東京駅丸の内南口から徒歩1分。KITTEの中にある東京大学の博物館・インターメディアテク(IMT)は、ビジネス街の中心にありながら、ふっと日常の時間の流れが変わる不思議な場所です。今回訪れた特別展「メテオラプソディ ─ 隕石探査」は、その魅力を極限まで引き出した企画でした。無料で鑑賞でき、写真撮影もOKという気軽さはそのままに、展示内容は驚くほど本格的で、知的刺激に満ちています。
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会場へ足を踏み入れてすぐに目を奪われるのが、展示ケース。一般的な博物館のショーケースではなく、東京大学の研究室で実際に使用されている“減圧デシケーター”そのものが置かれ、隕石は真空状態で保管された状態のまま展示されています。隕石は地球の空気や湿度でも変質してしまう繊細な物質。だからこそ、本来なら研究室内でしか扱えない装置ごと展示してしまうという潔さに、IMTらしい学知の温度が宿っています。丸の内のビルの中に突然“本物の研究現場”が現れたような感覚は、最初の一歩から強烈な非日常でした。
黒っぽい石に見える隕石のひとつひとつには、太陽系誕生期の物質がそのまま閉じ込められています。月・火星・小惑星ベスタなど、起源の異なる隕石が並ぶと、それぞれの天体の“個性”がわずかな質感の違いとして姿を現し、見れば見るほど引き込まれていきます。火星由来の石を東京駅前で眺めるという経験は、ただの鑑賞を超えて、宇宙と自分の距離がふっと縮まるような心地よい驚きをもたらします。
そして何より心を震わせるのが、探査機が“宇宙で直接採ってきた石”にも会えること。JAXA〈はやぶさ2〉が回収したリュウグウ試料、NASA〈オシリス・レックス〉が持ち帰ったベヌー試料が慎重にデシケーター内で展示され、それらは地球で採れた隕石とはまた別の緊張感を放っています。地球に落下した偶然の産物としての隕石と、探査機が意図的に採取した貴重なサンプル。その両方が同じ空間で並ぶ光景は、国内でもほとんど見られない贅沢な体験です。宇宙を“観測する”だけではなく、“直接触れに行く”という現代科学の到達点を丸の内で目撃できるとは、想像以上の感動でした。
展示室中央では、別の角度から隕石の美しさに触れられます。隕石薄片を0.03ミリまで研磨し、偏光顕微鏡でとらえた映像が投影されているのですが、その色彩が驚くほど豊か。かんらん石や輝石が光の角度で青や黄色、オレンジへと揺らぎ、内部の鉱物構造が万華鏡のようなパターンとなって現れます。
本来は研究のための観察画像であるにもかかわらず、視覚的な美しさが前面に立ち上がる瞬間は、科学とアートが混ざり合うIMTらしいハイライトでした。丸の内の街を歩いていて、ふと空いた時間に立ち寄るだけで、これだけ深い宇宙体験ができる場は他にありません。東京駅直結でアクセスも抜群、オフィスワーカーにも観光客にも優しい立地で、無料で、そして写真撮影までOK。IMTは、丸の内の中にぽっかりと開いた“知の抜け道”のような存在です。今回の「メテオラプソディ ─ 隕石探査」は、その魅力を最大限に味わえる展覧会です。宇宙の時間を丸の内のど真ん中で感じられる、貴重な機会です。
特別展示「メテオラプソディ-隕石探査」
会期:2025年11月29日(土)-2026年3月29日(日)
時間:11:00-18:00(金・土は20:00まで開館)
休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日休館、ただし12月15日、22日、29日は開館)、2月16日-23日、年末年始、その他館が定める日
会場:インターメディアテク2階 「GREY CUBE(フォーラム)」
(東京都千代田区丸の内 2-7-2 KITTE 2・3階)
https://www.intermediatheque.jp/
入館料:無料
主催:東京大学総合研究博物館
協力:国立極地研究所 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
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