エリアLOVEWalker総編集長・玉置泰紀「大阪・関西万博をブラタマキ」 第15回

伝統芸能「能」の力で万博会場に大きな踊りの輪ができた! 「いのちの遊び場 くらげ館」の中島さち子Pと大阪の山本能楽堂がスペシャルコラボ

 山本能楽堂(代表理事:山本章弘)は、万博開催前から、シグネチャーパビリオン「いのちの遊び場 くらげ館」の中島さち子プロデューサーの活動に共鳴し、活動を行ってきたが、その集大成として8月6日、KURAGE Band(World Life Band)と共に、「クラゲ能」として、新しい能の作品“いのちの能 Jirin「時の輪」~巡り巡りて”を、万博会場のおへその部分である「いのちパーク」で開催した。

 沖縄県宜野座村×カメルーン・バカ族×ニュージーランドのマオリとのコラボレーション公演で、沖縄県宜野座村とカメルーン・バカ族はパフォーマンスは無かったが、ニュージーランドのマオリは力強い「ハカ」などを披露した。

 新作能の“Jirin 「時の輪」”はチベット密教の仏教用語で、時の循環という意味を持ち、この世界と人間のエネルギーを表し、それが一体となることを目指す教えを意味する。

 筆者は、関西ウォーカー時代から山本能楽堂とは様々な活動を一緒にしてきた関係であり、中島さち子プロデューサーとも、万博開催前から、様々な情報交換をしてきた。その両者が万博で共同の演目をやるとなれば、駆けつけないわけにはいかない。と言うことで、しっかり、新しい能を体験してきた。

いのちの能 Jirin「時の輪」~巡り巡りて

 いのちの能 Jirin 「時の輪」~巡り巡りてはWorld Life Band参加型能楽公演である。

【コンセプト】は、以下の通り。

① 万人万物のいのちの創造性の象徴である「創造の木」の中に、「豊かな水」を次代へとつなぐ知見が隠されている。それをみんなで探すための旅。

② 「循環」をテーマに、人間や自然、全ての人々に不可欠な「水」の大切さを喚起し、世界共通の課題である「水環境の保全」を日本の伝統芸能と世界の音楽のコラボレーションで啓発する。700年の伝統を持つ能の精神性×多様な音楽・文化が互いに共鳴する共創の場をつくる。

③ 世界の少数民族にとっても、水は単なる生活資源ではなく、「文化・信仰・宇宙観」と深く結びついた存在として、古来、水との親交が行われてきた。今回の公演を、「少数民族ウィーク」に実施することで、島国日本と世界の少数民族を「水」でつなげ、意識を共有し、水をテーマに交流を行い、次代へと「水を大切にする気持ち」でつなぐ。

【あらすじ】(プレスシートより)

 都から淀川にそって旅をしてきた旅人が海に着きました。初めて見る大海原に、旅人は心が穏やかになりました。そして大きな木の周りでは、多くの生き物たちが集まり音楽を奏でていましたが、旅人はその木の中に、1本の不思議な枝を見つけました。それは、水の神様が失くした杖でした。

 水が汚れてしまったため、水の神様が姿を隠してしまったのでした。そして、旅人はクラゲの仲間たちと一緒にみんなで海をきれいにそうじを始めました。みんなの努力できれいによみがえった海には、再び水の神様が姿を現しました。そして、太陽と月の力により、日々新たによみがえる海の水の美しさをたたえました。

 海の水は、(蒸発して)空高く上がり、山にあたって、雨となって流れ落ち、川となってまた海にかえってくる、永遠にめぐる水の命、それこそがもっともめでたく、ありがたいことである。水によってもたらされる世界の循環、そして、誰もがみんなその循環の輪の中で生きているありがたさを伝え、多くの人々とその社会の平和と安定を願いました。

いのちの能 Jirin「時の輪」~巡り巡りて

中島さち子氏のあいさつは以下の通り。

「世界中からいろんな方々が集まってくれてて、沖縄県宜野座村の皆さん、カメルーンのバカ族の皆さん、ニュージーランドのマオリの方々、約70人くらい! それにカナダやオーストラリアの先住民の方々も来てくれてるんです。

 もう、音楽や文化、経済の話まで、いろんなことをこの一週間、みんなで一緒に繰り広げてます。今日、実はカメルーンのバカ族の皆さん、森の民と呼ばれる方々が来てくれてるんですけど、ちょっと体調の関係でパフォーマンスができなくなっちゃって。日本の気候って、カメルーンとは全然違うからね、仕方ないんですけど、でも、こうやって来てくれてるだけで本当に嬉しいんです。

