エリアLOVEWalker総編集長・玉置泰紀「大阪・関西万博をブラタマキ」 第16回
超人気の万博・イタリア館にまたも必見の展示が登場! 伝説のノート『モレスキン』を素材にしたアート作品がすごい
2025年08月08日 16時00分更新
万博の中でも超人気のイタリアパビリオンにまた、魅力的な展示が加わった。
ゴッホやピカソなど多くのアーティストが使用し、イギリスの紀行作家ブルース・チャトウィンの作品にもよく登場することで知られる伝説的なノートブックのブランド、モレスキン。筆者も愛用しているが、そのモレスキンを利用したアート作品がカラバッジョやミケランジェロと並んでパビリオンに登場した。
Moleskine Foundation(モレスキン財団)が所蔵する1600冊を超えるノートブックアートの中から、その⼟地の⽂脈に合わせて厳選された作品を展⽰する巡回展『Detour』。⼤阪・関⻄万博イタリア館での『Detour Osaka』は2025年7⽉31⽇~8⽉23⽇の期間、展示される。
イタリアと⽇本のクリエイターに焦点を当てつつ、世界各国のアーティスト含め68名による作品を展⽰。展⽰されるノートブックは、世界的に著名なアーティスト、建築家、映画監督、デザイナー、ミュージシャン、作家に加え、世界各地の学⽣や⽂化団体、若⼿クリエイターから寄贈されたものであり、多様な視点と表現がひとつの空間に集結している。
ノートブックを作品にするという制限が逆に、思い切った自由な発想を生んでいるようで、実に豊かな表現の世界を堪能した。
2025大阪・関西万博イタリア館での巡回展について、モレスキンのクリストフ・アーシャンボウCEOは「ここに来ることはとても重要だと感じていました」と語り、モレスキンと万博との間にある「共通のビジョン」を強調している。
アルシャンボーCEOは、「イタリア館のメッセージ『芸術は命を再生する』は、私たちのブランドにとっても通じるものです」と語り、この展覧会は「あなたがダ・ヴィンチほど有名でなくても、あなたの中には創造性がある」と伝えていると付け加えた。モレスキン財団のアダマ・サンネCEOも同意し、「芸術は人生を再生するだけでなく、人も再生する」と強調した。
「私たちが大阪に持ち込んだこの展覧会は、創造性がもたらす変容のプロセスとその関係性を示していると思います」とサンネCEOは語り、イタリア館で紹介されているダ・ヴィンチやカラヴァッジョといった過去の偉人たちの天才も、「実は1枚の紙、1冊のノート、1本のペンや鉛筆から始まり、そこからより良い未来を想像し、築いていったのです」と述べた。
展覧会について、キュレーターのロッセッラ・ザネッリは「68冊のノートブックによる、世界中から集められた創造性と寛大さの表現であり、非常に貴重なコレクションです」と紹介。これらのノートブックは「モレスキン財団のコレクションの一部であり、同財団には1600冊以上が所蔵されています。これらは、世界中を巡る創造的なリレーの中でアーティストたちから寄贈されたものです」とザネッリ氏は語った。
『Detour Osaka』では、イタリアと⽇本のクリエイターに焦点を当てつつ、世界各国のアーティスト含め68名による作品を展⽰する。⽇本からは伊東豊雄、隈研吾、佐藤オオキ、妹島和世、ホンマタカシ、らが参加し、イタリアからはマッシミリアーノ・フクサス、フラヴィオ・アルバネーゼ、ジュリオ・ヤケッティらの作品が⼀堂に会す。
さらに、⼤阪での開催を記念し、関⻄に縁のあるアーティスト、塩⽥千春(パフォーマンス/インスタレーション)、コシノジュンコ(デザイナー)、VERDY(グラフィックアーティスト)、MuSuHi(アーティスト)、松崎陸(京藍染師)も展⽰に加わる。また、⼤阪・関⻄万博に作品を出展している蜷川実花(写真家/映画監督/現代美術家)も本展に参加する。
展示されている作品たち
パスカル・マルティーヌ・タヨウ(ヤウンデ、カメルーン)
『無数(の人々)』(2011年)
