「ねぶた」の時期じゃなくてもその魅力を思いっきり感じられる街【青森市の旅#1ーねぶた編】

 意外な名物から興味を引く観光スポットまで、東日本にはまだ知られていない魅力がたくさん。実際につなぐ旅編集部が東日本の市町村を訪れて、「ワクワクする」シーンを体験レポート。今回は青森県青森市の旅の様子をお届けします!

 青森市といえばねぶた祭。あの大きくド派手なねぶたが夜の街を明るく照らすさまは美しく、街を練り歩くさまは迫力満点で、一度生で見てみたい! 今回は残念ながらねぶたの時期ではありませんが、生のねぶたと触れ合いたいと思います。
グルメ編はこちらから)

いきなりねぶたフィーバー!

 今回の旅はかつて「東北の熱海」と呼ばれた浅虫温泉が目的地。新青森駅と青森駅で乗り換えがあるので、そのタイミングで青森駅周辺も少し散策する予定です。

 新青森駅へ向かう東北新幹線の車内は、スーツ姿の方や厚着の私服の方でいっぱい。途中、仙台駅で半分以上の乗客が入れ替わり、ビジネスマン風の方や年齢層が高めの方の割合が少し増えました。私の勝手なイメージですが、大人であればあるほど“北”が似合う感じがします。

宮城県出身の私は、東北新幹線が盛岡駅までしか走っていなかった頃に盛岡駅から函館駅まで在来線に乗ったんですよね…修学旅行で…。なので「新青森」の駅名標が感慨深い

 新幹線を降りると、全身が冷たい空気にヒュッと覆われました。青森に来たなあ!という気分が高まります。

取材したのは3月。都内はもう暖かくて薄手のコートで十分な時期でしたが、こちらではみなさん厚手のコートを着用。雪に備えた靴を履いている方も多い

構内ではねぶたがお出迎え

遮光器土偶(しゃこうきどぐう)のねぶた! 県内にこの土偶の形をした駅(JR五能線木造駅)があって、一度見てみたいんですよね

乗り換えのために通った通路にも巨大ねぶた

青森駅に向かう電車を待っている間に、新青森駅をパチリ。とてもきれいな駅舎です

シーズン外でも大満喫!ねぶたの熱気を存分に体感

 青森駅に行ったらぜひ立ち寄ってほしいのが「ねぶたの家 ワ・ラッセ」。ねぶたミュージアムや大型ねぶた展示、ねぶたの囃子&跳人体験など、とにかくねぶたに関するあれこれに触れ合える施設です。

じゃばら折りのような外観がかっこいい

 ねぶたの起源は複数あり、今は七夕祭りの「灯篭流し」と「眠り流し」の風習が合わさったものと考えられています。眠り流しとは、夏の農作業の敵となる睡魔(厄災)を払う風習で、「眠り」がなまって「ねぶた」になったと考えられているのだそう。

 ねぶたミュージアムでは、そんなねぶたの歴史や制作工程を知ることができます。まず、歴史の解説がかなりユニーク。ねぶたは少なくとも幕末の時代には大型化し、果ては禁止令が出るほどになりますが、町の人々のねぶたへの情熱は高まるばかり。禁止令が出てもねぶたは出され続けたのだとか。さすがに戦時中は中断されますが、終戦の翌年には空襲で焼け野原となった市内にねぶたが登場したとのことです。ねぶたに懸ける情熱がすごすぎませんか!?

「禁止令にもめげず出陣」「自由に練り歩く」など、説明のワードが強くて面白い

戦後の失意と“生きるしかない”という相反する状況の中で見るねぶたは、生きる力を与えてくれるものだったのかもしれない

ねぶたの骨組み風の展示もかっこいい

1年かけて制作するという話は聞いたことがありましたが、題材については考えたことがなかったので興味深い

天井には可愛い金魚ねぶたがたくさん

 もちろん大型ねぶたも見ることができます。前年に受賞した大型ねぶたが展示されていて、迫力が本当にすごい。表情も動きもダイナミックで、色鮮やかで、細かく作り込まれていて、ずっと見ていられます。

この表情! 武者人形の伸びた足も大迫力

こんな大きいねぶたを人力で動かすんですよ!

ねぶたの足の裏と私の手のサイズを比べることで、「ねぶた全体の大きさ、ヤバすぎるな…」と実感した

実際のねぶたの内側を覗くこともできます。角材で支柱を作って、針金で形を作っていることが分かる

 「ワ・ラッセ」では、ねぶたの跳人や囃子の体験もできます。会場となっているホールには大勢のお客さんが集まり、ステージの上の囃子団体の方々のレクチャーに合わせて大盛り上がり。

 「跳人」とは、ねぶたのお囃子に合わせて踊る(跳ねる)人のこと。右足でケンケン、左足でケンケンするように跳ねるのですが、これがとても疲れる! おそらく実際に跳ねていたのは1、2分だと思いますが、5分以上跳ねていた気がするくらい、終わった頃には息切れしていました。本番の祭りでは2時間跳ね続けることもあるそうで、青森市の方の体力がすごい!

