ベジプロジェクトジャパン代表・川野陽子さん「ヴィーガン、ベジタリアン対応をしている=地球にいいことをしている」
2025年03月10日 10時00分更新
日本でも徐々に一般的になりつつあるヴィーガン&ベジタリアン食。海外ではさらに浸透しており、ヴィーガンやベジタリアンの訪日旅行者も増加の一途をたどっています。その流れも後押しし、東京ではヴィーガン、ベジタリアンの方々が安心して食事を楽しめるお店が増加中!
本記事では、そんな今注目のヴィーガン&ベジタリアン食をクローズアップ。ベジタリアン、ヴィーガンという“選択肢”を社会に増やす活動を行っている、NPO法人べジプロジェクトジャパンの代表理事・川野陽子さんを迎え、そもそもヴィーガン&ベジタリアン対応って何?という基本的なことから、浸透が進む理由までを伺いました。
ヴィーガン、ベジタリアンを選択する人がどんどん増えています
――外国人観光客の増加に伴い、ヴィーガン&ベジタリアンの旅行者の人数も増えているかと思います。国別の特徴などはあるのでしょうか?
インバウンド消費(訪日外国人観光客による日本国内での消費活動)の増加に伴ってヴィーガン、ベジタリアン食の需要が増えています。ヨーロッパや北米でヴィーガンやベジタリアンの方が多いです。訪日外国人で多いアジア諸国からの旅行者では、台湾とインドの方々。台湾では10~20%、インドでは20~40%のヴィーガン&ベジタリアンの方がいるという調査結果があるほど。台湾ではヴィーガン、ベジタリアンという選択肢が広がっていて、 “素食”と呼ばれる一種のベジタリアン食は、一般的なスタイルとなっているんです。
――それはどのような理由からなのでしょう?
台湾やインドでは、宗教的な理由からベジタリアンという方が多いです。西洋諸国の方々はそういった理由よりも、サステナビリティ、動物の扱いなどの観点から、自らヴィーガン、ベジタリアンを選んでいる方が増えています。そして今後も、世界的にヴィーガン、ベジタリアンを選択する方がどんどん増えていくと思います。実際に東京の飲食店の方々から「観光客から“ベジタリアン向けのメニューはありますか?”と聞かれることが増えた」という声も届いていて、ヴィーガン、ベジタリアンの方々に対応しなきゃと実感されている飲食店の方々も多い印象です。
ヴィーガン、ベジタリアンは日本での食事に困ることがあります
――そもそもヴィーガン、ベジタリアン対応とはどのようなことを言うのでしょうか?
深いことを言い始めると複雑になってしまうのですが、簡単に言うと、ヴィーガンは動物由来のもの全般を使わない、ベジタリアンは肉、魚介類を使わないお料理が提供できる状態にあるお店をヴィーガン対応、ベジタリアン対応のお店といいます。それらを使わないというのは、出汁や目に見えない材料も全て含めてです。
――出汁!確かに盲点でした。日本だと鰹節や煮干しなど動物性の食材で出汁をとるお店も多いですからね。
そうなんです。なので、ヴィーガン、ベジタリアンの方は日本での食事に困ることがあるんです。日本語でのコミュニケーションも難しいので判断が付かない。「野菜だけのお料理に見えるけれどお魚やお肉のエキスが入っていて食べられないかもしれないから、心配で結局おにぎりしか食べられませんでした」という方もいるくらい。そういった意味でも、対応店ということをアピールしていただくこと、私どもが認証を行っているベジタリアンマーク、ヴィーガンマークを掲げていただくことが、ヴィーガン、ベジタリアンの方々にとっての一つの安心材料になると思っています。
選択の背景は、サステナビリティやアニマルウェルフェア
――東京には現在、ヴィーガン対応、ベジタリアン対応のお店は何店舗くらいあるのでしょうか?
私どもが運営している日本ベジマップには、東京都内で約700軒のお店が登録されています。新店舗はもちろん、これまではヴィーガン対応、ベジタリアン対応していなかったけれども「一部ヴィーガンメニューを扱います」と掲げるようになったお店も年々増えてきています。特に東京23区の繁華街、海外の観光客の方々が集まる場所は、ヴィーガンやベジタリアンの方も楽しめるお店が増えてきているなと実感しています。
といっても、日本のヴィーガン、ベジタリアン対応はまだまだ海外に比べて遅れています。訪日観光客対応としてだけでなく、これからの日本でヴィーガン、ベジタリアンという選択を当たり前にするために、私は“選択の背景”を知ることが大切だと考えます。先ほども少しお話しましたが、ヴィーガンやベジタリアンというのは、サステナビリティの考え方が根本にあります。加えて、アニマルウェルフェア(動物の福祉)とアニマルライツ(福祉や権利)――つまり、動物たちを私たちの食事のために苦しい思いをさせること、命を奪うことを望まない。そのための食の選択肢でもあるので、日本人にとっても決して関係ないテーマではないということを知っていただけたらうれしいです。対応される飲食店の方々も、ヴィーガン、ベジタリアン対応をすること=地球にいいことをしているのだと、やりがいを感じていただけると、より気持ちよくヴィーガン、ベジタリアン対応が進んでいくのではないかと思っています。
東京のヴィーガン・ベジタリアン料理のお店を知るなら
「東京ヴィーガン&ベジタリアンレストランガイド2025-2026」
川野さんが代表を務めるNPO法人ベジプロジェクトジャパンが監修を務めた東京観光財団発行の「東京ヴィーガン&ベジタリアンレストランガイド2025-2026」ではヴィーガン・ベジタリアンに対応している飲食店をピックアップ。和食、イタリアン、ラーメン、スイーツなど多彩なジャンルのお店を120店以上掲載しています。また、日本の食文化の奥深さを知ることができる情報も併せてご紹介!
東京観光パンフレットギャラリー https://www.gotokyo.org/book/list/6930/
■プロフィール
川野陽子(かわの・はるこ)=京都大学在籍中に同校食堂へヴィーガンメニューを導入。以後10年以上、日本においてのベジタリアン、ヴィーガンの選択肢作りを進め、認証マークの発行や観光案内所で配布するベジマップの制作等を行う。大学、企業等へのコンサルを行うほか、国や自治体の事業ではベジタリアン、ヴィーガンの専門家として活動。昨年10月には、ヴィーガニズムの発展に貢献した個人・企業を表彰する「第7回 日本ヴィーガンアワード」で大賞を受賞した。
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