彼は、グローバリゼーションによって生まれるアイデンティティの矛盾に取り組み、自身のアイデンティティとの関係性をテーマに作品を制作している。彼のノートは、個人が集団と向き合い、無数のアイデンティティの狭間で、共に生きるための道を模索する姿の証言でもある。
松﨑陸(京都、日本)
『Chasing the Dream of KYOAI』(2025年)
日本の古代の藍染めの紐は、卓越した染色技術によって1300年もの間、その色を保ち続けてきた。現代の技法は衰退しているため、松﨑は過去の技術を学び、解析しながら再現を試みている。松﨑の京藍染めは、同じように1000年以上色を残すことを目指している。藍は発酵しなければ発色せず、このノートは、日々の染色テストと失われた技術への探求を記録したものである。
塩⽥千春(⼤阪、⽇本)
『精神状態』(2025年)
「このノートは私の精神の状態を視覚的に表現している。私の作品において、線は人と人の見えないつながりを象徴すると同時に、明晰さ、集中、脆さ、緊張感も表す。途切れた線はエネルギーと動きを伝え、手足が痺れたときのような感覚を表現する。このノートは私の感情と、そこに注ぎ込んだすべてのエネルギーで満ちている」
隈研吾(横浜、日本)
『無題』(2009年)
ノートには建築物の写真やその図面が貼りこまれ、さらに最新のアイデアとして、素材、機能性、耐久性に関する多くのメモが書き込まれている。
コシノジュンコ(大阪、日本)
『MODE ET JUNKO』(2025年)
「私のすべての創作活動において、『対極の美』を追求しています。陰と陽、黒と白、自然が象徴する円と、人間の理性を表す四角は共存し、互いに影響を及ぼし合います。色彩や装飾を抑えることで、強烈なコントラストの中に真の美を見出し、大胆さと繊細さ、静と動を表現しています」
蜷川実花(東京、日本)
『LIberation and Obsession』(2025年)
「心の底から沸き上がった、言葉にならない感情をひたすらにノートへ書き綴る。人知れず奥底に沈めた衝動を、何層にも重ねたラメやビーズ、花や蝶、無数の目玉と赤い糸で封じ込める。幼い頃、夢中で集めた宝物のようなパーツの一つひとつが鎧のように覆い隠したのは、誰にも踏み込ませない、私の核心」
ムワンギーフッター(ナイロビ、ケニア。ルートヴィヒスハーフェン、ドイツ)
『燃やしてから読め』(2016年)
二冊の赤いノートを焼き、そのうち黒く変わった部分と白く変わった部分だけが残された。
『Unleash Your Genius(才能を解き放つ)』
さらに、モレスキンと⼤阪芸術⼤学との共同プロジェクト「Unleash Your Genius(才能を解き放つ)」で制作された作品も展⽰される。⼤阪芸術⼤学の学⽣たちに、モレスキンが掲げるメッセージを⾃らの視点で⾃由に表現するという課題に取り組んでもらい、アートコンペティションを実施した。
その中から選ばれた優秀作品は、ポスターとして⼤阪・関⻄万博会場および⽇本国内のモレスキン直営店にて展⽰される。各ポスターには、Roland DG(ローランドディー.ジー.)の最先端UVプリント技術が⽤いられ、創造性とテクノロジーが融合した作品に仕上がっている。
今回、案内をしてくれたモレスキンジャパンのカントリーマネージャー、ニック・ワディントン氏に話を聞いてみた。
「もう日本には10年以上住んでて、モレスキンにはここ数年関わってるんですけど、このブランドは、本当にすごいんですよ。ただのノートじゃないんですよね。手に持つだけで、なんかこう、アイデアが湧いてくる、特別な存在なんです。
まず、モレスキンの歴史からお話しさせてください。実はこれ、19世紀のパリにルーツがあるんですよ。ゴッホやピカソ、ヘミングウェイみたいな、スゴいアーティストや作家たちが、カフェやバーでこの小さな黒いノートにスケッチしたり、メモしたりしていたのです。
