エリアLOVEWalker総編集長・玉置泰紀のまち散歩 第30回

廃止される高速道路「KK線」を歩いたら、見たことのない東京の景色が楽しめた

新橋から高架に上がってみると、すぐ右側に、1967年(昭和42年)竣工の「静岡新聞・静岡放送東京支社ビル」が見える。丹下健三が設計した「メタボリズム」の代表的建築だ

高速道路が「歩行者中心の公共的空間」に生まれ変わる

 あなたは、高速道路を“歩いてみた”ことはあるだろうか?

 東京高速道路、通称「KK線」は、東京都の「東京高速道路(KK線)再生の事業化に向けた方針」に基づき2025年4月5日に廃止された(東銀座出口を除く)。

 そのKK線にて、4月18日に「KK線リボーンセレモニー」(招待のみ)、18日~19日に「Roof Park Fes & Walk」(一般参加)が開催された。

 筆者は、19日の「Roof Park Fes & Walk」にプレスとして参加。実際に、高速道路だった約2kmの高架を歩いてみた。新橋〜銀座〜有楽町〜京橋の違った様子が見えてきただけでなく、今後の再生に強く興味を持った。

 KK線は、1966年の全線供用開始以来、都市高速道路網の一環としての役割を果たしてきた。しかし、首都高速道路の日本橋区間地下化事業に伴い、新たな都心環状ルート「新京橋連結路(地下)」の整備が決定。それに伴い、KK線は役割が大きく低下することから、東銀座出口を除き廃止が決定した。

 そんなKK線が、東京の新たな価値や魅力を創出するため、歩行者中心の公共的空間、世界から注目される観光拠点へと再生する。KK線廃止後、調査、整備に着手。全区間の整備完了の目標時期は2030年代から2040年代としている。都市空間の価値や魅力向上の実現に向け、段階的な整備により一部区間の早期開放を目指しているという。

KK線のすぐ横には、新幹線や山手線が走る。すぐ横を、のぞみが走っていくのは爽快

KK線に入っていく入り口前の筆者

入口の看板

「Roof Park Fes & Walk」のコース

 東京都心部を走る全長2km余のKK線は、3ヵ所で首都高速道路と接続しており、主に首都高都心環状線のバイパスとしての役割を果たしてきた。銀座周辺の外堀、汐留川、京橋川の一部を埋め立てて建設した、日本初の民間活力による無料の自動車専用の道路だ。13年の歳月をかけ、1966年(昭和41年)7月に蓬莱橋から新京橋間の全線供用を開始。

 民間企業による自動車専用の道路の建設は、「道路下を賃貸スペースとし、その賃貸収益を道路の建設費と維持管理費に充て、無料で一般に供用する」という、今日のPFI(Private Finance Initiative)の先駆けともいえるビジネスモデルによって実現した。

 そして、今、東京の中心をつなぐ『自動車専用の道路』は、既存施設を活かし 『歩行者中心の公共的空間』に生まれ変わろうとしている。ひと・まち・環境をつなぐ、グリーンインフラとして、東京に新しい価値や魅力を加えるシンボルを目指す。都心の真ん中にありながらも、緑とふれあい、誰もが心地よく過ごせる場所になる予定だ。

 廃止された高架インフラを歩行者中心の公共空間に転換する点で、1980年代に廃止された貨物鉄道の高架線(約2.3km)を公園として再生したニューヨークの「ハイライン」を思わせる(2009年開業)。

 ハイラインは、マンハッタンのチェルシーやミートパッキング地区を俯瞰し、ビル群やハドソン川を眺める景観が特徴だ。KK線でいえば、銀座を眺める雰囲気に近いだろうか。

ハイライン(パブリックドメインの写真)。The High Line in Manhattan, New York City at West 20th Street, looking downtown (south) Beyond My Ken

 「Roof Park Project」は、これからのKK線や都市のあり方を、周辺に暮らす人々をはじめ、東京の未来を見つめる人たちとともに考え、実験を重ねながら、ゆっくりとかたちにしていくプロジェクトだという。

 推進組織として、共創プラットフォームを中心とし、東京都をはじめ、地元3区(千代田区、中央区、港区)、周辺の地域団体など様々な人たちとの連携、共創を通じて、ひと・まち・環境をつなぐ『グリーンインフラ』として、東京に新しい価値や魅力を加え、世界に注目される観光拠点を目指している。

KK線から東京の風景を見てみよう

 自動車から見える景色も、街を歩いて見える景色も、羽田空港から離発着する飛行機からの風景も、それぞれ違う視線からの東京を見せてくれる。そして、街の真ん中を走るKK線の高架を歩いて眺める都心も、また違った表情を見せる。

 今まで見たことのない東京の景色が楽しめるこの空間に、ベンチや植栽、カフェなどがあってゆっくりできる環境が整えば、また格別だろう。

模型やパネルで見るKK線の今と昔と未来

 今回のKK線ウォークでは、作業車や、模型、パネルなど多くの資料の展示も実施された。

■「Roof Park Project」公式サイト
https://roofpark.com/ja/

■東京高速道路株式会社ホームページ
https://www.tokyo-kousoku.jp/

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