エリアLOVEWalker総編集長・玉置泰紀「大阪・関西万博をブラタマキ」 第8回
誕生70周年のミッフィーグッズもいっぱい! 万博のオランダパビリオンは日本と同じ「水との共生」がテーマ
2025年06月02日 18時00分更新
水との共存は避けられない課題
オランダパビリオンのテーマは「コモングラウンド ‐ 新たな幕開け ‐」。
共に分かち合い、新しい価値を生み出すこと、すなわち「コモングラウンド」を参加テーマに、オランダ王国は健全で幸せな社会構築を目指す。循環型コンセプトで造られるパビリオンの名は、“A New Dawn ‐ 新たな幕開け”。
建物の中心には球体があり、持続的に利用可能なクリーンエネルギーと日の出を表現している。人々が集い、互いに学び、刺激し合う開かれた空間のパビリオン内では、クリーンエネルギーを水から生成する新技術を紹介する。
オランダは「低地(Netherlands)」の名の通り、河川デルタと湿地帯が多く、国土の形成自体が水と密接に関係している。過去には湿地や沼を干拓して農地や居住地を広げてきた。
国土のおよそ26%は海抜0m以下で、全体のおよそ60%が洪水リスクのある低地に位置する。また北海に面し、ライン川、マース川、スヘルデ川といった大河の河口域にあるため、水との共存は避けられない課題になっている。
筆者は水都東京・未来会議のメンバーであり、首都東京の水とのかかわり、防災について、日頃多くの議論をしてきた。大阪府市とも、関西ウォーカー時代から河川や港の水辺活性化に関わってきたこともあり、オランダパビリオンのテーマには興味津々。
また、日本でも人気の高い画家、ヨハネス・フェルメールの取材でアムステルダムやデルフトなどオランダを巡ったこともあり、楽しく回ることができた。

入口には自転車大国らしい自転車と、キッズアンバサダーのミッフィーが出迎えてくれる。オランダは、国内には約2万3000kmの自転車道があり、人口(およそ1700万人)に対しおよそ2300万台の自転車が存在する
オーブにエネルギーをチャージすることで
水やエネルギーの物語を体感!
オランダと日本の歴史は425年前、1600年に最初のオランダ船「リーフデ号」が日本に上陸した時に遡る。
この関係は後に、長崎の出島を拠点とするオランダとの独占貿易関係へと発展した。また、医学から言語、芸術に至るまで、今日まで続く広範な文化交流の始まりでもあった。
オランダパビリオンは、共同事業体であるコンソーシアム「A New Dawn」によって設計・施工されている。共同事業体は、建築事務所「RAU Architects」、体験型デザインスタジオ「Tellart」、エンジニアリングコンサルタント会社「DGMR」からなる。
RAU Architectsはサステナブル建築で有名で、循環型デザインを重視している。Tellartは体験型展示で来場者の没入感を高め、DGMRは構造や環境性能を最適化する。
外観は水の波をイメージした流動的なファサードで、オランダの水との共生や治水技術を表現。中心には直径およそ11mの巨大な白い球体「man made sun - 次世代への太陽」を配置。クリーンエネルギー(特に水素)と新たな希望の日の出を象徴している。
このパビリオンは、再生可能なエネルギー資源を動力源とし、レジリエントな未来への希望を伝えることを目的としている。循環型のデザインは、コンソーシアムの中核となる理念であり、使用する建材の再利用への責任も保証している。
パビリオンの構造物は、完全に除去が可能で、どの建材も、資材の履歴を追跡するデジタルパスポート「Madaster」システムに登録されている。これによって、コンソーシアムは、材料がどのように再利用され、どのように廃棄量が削減されるか把握できるのだ。
パビリオンについては5月に、人材サービス大手のパソナグループが、大阪・関西万博の閉幕後、淡路島に移設すると発表している。パソナは、自社パビリオンの淡路島移設も発表している。
来場者は「エネルギーオーブ」という光る球体デバイスを持ち、館内を移動する。オーブにはインタラクティブにエネルギーが展示物からチャージされ、展示と連動し、水やエネルギーの物語を体感できる。
展示エリアでは、水との共生、治水技術、水素エネルギーのイノベーションなどが展示されている。
直径11mの球体内部は360度スクリーンによるドームシアターになっている。音と映像で、水素エネルギーや持続可能な未来を没入型で体験できる。
名称は「man made sun - 次世代への太陽」。この名前は、クリーンエネルギー(特に水素)を象徴し、持続可能な未来への希望や新たな「日の出」を表現している。
360度スクリーンには、高解像度のプロジェクション技術が使用され、球体の内壁全体に映像を投影する。視界を完全に包み込む没入型体験を提供する。音響はサラウンド音響システムを採用し、映像と連動し、水の流れや風、エネルギーの動きを立体音で体感できる。
グッズ売り場にはミッフィーがいっぱい
2025年は万博開催の年であるだけでなく、ミッフィー誕生70周年の節目でもある。最初の絵本「Nijntje (ナインチェ)」は、1955年にオランダ語で出版された。
1950年代、休暇中のディック・ブルーナは、長男に別荘の庭を駆け回る小さな白いウサギの物語を寝る前に聞かせていたのだが、このウサギがミッフィーのインスピレーションとなったのだ。
ミッフィーの生誕70周年を記念して、世界中で展覧会などのイベントが開催されている。日本では、2025年夏にハウステンボスにミッフィーをテーマにしたエリアがオープンする予定だ。
オランダパビリオンは、ミッフィーの日本での人気を深く認識しているようだ。メルシスBVおよびびディック・ブルーナ・ジャパンと提携し、オランダ館の来場者に、世界で唯一無二のミッフィーグッズを多数用意した。
ぬいぐるみ、パズル、食器(波佐見焼シリーズ)、マグカップ、トートバッグ、タオル、文房具、70周年記念グッズ(ペンダント、プレートなど)など多岐にわたるグッズが販売されている。
グッズ売り場と同じスペースにあるカフェでは、ハーリング(塩漬けニシン。オランダの伝統的な塩漬けニシンをタマネギと一緒に提供)やヒュッツポット(ジャガイモ、ニンジン、タマネギを煮て潰したオランダの伝統的な家庭料理)、ビターバル(辛味が効いた肉料理(通常は牛肉)をアレンジしたコロッケ風)などの現地のメニューが楽しめる。
スイーツも、ストロープワッフル(2枚の薄いワッフル生地の間に甘いカラメルシロップを挟んだオランダの伝統菓子)などが用意されている。
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