都心から約15分の場所に、伝統工芸体験がモリモリできる街があった【小山の旅#1―伝統工芸編】

 意外な名物から興味を引く観光スポットまで、東日本にはまだ知られていない魅力がたくさん。実際につなぐ旅編集部が東日本の市町村を訪れて、「ワクワクする」シーンを体験レポート。今回は栃木県小山市の旅の様子をお届けします!

 小山市のある小山駅は、新幹線利用時に通過したことはあれど、降りたことはなかった駅。どんな出会いがあるのか楽しみです。

グルメ編はこちらから)

大宮から小山まで新幹線で約15分!

 大宮駅から小山駅までは、東北新幹線でひと駅。いざ新幹線に乗ってみると15分で到着してしまい、ちょっと待って近すぎる! こんな短時間で行けるのなら週末のプチ旅などにもちょうど良さそうです。

小山駅は一部工事中。駅ビルが隣接しています

糸つむぎから手作業!絹織物の結城紬を織ってみる

 まずは小山駅前の「おやま本場結城紬クラフト館」に足を運びました。こちらでは伝統工芸品「結城紬(ゆうきつむぎ)」の着心地体験や機織り体験ができるんです。

 結城紬は、ユネスコ無形文化遺産に登録された小山市の伝統工芸品。鬼怒川に面した地域を中心に生産されている絹織物で、なんと糸をつむぐところから機織りまでの全工程が職人の手作業で行われています。

 クラフト館で人気なのが、実際に結城紬を着て街中を散策できる「着心地体験」。私は時間の関係で着付けてもらうのは難しかったため、服の上から羽織らせてもらいました。

 これが想像以上に軽くてびっくり。軽くて暖かく、丈夫で長持ちするのが結城紬の特徴で、もとは庶民の着物でしたが、制作に時間がかかることから次第に高級品となっていったようです。

着物は重いイメージがありましたがかなり軽い

館内では結城紬を使った小物類も販売

コロンとした形が可愛いピアス。カラフル!

スーツにも合いそうなデザインのがま口

 この日は紬織士の今泉亜季子さんが来館し、織物についての詳しい話を聞くことができました。今泉さんによると、結城紬は最初に全体の柄を決め、それに合わせて糸の段階で染め分けているのだそう。織物はデザインに合わせて色糸を差し替えるものと思っていたので驚きました。完成品のイメージができていないとダメなんですね、すご過ぎる!

展示されていた結城紬の着物

20秒間で3~4段織り上げる今泉さん。このあと私も挑戦しますが、このスピードはかなり速い

 私も実際に今泉さんのレクチャーの下、機織りに挑戦。腰で上下に張り巡らされた縦糸を引っ張りながらその隙間に横糸を通していくのですが、そもそも下の縦糸に突き刺さるなどしてうまく横糸を通しきることができません。また、ただ通すだけだと織物の目が粗くなるうえに柄もズレるので、それを指や刀杼(とうひ)と呼ばれる道具で解消する必要があります。私は今泉さんに手伝ってもらいながら3段織るのに、3分かかりました。

「腰を引かなきゃ」と思っているうちに、横糸を右に通したのか左に通したのか分からなくなり混乱

 着物になるサイズの結城紬を織るのに半年かかるのだそう。想像以上にものすごく時間と手間がかかることを身をもって知ることができました。私の織るスピードだと4年半はかかる…。

よく見ると最上段の横糸が浮いていて織れてない

 せっかくなので糸つむぎも体験。指に水をつけ、真綿を細くつまんで引き出していきます。途中でちぎれるかと思いきやそんなことはなく、ただひたすらに細い糸になるんですよ。力加減はちょっと難しく、均一な太さの糸にするにはやはり修行が必要そうです。

なんとなく糸っぽい感じにつむぐことができました

おやま本場結城紬クラフト館
住所:栃木県小山市中央町3-7-1 ロブレ1F
定休日:月曜日(祝日の場合はその翌日、年末年始(12月29日~1月3日)
HP:https://www.city.oyama.tochigi.jp/kankou-bunka/event/page001401.html
アクセス:JR「小山駅」から徒歩1分

映画で一躍有名になった「組紐」は小山にもあるって知ってた?

 栃木県のもう一つの伝統工芸品が組紐「間々田ひも」。組紐は武士の冑の緒や下げ緒などとして愛用されたもので、大正時代から続く「間々田ひも店」では代々受け継がれた技法で何本もの絹糸を組み上げて帯紐や羽織り紐、ループタイやストラップなどを制作しています。

居合道などの刀にも使われています

2020年の東京オリンピックの際には、小山市に宿泊した水球ハンガリー代表、スペイン代表への土産品として国旗をモチーフにした間々田ひものストラップが贈られたんだそう

 映画「君の名は。」に組紐が出てきて、ヒロインの家族が組紐を作っていたシーンや、ヒロインが組紐で髪を結んでいたシーンが印象的だったんですよね。機会があれば組んでみたいと思っていたので体験させてもらうことに。

「映画で見た道具!」と興奮した

 代表の渡邉靖久さんいわく、組み方は手組みの技術だけで約1,000種もあるのだそう。体験ではそのうちもっとも簡単な、手で4本の絹糸を組む組紐作りにチャレンジできます。

渡邉さんの周りにはカラフルな絹糸がたくさん。これは「ぐんま細」という国産の絹糸を草木や化学染料で染めたもの

 やってみて分かったのですが、4本バージョンの組紐の作り方は本当にシンプル。「対角線にある糸を、時計回りあるいは反時計回りにねじる」ことをひたすら繰り返していきます。でもこの糸の数が増えたら、自分が今どの糸をどう扱っていたのか分からなくなりそう…。うかつに休憩を挟むこともできないかも。

途中で分からなくなっても渡邉さんが教えてくれます

ちゃんと組めてる!

 完成した組紐は、ストラップまたはブレスレットとして持ち帰ることができます。私はブレスレットにしましたが紐がとても固く組み上がってしまいました。それを見た渡邉さんは「ギュッと固く組む方と、やわらかく緩く組む方がいるんですよね」とのこと。もっとやわらかく組めば良かったー。

でも可愛くできてよかった

工房にあった高台で作る組紐。繊細なデザインで目を奪われました

間々田ひも店
住所:栃木県小山市間々田1315-2
定休日:月曜日(祝日は営業、火曜日振替)
HP:http://www8.plala.or.jp/mmdh/
アクセス:JR宇都宮線「間々田駅」から徒歩約10分

「手を動かす」ことの大変さと楽しさを知る

 都心から新幹線に15分乗るだけで、こんなにも面白い体験ができる街があったなんて! 人の手で大切に伝わり、そして今も手作業で生み出される結城紬と間々田ひも。実際に体験したからこそ、手作業の大変さや作られた品々に込められた想いを感じ取ることができました。今度は結城紬を着てあちこち写真を撮って歩きたいな。その時は組紐ブレスレットもお供にしたいと思います。

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