高級懐石から庶民派ソウルフードまで振れ幅が大きい小松グルメ! 都内では買えない和菓子と地酒もアツい【小松市の旅#2ーグルメ編】

 意外な名物から興味を引く観光スポットまで、東日本にはまだ知られていない魅力がたくさん。実際につなぐ旅編集部が東日本の市町村を訪れて、「ワクワクする」シーンを体験レポート。今回は石川県小松市の旅の様子をお届けします!

 加賀懐石があるし、和食がおいしいのかな?というイメージの小松市。石川県なので日本酒もおいしそうで、楽しみです。
観光編はこちらから)

味はもちろん、小松のことをなんでも教えてくれる和食店

 まずは懐石料理をランチでも楽しめる「梶助」へ。懐石料理は夜に提供しているお店が多く、ランチでいただけるお店は貴重なので楽しみです。

「昼御膳」¥3,025(税サ込)。石川県といったら海の幸なので、魚料理が多くてうれしい

モダンな店内。座敷席もあり、この日はお食い初めのお客さんが訪れていました

 梶助を営むのは3代目の梶太郎さんと女将の梶あい子さん。お店では基本的に地物の素材を使った和食を提供していて、この日はブリやマグロのお刺身、焼きサワラなどが登場しました。

細かくサシが入ったマグロは言わずもがなの美味しさでお代わりしたくなるほど

 あい子さんはとても気さくな方で、「小松ではサワラのことを“サゴシ”と呼ぶんですよ」と教えてくれました。ふっくら焼かれたサゴシ、ごはんによく合います。

焼きサワラ(サゴシ)。よく見ると料理が乗っている皿は九谷焼

タラのお澄まし。出汁がきいていて、さわやかな柚子の香りが最高でした

 ちょっとユニークなのがあい子さんのスタイル。こういう和食のお店だと、着物を着ているイメージがあったのですがあい子さんは洋装なんです。

太郎さんとあい子さん。あい子さんがかっこいいスーツスタイルで現れてびっくり

 「昔は着物だったんです。でもコロナ禍の頃から、小松市内の料亭や旅館の女将さんたちとつながるようになって、皆さんから刺激を受けて次第に今のスタイルになりました。小松市の良さを伝えるために、洋装でも小松市や石川県のアイテムを身に着けるようにしています」とあい子さん。実際、この日は首に小松市で作られた絹のスカーフや、胸元に石川県らしく和紙と金箔で作られたブローチを身に着けていました。

 お料理のおいしさはもちろんですが、あい子さんとのお話も楽しいのでぜひ。おすすめのお土産も教えてくれますよ。

あい子さんに教えてもらった九谷焼の絵柄のステーショナリー。クリアファイルはA5サイズで使い勝手がいい

日本料理 梶助
住所:石川県小松市大和町141
定休日:水曜日・ほか不定休
HP:https://www.kajisuke.co.jp/
アクセス:JR小松駅から徒歩5分

日本料理 梶助
住所:石川県小松市大和町141
定休日:水曜日・ほか不定休
HP:https://www.kajisuke.co.jp/
アクセス:JR小松駅から徒歩5分

ワインが1本空くほどお酒に合う絶品くるみ蒸しようかん

 「梶助」の梶あい子さんにおすすめのグルメを尋ねると「松葉屋さんのくるみ蒸しようかんはどうですか?」と教えていただきました。「松葉屋」は栗蒸しようかんで有名なお店で、あい子さん曰く「栗蒸しようかんもおいしいんですが、私はくるみ蒸しようかんが好きなんですよ!ぜひ食べてみて!」とのこと。

 お店の場所を調べてみると梶助のすぐ近く。歩いて5分もかからずに行けそうだったので、足を運んでみることにしました。

170年以上営業している老舗です

 店内に入るとすぐに2種類のようかんを発見。こちらでは「月よみ山路」(栗蒸しようかん)、「月よみ山路・比咩くるみ」(くるみ蒸しようかん)という名前で販売されています。

賞を受賞したお菓子だったとは…

 6代目店主の那谷忠宏さんに話を伺うと、「比咩くるみは、白山比咩神社への奉納菓子だったんです。月よみ山路は東京の百貨店でも取り扱っていますが、比咩くるみの方は作れる個数に限りがあるので都内ではなかなか手に入らないかもしれません」とのこと。それはぜひ買わねば!

基本的に販売しているのは「月よみ山路」「比咩くるみ」のみ。季節に応じて夏季限定ようかんや正月菓子なども販売しています

 お茶と合わせて食べようかなと思っていたところ、「料理の鉄人・道場六三郎氏が、比咩くるみとクリームチーズを合わせるとお酒にぴったりとおすすめしてくださいました」と那谷さん。なんでも、その組み合わせでワインを1本空けてしまう方もいるのだとか! さっそく自宅で試してみました。

私は日本酒と合わせました。薄く切ってカプレーゼ風にしましたが、両方とも角切りにして混ぜてもいいかも

 本くずが使われているとのことで、ようかんよりモチモチした食感。麹味噌の風味と香ばしいくるみの食感がいいアクセントになります。そして比咩くるみの甘さとクリームチーズの塩気が相性抜群すぎて、確かにこれはお酒が進みます。というか、そのままでもすごくおいしい。甘すぎないちょうどいい甘さで、あっという間に食べきってしまいました。

竹皮に包まれているのも風情があって良い

御菓子司 松葉屋
住所:石川県小松市大文字町69
定休日:なし(年末年始は休み)
HP:http://www.matsubaya.jp/index.html
アクセス:JR小松駅から徒歩8分

