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今は古美術でも、当時は現代アート! 静嘉堂文庫美術館 安村館長が思う「現代美術へのまなざし」とは?

2024年03月01日 11時00分更新

給田麻那美《あいに》

 もうすぐ3月3日、雛祭りですね。静嘉堂文庫美術館では、「岩﨑家のお雛さま」展を開催中です。

 三菱第四代社長・岩﨑小彌太が、京都の人形司・丸平大木人形店で特別に誂え、孝子夫人に贈ったという豪華な雛人形が展示されています。

五世大木平藏 「岩﨑家雛人形」のうち女雛 昭和時代初期(20世紀) 静嘉堂蔵

 雛人形は、古来、お祓いとして自分の穢れを託した「ヒトガタ」と、平安時代に貴族の子どもたちが紙の人形で遊んだ「ひいなあそび」、2つのルーツがあわさって生まれたものだそうです。やがて江戸時代後半には、上巳の節句に雛人形を飾る、今のような雛祭りのスタイルが確立したと言われます。現代にも受け継がれている雛祭り、美術館でぜひじっくり味わってくださいね。

さて、今回は館長から、古美術と現代美術をめぐるお話をお届けします。


現代美術へのまなざし

 岩﨑彌之助が、同時代の日本画家たちに出資し、作品制作を支えていたことを知る時、静嘉堂文庫美術館として、同時代作家とどう向き合ってゆくべきかを考える必要があると思う。作品保存を主とした世田谷区岡本の地に文庫を建てた頃と、公開を主としたギャラリーの丸の内移転を果した現在とでは、増々同時代との関わりの意味が異なってきたのではあるまいか。

丸の内ストリートギャラリーの作品の一つ、澄川喜一《白のマスク》。通りを右手に進むと静嘉堂文庫美術館への入口がある

 とはいえ、当館のギャラリーの、東洋古美術の粋を集めたコレクション作品の紹介という役割は重要だ。一般の人々の生活からかけ離れてしまった美術品を、生活の身近に感じてもらい、親しみやすいものとして展示するのが大切なことに変わりはない。

 ただ、せっかく東京の中心街・丸の内に進出したのであれば、周辺で活躍している現代美術家たちと、何らかの連携を取れれば、より東洋古美術が、とりわけ若い人たちに身近になるのではないだろうか。

 私が館長を兼務する長野県小布施町の北斎館では3月31日まで「いざ、勝負!」展を開催し、北斎が「勝負」をテーマに描いた作品を紹介している。その中で、最後のコーナーに、現代のアーティストたち4人が北斎作品に「勝負」を挑んだ作品を、北斎作品と共に展示している。

 なかでも私のお気に入りは、給田麻那美さんの「おしりちゃん」に、北斎下絵・髙井鴻山彩色の額縁絵の一部を取り込んだものだ。この額縁の中には北斎筆「波涛図」が描かれている。給田さんと鴻山のコラボは「おしりちゃん」に新しい生命を与えたといえる。給田さん本来のお仕事は仏具専門の彩色だという。

給田麻那美《あいに》
北斎館にある上町祭屋台天井絵「怒濤図」の額絵をテーマに制作された

 北斎館は一般財団で毎月理事会を開いて意志決定しているので、思いついたら即実行しているが、当館のような公益財団はそう簡単には動けない。アーティストの選出にしてもどういう基準で、当館のどんな作品とコラボしてゆくのか。考えるべきことは山積しているが、今後の当館の姿勢として、現代美術へのまなざしは、常に開放しておくべきだろう。

安村敏信(静嘉堂文庫美術館長)

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