立った。そして何より、食べてくれたお客様の笑顔が嬉しかった」と話し、「対応することでのデメリットはほぼないので、対応を進めて、なごやめしを盛り上げましょう」と締めた。
それぞれ30分の講演後には、講師への質疑応答が行われ、およそ2時間で盛況のうちにセミナーは終了した。2026年にはアジア競技大会も控え、さらに多くの観光客が海外から訪れることが見込まれている名古屋。地元の魅力的な食文化「なごやめし」を楽しんでもらい、多くの訪日客に喜んでもらうために、飲食店ができることは何か?その答えをさまざまな角度から提示したセミナーであった。
■本セミナーの講演は、以下より視聴できます
【講演①】佐久間朋宏氏「ムスリムインバウンドの基礎知識と対応を学ぶ」
https://youtu.be/P8McHVWqb5M
【講演②】川野陽子氏「ベジタリアン・ヴィーガン対応「なごやめし」への展開」
https://youtu.be/L8Lr7Gg4Lc0
【講演③】青木裕典氏「「なごやめし」フードダイバーシティ対応の実例とその成果」
https://youtu.be/h0vJBj00u-o
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