エリアLOVEWalker総編集長・玉置泰紀のアート散歩 第42回

【速報】下呂温泉×北川フラムの新芸術祭「下呂 Art Discovery 2026」詳細発表!日本三名泉と南飛騨の水と緑に恵まれたエリアでアートを楽しむ

 東京・代官山のアートフロントギャラリーにて、岐阜県・下呂市で開催される新しい芸術祭「下呂 Art Discovery 2026」(2026年9/11㊎~11/8㊐ )の記者発表会が2026年1月19日、行われた。 会見には山内登・下呂市長および総合ディレクターを務める北川フラム氏が登壇。芸術祭の全貌や、注目の第1弾参加アーティスト、そして象徴となるメインビジュアルが明かされた。

 下呂市は、人口2万8,000人が暮らす総面積の約9割が森林を占める自然豊かな地域。 日本三名泉のひとつ、年間約190万人の観光客が訪れる下呂温泉で有名だが、過疎高齢化が課題となっており、下呂市全体の活性化が望まれている。

 2024年秋には、清流の国文化探訪「南飛騨 Art Discovery」と題し、南飛騨健康増進センターの森、民家、施設を舞台に、日本国内のアーティスト21組による現代アートとパフォーミングアーツ、岐阜の伝統産業や食を紹介するマルシェ(楽市楽座)を展開した。

 目標を超える約1万1,000人が訪れ、市民をはじめ来場者から暖かい反響が多くあり、アーティストの制作サポートやマルシェへの出店などを通した住民参加も見られ、アーティストや来場者、出店者同士の交流が生まれた。今回新たにエリアを拡大して本格的な開催にこぎつけた。

 筆者は近年、下呂温泉や飛騨地方を取材していて、この地域の魅力にハマっていて、大地の芸術祭や瀬戸内国際芸術祭など、数多くの北川フラム氏の芸術祭に接し楽しんできただけに、今回の発表はワクワクして臨んだ。

北川フラム氏(前列左から3人目)や山内登市長(前列右側から3人目)をはじめ、参加アーティストや関係者が集まって記念写真

森と温泉、街道と廃校がつくる 日本最深部の国際芸術祭。11カ国40組を超えるアーティストが、豊かな森や下呂温泉街、飛騨萩原宿の古い町並みや総ヒノキ造りの廃校を舞台にアートを展開する

 拡大されたエリアは、森が豊かな南飛騨健康増進センターと飛騨街道の趣きを残す萩原商店街を舞台とした〈萩原エリア〉、築70年の旧湯屋小学校を舞台に、御嶽山の麓で巌立峡(がんだてきょう)や滝めぐりが魅力の〈小坂工リア〉、飛騨川沿いの風情ある温泉街の街並みや合掌村のある〈下呂エリア〉の全部で3エリア。

 下呂市の魅力を発信し、この地独特の景観や地域が紡いできた伝統文化、暮らしなど地域に内在する価値を掘り起こし、その魅力を高めることで、住民の誇りの醸成、交流人口の増加、観光客の市内回遊と滞在時間増、子供たちの育成など、地域の活性化に取り組む。

 北川フラム氏が公式サイトで語るコンセプトは以下の通り。

『森と温泉、街道と廃校がつくる 日本最深部の国際芸術祭。』

 「岐阜県は、飛騨と美濃という異なった性格をもつ地域が合併したところで、日本列島の中心部・へそとも言われ、歴史区分を画する壬申の乱、承久の乱、関ケ原の戦いの場であった交通の要所でした。下呂市はその美濃と飛騨の接点にあります。

 日本列島は4つのプレートがせめぎ合い、それゆえ山地がひしめき合い、火山活動があり、その地熱とユーラシア大陸からの季節風、さらにその風が吸引する日本海の水蒸気が列島の脊椎である山脈にあたって雨を降らせる。下呂市はそのおかげで、江戸時代から続く日本有数の温泉を有し、森や水が豊かな土地なのです。

 このような土地にあって、2024年秋に開催された「南飛騨 Art Discovery」から、この地を「日本最深部」と呼ばせてもらいました。

 11カ国40組を超えるアーティストが、豊かな森や下呂温泉街、飛騨萩原宿の古い町並みや総ヒノキ造りの廃校を舞台に、より深く地域の自然・歴史・暮らしに分け入り、人間と自然の関係、来し方行く末をあらわすアートを展開します。

 アート〈Art〉と温泉に浸って心身・五感を開放し、地域と自分自身を発見する〈Discovery〉、新しい芸術祭がはじまります。」 

総合ディレクター 北川フラム

 また、ビジュアルディレクターのグラフィックデザイナー、岡﨑真理子さんはデザインコンセプトを以下のように語っている。

 「下呂を訪れた際に最も印象に残ったのは、樹木やシダ、苔、岩や川などの自然物から受ける圧倒的な感覚情報の豊かさだった。

 特に川の水の、瀬から淵にかけて徐々に透明からエメラルドグリーンに変化する色の美しさや、光を反射したり透過したりする水面の質感に目を奪われた。

 水量が豊富な早瀬は、川の中に点在する岩にぶつかって複雑な水紋を描いていた。

 この場所を訪れる体験の感覚的な魅力を伝えるため、写真家の川谷光平氏と協働し、[写真的グラフィック]と、[グラフィック的写真]を組み合わせたビジュアルを制作することを考えた。

 [写真的グラフィック:「清流ロゴ」と「清流書体」]