圧倒的に運動センスがないのでポーズに違和感がありますが気にしないでください

太鼓や手振り鉦(てぶりがね)の体験もできます。手振り鉦は上下にこすり合わせるようにして打ち鳴らすのですが、うまく鳴らず…

 平日でしたがとてもお客さんが多く、外国の方の姿もかなり見かけました。ぜひ青森駅で一度降りて、立ち寄ることをおすすめしたい施設です。

ねぶたの家 ワ・ラッセ
住所:青森県青森市安方1丁目1-1
営業時間:5月~8月9:00~19:00、9月~4月9:00~18:00(最終入場は各30分前)
HP:https://www.nebuta.jp/warasse/
アクセス:JR青森駅から徒歩1分

開湯1200年の温泉地でもねぶたを堪能

 今回の目的地である浅虫温泉へは、青森駅から「青い森鉄道」に乗って向かいます。車内には大きめの荷物を持った旅行客っぽい方のほか、部活ジャージを着た学生や地元の方が乗っていて、全員座ることができていましたがほぼ満席の状態。ところで「青い森」という名前が可愛いですよね。

浅虫温泉駅。ちょうど降りたタイミングで、私の大好きだった絵本「11ぴきのねこ」のラッピングトレインが出発していきました。写真撮りたかった!

駅前で足湯を発見。とても寒い日だったので、私の他にも立ち寄る人の姿がちらほら

 宿泊した浅虫温泉の宿「ホテル秋田屋」でも、ねぶたの熱いおもてなしがありました。浅虫地区では昔から夏に「浅虫ねぶた祭」が行われており、地元の人たちだけでなく温泉街のねぶた運行ということもあって、宿泊客に無料でねぶた衣装を貸し出すサービスもあるのだそう。

 ホテル秋田屋では今後、月に1回、青森らしさを感じられるイベントを開催する予定とのこと。その初回がこの日で、エントランスに展示されたねぶたの前でスタッフさんたちによるお囃子の演奏が行われました。

宿泊するみなさんもねぶたが楽しみな様子

 太鼓や笛、手振り鉦の扱いのうまさはさすが。一瞬、ここが本当にねぶた祭会場かと思うような熱気を感じられました。宿泊するみなさんも体験できるということで、小学生くらいのお子さんからご夫婦までが挑戦!

最初は恥ずかしそうだったご夫婦も途中からノリノリでお囃子を演奏(写真奥の太鼓の方と左端の方がご夫婦)

 もちろん跳人体験もあり、みんなで一緒に跳ねて踊りました。私を含めお客さんが疲れて跳ねが微妙になってくる一方で、スタッフのみなさんは軽やかなステップ…! ねぶたに参加すると体力がつきそうです。

スタッフの方のステップは軽やかなうえに高さもある

 そもそも浅虫温泉は、平安時代に慈覚大師により発見された温泉。当時は布を織る麻を蒸すためだけに使われていました。1190年、この地を訪れた円光大師(法然)が、傷ついた鹿が湯浴みするのを見て村人に入浴をすすめたことから人々も利用するようになったのだそう。温泉名は「麻を蒸す」こと、つまり「麻蒸」が転じて「浅虫」になったといわれています。

 温泉は優しい肌触りのお湯で、体の芯までよく温まりました。本当にびっくりするくらい体のホカホカアツアツが持続して、私は部屋の暖房を止めたほど! こんなに「体の芯から温まる」という言葉を体現する温泉、冬の青森ではとても喜ばれそう。

内湯の窓からは陸奥湾と、そこに浮かぶ「湯ノ島」を望むことができます

こちらは海岸で同じような方角を撮ったもの。湯ノ島の正面には赤い鳥居があり、弁財天を祀る祠があるのだそう。鳥居は写真だと見づらいですが、肉眼だとはっきり見えます

 食事は青森の郷土料理「せんべい汁」などが楽しめるビュッフェスタイル。せんべい汁は、硬い煎餅が汁でふやけて「麩」のような食感が楽しめてかなり私好み。前菜として出てきた「いか寿司」も初めての味で、名前こそ寿司ですが、いかの胴体ににいか下足と野菜を詰めた郷土料理です。いか飯みたいな見た目なのに「いか寿司」だし、寿司でもないなんて!

別添えでパリパリのせんべいもあったので、やわやわ派とパリパリ派に分かれる食べ物なのかもしれない

こちらがいか寿司。さっぱりしていてお酒にも合う

部屋はとてもきれいで広くて、のんびり過ごせました(仕事もしたけど…)

ホテル秋田屋
住所:青森県青森市大字浅虫字蛍谷293-12
定休日:水曜・ほか不定休
HP:https://www.e-akitaya.com/
アクセス:浅虫温泉駅より徒歩5分

とにかくねぶたで歓迎し、ねぶたで楽しませてくれる

 新青森駅で降りた瞬間からとにかくねぶた尽くし! 街の人々のねぶたに懸ける情熱を知ると、その熱と同じくらい展示や体験を通して熱烈に歓迎してもらえているように感じてありがたかったです。夏のねぶた祭もぜひこの目で見たい!

「ワ・ラッセ」までの案内板にねぶたの顔

マンホールもねぶた

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