 実は、バカ族の皆さん、5人いらっしゃるんですけど、うち2人は国際交流の経験が豊富な方なんです。でも、残りの3人は、ほんとに森から初めて出てきた方々で、誕生日も知らなかったくらいで、パスポートを取るところから始めて、こうやって日本に来てくれたんですよ。すごいですよね。

 それから、沖縄県宜野座村の子どもたちも、カメルーンの皆さんと一緒に国際交流をしてきました。昨日もね、宜野座村の皆さんと一緒に急きょイベントやったら、めっちゃ盛り上がって、めっちゃ楽しかったんですよ。

 でね、こうやって世界中から集まってくれてる中で、やっぱり日本の伝統芸能、能の山本能楽堂の皆さんとも一緒にやってきたんですよ。これまで少しずつコラボを重ねてきて、ついに新しい能の作品、通称「クラゲ能」ができあがりました。

 タイトルは『時の輪』、チベット密教のJirinって言葉からきてるんですけど、時の循環、命のつながりを表現してるんです。6月18日にはシャインハットで「水の輪」っていう能の公演をやったんですけど、今回はその続編になります。

 大阪から、みんなで水を大切にする気持ちで世界をつなげよう、って物語なんです。このKURAGE Band、私が山本能楽堂の皆さんと出会って、もっと大きなテーマ、海の話、循環の話、世界平和の話に広がっていったんですよ」

中島さち子氏

中島氏と山本能楽堂の事務局長、山本佳誌枝氏(右側)。「『時の輪』は、釈徹宗先生と言う宗教学者の方が名付けてくれたんですけど、人が、世界が、すべてのエネルギーが一つになって、平和を目指す、みたいな大きな作品になってます。ほんとに、クラゲ館の皆さんと一緒にやってる中で、いろんな刺激をもらったり、未来に向けてどう生きるか、創造性ってみんなが持ってるんだってことを改めて実感してるんです」と、山本氏は語った

 能の延長上に、KURAGE Bandの演奏とともに、客席からも参加者を募り、大きな踊りの輪が出来ていった。

KURAGE Bandの熱演に歌も入り、客席の人はもちろん、能の出演者も一緒に大きな踊りの輪が出来た 

 能に先んじて情熱的なパフォーマンスを見せてくれたニュージーランドのマオリの人たち。

ニュージーランドのマオリの人たち

 「いのちの祭り~World Life Band~Vol.3」の参加者で記念写真を撮影。今回のイベント開催時期は先住民ウィークであり、あらゆる視点において、とても意味のあるイベントとなった。

●KURAGE Band 

 ジャズピアニストかつ大阪・関西万博テーマ事業プロデューサー(シグネチャーパビリオン「いのちの遊び場 クラゲ館」)中島さち子が率いる多文化ミックス音楽バンド。日本、韓国、セネガル、チベットなどの音やリズムがダイナミックに絡み合います。山本能楽堂や世界のさまざまな郷土芸能とのコラボレーションライブを多く行い、五感や身体性を通じて伝統と革新の狭間を、即興的に響き合わせていきます。音楽や文化の揺らぎの中に光るものを求めて。

https://steam21.com/kurage_band/

●山本能楽堂

 山本能楽堂は昭和2年に観世流能楽師の山本博之氏によって創立された大阪の能楽堂。戦災で一度焼失しましたが、昭和25年に再建、約100年の歴史を持ち、平成18年に文化審議会により国登録文化財の指定を受けた。気軽に伝統文化に触れられる能楽体験や舞台裏見学のコースを設定し、広く門戸を開いている。また、能を「現代に生きる魅力的な芸能」として、広く一般の皆様にその素晴らしさをお伝えするため、新しい視点に立ったオリジナルな企画でプロデュース公演を開催し、教育文化事業に取り組んでいる。

https://noh-theater.com/

●「いのちの遊び場 クラゲ館」公式サイト
https://expo2025-kuragepj.com/

『大阪・関西万博 攻略MAP ウォーカームック』

発行:株式会社角川アスキー総合研究所
発売:株式会社KADOKAWA
発売日:2025年06月30日
定価:1078円 (本体980円+税)
ISBN:978-4049112665
サイズ:A5判/84ページ
詳細はKADOKAWAサイト

【目次】 大阪・関西万博とは
大阪・関西万博でやりたいコト25
万博を楽しむ「いろはのい」
エリア別攻略ガイド
大屋根リングの絶景ポイント10
東ゲートゾーン
エンパワーリングゾーン
シグネチャーゾーン
セービングゾーン
静けさの森ゾーン
コネクティングゾーン
西ゲートゾーン
フューチャーライフゾーン
コラム:万博攻略法 イベントを見るならココ! パビリオンINDEX

この記事をシェアしよう

エリアLOVE WALKERの最新情報を購読しよう

この連載の記事

PAGE
TOP