都内ではなかなか手に入らない希少な地酒と出会う

 せっかく石川県を訪れたので、日本酒も買いたいと思い「西出酒造(にしでしゅぞう)」を尋ねました。大正2年(1913年)創業の造り酒屋で、杜氏の西出裕恒さんの家族で酒造りを行っています。

歴史を感じる店構え。この奥に酒蔵がある

 西出酒造では「地酒」を作ることにこだわっています。西出さんは「“地元のエリアの味”を追求したくて、手仕込みしています。お酒の味には酒米や蔵の酵母などいろいろな要素が絡んでくる中、木桶で仕込んでいるところが特徴の一つですね」と教えてくれました。今まで何ヵ所か酒蔵を見てきましたが、木桶で仕込んでいる蔵は初めてです。

西出さんと半切り桶。木製の道具が西出酒造の味のポイントにもなる

 多くの酒蔵は「この味」というゴールを目指して酒造りを行います。が、西出酒造を代表するお酒「春心(はるごころ)」は逆の造り方なんだそう。「原料の米から味を組み立てていくので、ボトムアップ型というか。昨年と今年のお酒を飲み比べると味にブレが出ますが、それが“その年の地元の味”ということになって面白いんですよね」という西出さんの言葉に、なるほど!と膝を打ちました。天候や環境などは年によって異なりますし、味にブレが出ないように造るのが大きな酒蔵なら、そのブレこそを楽しむのが西出酒造のような小回りの利く酒蔵なんですね。

ネコのラベルの「純米もろみー」(写真中央)はテレビでも紹介されたんだそう

 私は「春心 木桶仕込み純米生搾り」を購入。ちょうどプライベートでお酒を持ち寄る場があったので、参加者のみなさんといただきました。口元にお酒を持っていくと樽の香りが感じられ、最初はちょっと強いお酒のように感じますが、スッとしたあと味。米の味を感じるしっかりした飲み口でおいしい。参加者からは「飲んだり食べたりした最後に大事に飲みたいお酒だ」という声が多数上がりました。

お酒好きからは「初めて見た!」「どこのお酒?」と質問が飛びました

 実は西出酒造のお酒はあまり出回っていません。西出さんはお酒の説明にも力を入れていて、酒屋や百貨店の方に今年のお酒の味わいの特徴を直接伝えているからなんだそう。レアなので、西出酒造のお酒を見つけたらぜひ飲んでみてほしい!

 また店内にはカフェ「蔵CAFEぐるり」があり、日本酒の仕込み水で淹れたコーヒーやスイーツが楽しめます。

ふわりと酒粕が香るチーズケーキが美味

店内は昭和12年(1937年)に建てられた家を一部改装。昔ながらの小上がりもあり、ここでは落語やアート展示などイベントも開催しているそう

西出酒造
住所:石川県小松市下粟津町ろ24
定休日:木曜日、日曜日
HP:https://nishidesake.com/
アクセス:IRいしかわ鉄道粟津駅からタクシーで5分

何年経っても味を思い出すソウルフード、塩焼きそば

 小松市のソウルフードは「塩焼きそば」。その発祥といわれる「餃子菜館 勝ちゃん」の塩焼きそばは、麺が太くモチモチしているのが特徴です。

 2代目店主の高輪宗己さんによると、中国の文化に惹かれて何度も旅していた創業者の高輪正勝さんが、その食文化を小松市に持ってきたのが塩焼きそば誕生のきっかけなんだそう。

厨房で鍋をふるう高輪さん。火が踊る!

 塩焼きそばの麺はモチモチふわふわしていて、シャキシャキとして野菜の歯ごたえとの差が楽しめます。勝ちゃんにはレシピがなく、「季節によって食材の感じが変わるので、それに合わせて炒め方などを変えている」(高輪さん)のだそう。高輪さんは「だからこそ常連さんから“いつもの味”だねって言われるとうれしいんですよね」と笑います。

煮豚の汁で作った餃子のタレをかけて味変してもおいしい

 塩焼きそばと人気を二分するのが餃子。1枚1枚皮を手作りしていて、外側を薄めに、中心は厚めに伸ばすことで、外側はパリッと、具のある部分は破れずにモチモチに仕上がります。

小ぶりなので女性でもペロリといけます

 高輪さんはなんと元薬剤師。「薬剤師って処方箋というレシピがあって、その通りに調剤しますよね。でもこの店はそうではなく、レシピもないんです。調理しているところを見て、食べて味見をして覚えていくっていうところが面白いなと思っています。私も最初は先代の味が出せなくて苦労しましたが、今では親子3代で通ってくれるお客様もいますし、20年ぶりに来たという方が『味が変わらないね』と言ってくれたりして、うれしいんです」と高輪さん。

 「そういう風に、昔食べた味が思い出せるからこそソウルフードになったのかもしれないですね」という高輪さんの話を聞いて、なるほどと思いました。まさに魂の食べ物です。

ちょっと高級そうな店構えですが、メニューは町中華系なので気負わずに来店してほしい

餃子菜館 勝ちゃん
住所:石川県小松市土居原町395
定休日:第3火曜日、毎週水曜日
HP:https://katsu-chan.com/
アクセス:JR小松駅から徒歩5分

小松を訪れたからこそ出会えた味

 金沢も近いし海鮮系が多いのかなと思っていましたが、懐石から和菓子、中華と幅広く楽しめた小松市のグルメ。料理はもちろんですが、くるみ蒸しようかんも地酒も東京では手に入りづらいものばかりで、そんな出会いがとても良かった! まだまだ私の知らない地元グルメが潜んでいそうですし、今度は暖かい時期に足を運んでみたいと思います。
観光編はこちらから)

帰りも雪!

この記事をシェアしよう

エリアLOVE WALKERの最新情報を購読しよう

この連載の記事

PAGE
TOP