フランス語で「ポケット・ノート」って呼ばれる、シンプルだけど味わい深いノートだったのです。でも、残念なことに、1980年代にそのノートを作ってたフランスの小さな製本屋さんが倒産しちゃって、一時期、市場から消えちゃったのです。
そしたら、イギリスの作家、ブルース・チャトウィンさんが『ソングライン』って小説の中で、「モレスキンがなくなっちゃった、悲しい!」って書いたんですよ。それを読んだイタリアの出版社のマリア・セブレゴンディさんが、「これは復活させなきゃ!」って、1997年にミラノでモレスキンブランドを立ち上げた訳です。
1999年にはもう日本にも入ってきてるんですよ、けっこう早いですね。モレスキンって名前は、昔からあの黒いノートのことを指してたんですけど、ブランドとしては1990年代後半に復活したって感じです。
で、面白いことに、この復活のタイミングって、デジタル化がグワーッと進み始めた頃なんです。iPhoneとか出てきて、みんなデジタルって感じだったけど、モレスキンはあえて「手書きの良さ」をガツンと押し出してきたんです。ポケットサイズで、旅に持ってくのにピッタリ。手で書くのって、実は科学的に脳が刺激されます。キーボードで打つより、手書きの方が脳みそが動いて、アイデアが繋がるって言われています」
今回の展示では、パビリオンのスタンプとは別にモレスキンの展示のためのスタンプも用意されているので、ぜひ、ゲットしたい。
【モレスキンについて】
モレスキンは2世紀の間、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ、パブロ・ピカソ、アーネスト・ヘミングウェイ及びブルース・チャトウィンなどの芸術家や思想家に愛されてきた伝説的ノートブックの相続⼈であり継承者です。今⽇のモレスキンは、様々な機能を持つノートブック、ダイアリー、バッグコレクションやデジタルツールなどを総括したライフスタイルブランドとして展開し、今を⽣きるクリエイティブで想像⼒に富んだプロフェッショナル達をサポートしています。創造性や想像⼒、思考⼒を育み、記憶をとどめるツールとして彼らの毎⽇と旅路をサポートすることで、やがて彼らの個性の⼀部になっていきます。(プレスシートより)
www.moleskine.com
www.moleskine.co.jp
@moleskine
【モレスキン財団について】
モレスキン財団は、「クリエイティビティによる社会変⾰(Creativity for Social Change)」をミッションに掲げるNPO団体。その根底にあるのは、「クリエイティビティこそが社会に前向きな変化をもたらし、未来を切りひらく⼒になる」という信念です。その実現に向けて、モレスキン財団は若者たちのクリエイティビティを引き出し、社会を動かす意識と姿勢を育てることを⽬的とした、型にとらわれない教育プログラムを世界各地で展開しています。これらの取り組みは社会変⾰を⽬指して構築された、世界中の⽂化的・創造的な国際パートナーとのネットワークによって⽀えられています。モレスキン財団は、モレスキンと「クリエイティビティ」や「⽂化」に対する価値観を共有しながらも、組織・運営の両⾯において完全に独⽴して活動しています。Moleskineが運営費を⽀援することにより、モレスキン財団は外部から集められた資⾦の100%を直接的な社会貢献活動に活⽤できています。
https://moleskinefoundation.org/
@moleskinefoundation
イタリアパビリオンの公式サイト
https://www.italyexpo2025osaka.it/ja
『大阪・関西万博 攻略MAP ウォーカームック』
発行:株式会社角川アスキー総合研究所
発売:株式会社KADOKAWA
発売日:2025年06月30日
定価:1078円 (本体980円+税)
ISBN:978-4049112665
サイズ:A5判/84ページ
詳細はKADOKAWAサイトへ
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