 下呂の川で晴れた日に撮影した、太陽光が射し込んだエメラルドグリーンの川面の写真。その写真を画材として文字を描き、ロゴと書体を制作する。

 水のうねりが文字の形に重なり、発的な形が生まれる。

 [グラフィック的写真:川谷氏によるイメージ]

 下呂の各所で撮影された複数の写真を、偶発性を取り込んだコラージュ的手法で重ね合わせる。

 複数の写真が内包する、異なる時間・視点・モチーフは、互いの境界が曖味になることで、夢の中のような浮遊感のあるイメージへと変化する。

 下呂 Art Discoveryは、まず場所があり、その場所に向き合う中で制作されるサイトスペシフィックな展示が展開される芸術祭だ。

 美術作品を鑑賞する中で、下呂という魅力的な場所と自分自身を再発見する体験。グラフィックデザインを通して、その体験への、一つの入口を作れたらと思う」 

岡﨑真理子/グラフィックデザイナー

岡﨑真理子氏

「下呂 Art Discovery 2026」のポスター

 この日の会見であいさつをした山内登・下呂市長のあいさつは以下の通り。

 「今回の芸術祭開催の経緯についてお話しします。実は、2024年の秋に岐阜県で『国民文化祭』が開催されました。その際、前岐阜県知事である古田知事と話し合い、国文祭の一事業としてアートプロジェクトを立ち上げました。そこで北川フラムさんに総合ディレクターをお願いすることになったのです。

 『瀬戸内国際芸術祭』や『大地の芸術祭』など、名だたる芸術祭を手掛けてこられた北川さんに関わっていただけることは、我々にとって大変名誉なことでした。一昨年の実施時は、準備期間が半年ほどしかありませんでしたが、結果として予想を遥かに上回る多くの方々にお越しいただくことができました。

 下呂は、草津、有馬と並ぶ『日本三名泉』のひとつです。我々としては、このアート事業を一過性のものにせず、ぜひトリエンナーレ(3年に1度の開催)として定着させたいと考えました。

 今回は準備期間も1年ほど確保できました。エリアも前回より拡大し、下呂と高山の中間点にあたる自然豊かな場所から、御嶽山の麓である『小坂(おさか)地域』、『萩原地域』、前回の舞台である『南飛騨健康増進センター』、そしてなんと『下呂温泉の中心部』まで広げて実施いたします。

 素晴らしい作家の方々にご参加いただき、私自身もハラハラ・ドキドキしつつも、それ以上にワクワクするような芸術祭になると確信しています。

 また、『国際芸術祭』として、海外の作家の方々にも参加していただきます。下呂温泉には年間約100万人の宿泊客があり、インバウンドの方も多い。世界中の方々に見ていただける機会になればと思います。

 温泉地というのは『保養地』です。本来、保養地には芸術、文化、音楽といった要素が不可欠なものですが、これまでの下呂にはそこまで至らない部分がありました。今回、この温泉保養地に『アート』という文化を植え付けることで、より豊かな地域になればと願っております」

やがて取り壊される校舎が、この秋「みんなの学校」として蘇る。総ヒノキ造りの旧湯屋小学校を舞台にした、アートと学びの実験室

 岐阜県下呂市小坂町。飛騨の豊かな森に抱かれたこの場所に、昭和の趣きを色濃く残す木造校舎がある。 かつて子供たちの声が響いていた「旧湯屋小学校」だ。 総ヒノキ造りの美しいこの校舎は、老朽化により、やがてその役割を終えようとしている。

 旧湯屋小学校は1954年に建てられ築70年を超える。2012年に生徒が38人となり閉校した。小坂町は森林率約98%の緑豊かな地域で、以前は盛んに林業が営まれ、その象徴として小学校が建てられた。木造校舎は総桧(ヒノキ)造りで、玄関は桧の中でも貴重な柾目桧が使われ、天井には桧の一枚板が並んだ総桧の美しい校舎になっている。

 その最期の時を迎える前に、たった59日間だけの不思議な学校が開校する。 その名も、「みんなの学校」。 学校は教室の新しい使い方を、楽しい行事を、面白い授業を 放課後の遊びを、休みの日の冒険を待っている。

 このコンセプトのもと、「こんな学校あったらいいな」というアイデアを広く公募した。 プロのアーティストからの提案はもちろん、学生、地域住民、そして「学校」という場所に想いを馳せるすべての人々から集まったプランは、なんと250件以上(現在審査調整中)。

 誰も見たことのない「時間割」がはじまる この秋、旧湯屋小学校では、常識にとらわれない授業や行事が次々と展開される。「こんな先生に習いたかった」「こんな給食が食べたかった」。記憶の中の理想を具現化する試みだ。

 教室、廊下、下駄箱、そして鶏小屋まで。 すべての場所がアートになり、遊び場になり、学び舎になる。 「みんなの学校」は、単なるノスタルジーに浸る場所ではなく、かつて地域のコミュニティの中心だった「学校」という機能を、現代アートの力で再生させる社会実験になる。

「みんなの学校」会場となる旧湯屋小学校の画像。外観

「みんなの学校」会場となる旧湯屋小学校の画像。内観

■開催概要

会期:2026年9月11日(金)~11月8日(日) [祝日を除く火曜日休み]

会場:岐阜県下呂市内 各所

主催:下呂アートディスカバリー実行委員会

実行委員会会長:山内登 (下呂市長)

総合ディレクター:北川フラム (アートディレクター)

参加作家:11の国と地域から、40~50組 (予定)

公式サイト:https://gero-art-discovery.jp/

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